中央学院大学 学長 佐藤英明氏

(2016年8月8日更新)

創立50周年を迎え
新たな一歩を踏み出す

歴史を踏まえて新たな時代に対応

 本学の前身は、1900年設立の日本橋簡易商業夜学校です。その後、1966年に商学部商学科の単科大学として中央学院大学を開学し、今年、創立50周年を迎えました。現在は、商学部と法学部の2学部2学科で約2,700人の学生が学んでいます。学業だけでなくクラブ活動でもよい成績を残す学生が多く、近年では駅伝、野球、ゴルフなど、トップレベルで活躍する学生もおり、キャンパスに活気を与えてくれています。そうした学生たちの活躍フィールドの広がりに伴い、商学部に「スポーツキャリアコース」、法学部に「スポーツシステムコース」を設置しました。これも本学ならではの特徴の一つです。教育面においては、教職員が連携を深め、学生一人ひとりを丁寧に育てるべく努めています。
 50年の間に、社会も大きく変わりました。大学を永続的に発展させていくためには、時代と歩調を合わせながら、大学自身も変わっていかなければなりません。2017年4月に設置を予定している、新学部「現代教養学部(仮称)」(認可申請中)もそうした背景があるからです。

新学部「現代教養学部(仮称)」がめざすもの

 新しく計画している学部のテーマは、教養力の養成です。これからの時代を生き抜くうえで、教養は不可欠だからです。文部科学省の中央教育審議会でも、教養教育についての議論が盛んに行われています。そんな中、本学も教養教育には一層の力を注ぐ必要があると考えたのです。しかし、本学が考える教養教育の概念は、いわゆる昔からある教養科目とは一線を画すものです。ベースとなる考え方は、専門知識を活かすための教養です。たとえば法律の知識は身についても、その知識を活かすための文化や社会のことを理解していなければ、意味がありません。また商業の知識はもっていても、自然科学の常識がわからなければ知識をビジネスへと昇華させるのは難しいでしょう。学生は卒業後、否応なくグローバル化する社会のなかで生きていかなくてはなりません。そのような社会では、宗教や文化、価値観の異なる人々に囲まれる中で、自分以外の他者を理解し、受容できる能力が必要になります。つまり広い意味での、社会を生き抜く上での教養が必要になってくるのです。ではそのような能力を身につけるには、どうすれば良いのでしょうか? 年齢や経験が異なる人々とコミュニケーションをとりながら共に社会をつくるという体験が有効だと私は考えます。大学の中で得た知識の有効性を外の世界での体験を通して検証するという活動を学生自身が主体的に行うということです。そうした学生の活動を大学が支援していく。そんなことも新しい学部では積極的に取り入れていきたいと思います。現在、我孫子市をはじめ、近隣の柏市などとも連携を進めているのも、現実社会を学ぶ機会を学生たちに提供するためです。

商学部、法学部も進化する

 また専門教育である商学部、法学部のカリキュラムについても、見直しを進めています。最も意識しているのは、学生の学びに対するモチベーションであり、全学を挙げて取り組んでいます。
 かつての退学者の特徴は、授業へ出席しないことから単位が取得できず大学に来なくなるというものでした。そのように大学になじめない学生に対してはサポート体制を拡充したことで、その数を減少させることができました。一方で、数年前から、非常に成績がよく単位も取れているのに、退学を希望する学生が出てきたのです。私たち教員が学生の学ぶ意欲に十分に応えられていないのではないか、という疑念と反省が、カリキュラム改変のきっかけになりました。
 まず昨年度に着手したのが、就職の成功を視野に入れたカリキュラムの構築です。商学部では、1年次から就職を意識して学ぶベストジョブプログラムを導入しています。このプログラムでは、早期から就職を意識することで、学ぶ目的を明確にし、学習意欲の喚起を目指しています。プログラムの導入以降は、学生たちの学習意欲の向上を実感しています。法学部では、「公務員100人構想」を掲げ、学生を丁寧にバックアップしています。本学は、伝統的に警察官・消防官・自衛官の就職では、好成績を誇っています。また、自治体職員として活躍する卒業生も多く、学部全体で、公務員の就職に向けて学生支援を強化しました。こちらも一定の成果を上げています。

変わるものと変わらないもの

 18歳人口の減少や新入試制度の導入など、大学を取り巻く状況は大きく変化しています。しかし、そんな時代だからこそ本学創設に携わった方々の、志を忘れてはいけないのです。創立50周年を迎えた今、さらなる発展に向けて全学を挙げて努力していかなくてはなりません。時代が大きく変わろうとしている今、社会の流れを読み取りながら大学自体も柔軟に変化していかなくてはならないのです。新学部の設置に伴い、新しいスタッフが加わることになります。新しいスタッフが増えることで、大学の雰囲気も変わってくるでしょう。この変化を好機ととらえ、よりよい方向に進めていきたいと思います。
 一方変えてはならないものとして、本学の建学の精神、「公正な社会観と倫理観の涵養」があります。単なる知識の伝達ではなく、人間を基調とした全人格の形成を求め「公正な社会観と倫理観の涵養をめざし、徹底した少数教育を通じて実力と創造力をそなえた有能な社会人の育成」にまっすぐに向き合うことです。本学が標榜する「公正な社会観」とは、広い視野で社会全体を見ることであり、そのうえでより良い社会のあり方を考えるという視点を指しています。それは自分にとって都合のよい社会を求めるのではなく、相手の立場を考え、より多くの人が納得し、安心できる社会を築くことに他なりません。倫理観も同様です。
 現代は、紛れもなくグローバル社会です。あらゆる事象が複雑化し、状況は混沌としています。課題を挙げればきりがありません。その中で問題を少しでも減らし、より良い社会を創造するために解決者として行動できる。そんな人材が求められているのです。「公正な社会観と倫理観の涵養」、今こそ建学の精神に立ち返り、この言葉がもつ重みを学生たちと共に考えていきたいと思います。


佐藤 英明氏

【Profile】

佐藤 英明(さとう・ひであき)氏
1958年北海道生まれ。北海道教育大学教育学部卒業。東北大学大学院文学研究科博士課程修了。1996年中央学院大学講師就任。助教授、教授を経て、2012年に商学部長。2014年7月より現職。

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