くらしき作陽大学・作陽音楽短期大学 学長 松田英毅氏

(2016年6月20日更新)

地方大学が大きな力を発揮する
「人間教育の大学」

人の役に立つことを自分の喜びとする

 くらしき作陽大学は、「大乗仏教に基づく豊かな人間性の涵養」を建学の精神とし、「菩薩道を歩むプロの養成」を使命として心の教育に力を注いでいます。菩薩道とは「喜んで人の役に立つ」ということ。学問を修め、それぞれの道でプロになり、人のため、地域社会のために役立つ人間になる。そのような考えを教育の基本にしています。

 今の世の中は経済的な豊かさこそが人間の幸せなのだという方向に向かっているように感じます。しかしそれでは危ないのではないでしょうか。経済も大切ですが、併せて心の問題にも取り組んでいかなくてはなりません。人間としての基本を学び、実践できるようにする。それが本学の考えです。人のためになること。人の役に立つこと。それは人生の喜びにつながります。

 例を挙げますと、学生たちには普段から「挨拶・掃除・合掌(感謝)」をするように勧めています。簡単なことのようですが、人はなかなかこの簡単なことができないものです。それをしっかり実践するように教えています。このような人間性を高めるための教育が「作陽らしさ」を育んでおり、私自身、学生たちとふれあっていますと優しさや人のあたたかみを感じます。外部からいらっしゃるお客さまにも、キャンパスの雰囲気の良さを感じていただけるのではないでしょうか。

地域を学びのフィールドに

 本学は、建学の精神から、もともと地域とのかかわりは深く、これまで各学部がさまざまな地域貢献活動に取り組んできました。

 例えば音楽学部では、学生たちが演奏会を年間200回(学内で約100回、学外で約100回)以上行って、地域の方々に音楽を楽しんでいただいています。中でも倉敷美観地区で開催している「倉敷館コンサート」は、観光地ということもあって大変好評です。これは学生たち自身が企画して行っており、大きなやりがいになっているようです。

 食文化学部では、学内の「ヘルスケアレストラン」という食堂で週に2回、健康でおいしい食事を提供しています。現在は学内だけですが、今年から徐々に地域住民の方にお越しいただく日を増やしていく予定です。今後も「健康と食事」をテーマに、さらに地域とのかかわりを深めていきたいと考えています。

 子ども教育学部では、附属児童文化部「ぱれっと」の活動が盛んです。ぱれっとは地域の子どもたちに人形劇やパネルシアター、歌遊びなどを届ける学生劇団で、年間約60公演を行っています。地域支援としてみなさまに喜ばれており、また学生たち自身の成長にもつながっています。

 また本学が特に力を入れている「特別支援教育」については、地域の保護者や学校・教育委員会・放課後児童クラブや保健福祉関連施設などと連携・協力して、大学の教育・研究・社会貢献の3つの機能を一体的に推進する「特別支援教育ラボ」を開設しています。

1年次から主体的な学修を

 本学は、2014年度から文部科学省「地(知)の拠点整備事業」(大学COC事業:Center of Community)に倉敷芸術科学大学と共同で取り組んでいます。地域志向の大学として倉敷市と共に教育・研究・社会貢献を一体化した大学改革を推進し、倉敷の未来を担う若者の育成や地域の産業発展に努めています。

 その大学COC事業の取り組みの一つとして、「くらしき学講座」を開講しています。これは1年次に、学生全員がさまざまな地域貢献活動を行い、先輩の指導の下にその成果を振り返りながらプレゼンテーションを行うという活動です。地域貢献活動には、さまざまなコンサート活動、地域の食品フェアや食育指導、教育支援ボランティアや人形劇公演、災害避難訓練ボランティアや学生提案による天領祭りなど全22コースがあります。

 地域の方々のご協力を得たこの1年次からのアクティブ・ラーニングの実践は学生の自主性を育て、コミュニケーション能力の向上につながっています。とにかく元気で、いきいきと活躍をしてくれています。

教員採用試験や国家試験に強い大学

 小規模な大学ですが、2016年度の公立教員採用試験・公立保育士採用試験・県職員採用試験におきまして、延べ83名の合格者を輩出しました。音楽大学時代から音楽科教員養成には定評のある音楽学部では、2016年4月、講師経験者・現役合わせて15名(実数)が採用されました。そのうち中学校・高等学校の音楽科教員が12名、小学校・特別支援学校教員3名でした。

 食文化学部の教員採用は、講師経験者・現役合わせて栄養教諭6名、家庭科教諭2名、県職員(栄養士A)1名の計9名が採用となりました。また国家試験については、第30回管理栄養士国家試験(2016年)において80名中79名という多数の合格者を出しており、合格率100%であった前年に続いて非常に良い結果が出ています。

 子ども教育学部では、現役で小学校9名・特別支援学校4名、講師経験者が小学校6名の計19名(実数)が採用されました。公立保育士・幼稚園教諭・認定こども園保育教諭は、現役で20 名、講師経験者が2名で計22名が採用となりました。なお県職員(学校事務)1名も採用となっています。この春卒業した学生の4割が公立学校園・公務員に採用されています。

 これらの成果は、すべての学部で、地域の演奏会場や学校、病院などさまざまな現場に出かけて学ぶサービス・ラーニングでの学修が充実していて、学生たちの本来の力を伸ばすことができていることと、豊富な現場経験をもつ教員による細やかで温かい指導が実を結んだ結果だと考えています。小規模大学の良さだと思います。

 本学は2016年に創立50周年を迎えました。今後も音楽、食文化、子ども教育と、それぞれの専門分野をさらに進化・発展させ、学生の成長と地域貢献につながる活動を進めていきます。


松田英毅氏

【Profile】

松田英毅(まつだ・ひでき)氏
1964年、九州大学大学院理学研究科修士課程修了。東京大学物性研究所文部技官、九州大学理学部助手を経て、1972年より作陽音楽大学(現くらしき作陽大学)教授。1973年学校法人作陽学園理事長。1987年、作陽音楽大学(現くらしき作陽大学)・作陽短期大学(現作陽音楽短期大学)学長に就任。「挨拶、掃除、合掌」を実践目標に掲げ、心を豊かにする「音楽」、命を創る「食文化」、未来を創る「子ども教育」を柱に教育を展開している。倉敷市文化振興財団顧問。




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