学校法人加計学園 副理事長 加計 役氏
(2016年12月16日更新)
国際化の時代に
必要とされる人材を育成
2017年、グローバルを視野に入れた大学運営
岡山理科大学は、理学部、工学部、総合情報学部、生物地球学部、教育学部に2017年開設予定の経営学部が加わります。新学部の設置もさることながら、近年の本学を象徴しているのがグローバル教育への対応です。学生自身をグローバル人材に育成することはもちろん、本学で学んだ学生がグローバル人材養成の力になることです。それは単に語学教育を充実させることだけではありません。母語の異なる人々と円滑にコミュニケーションをとり、価値観の異なる他者を理解し、自分の意見を持ち、世界的視野で課題を捉えられるなど、グローバル時代を生き抜くための力の養成を意識した教育と大学環境の整備に力を注いでいます。具体的には、海外からの留学生の積極的な受け入れ、IB教員養成コースの設立などが挙げられます。
日本で初めてIB教員養成コースを学部に設置
2017年度、本学では、国際教育プログラム「IB(International Baccalaureate:国際バカロレア)」を導入した高校などで教壇に立つ教員を養成する「IB教員養成コース」を開設します。メルボルン大学や香港大学など世界では31の大学が取り組んでいますが、日本では大学院が一校あるだけで、大学の学部でこのコースを設置するのは、本学が国内初となります。また、数学と化学に特化したSubject teacher certificateは、国内初の開設となります※。
IBの教育は世界の小、中、高4500校以上で行われていますが、その教員養成はまだ始まったばかりです。文部科学省は、現在、IB認定校を200校に増やすという大きな目標を掲げていますが、教員がいなければ認定校を増やすことはできません。本学のグループ校である英数学館中・高等学校もIB認定校となり、2017年度からIB教育をスタートさせます。双方の連携により、たとえば本学の学生がインターンシップ等で英数学館中・高等学校に行くことや、英数学館中・高等学校のIB教諭が本学で学び直すことも可能です。本学が日本におけるIB教員養成のモデル校となることは間違いありません。
※IB EDUCATOR CERTIFICATES UNIVERSITY DIRECTORY 2016より(2016年8月時点)
国際的な視野をもつ人間を育成
加計グループの英数学館が最初に広島の地に開設。その後、学校法人加計学園は岡山に設立されました。創設者である加計勉は、焦土と化した広島の街で、これからの日本の復興は教育なくしてはあり得ないと感じたそうです。そして同時に、平和な世界を築くには国際交流が不可欠だと考えました。学生たちが世界中の友人と交流できれば、戦争は起きにくくなるのではないか。この考えが、学校経営の芯にあります。
時を同じくして第二次世界大戦の反省を経て設立されたIBの理念には、加計学園の理念と多くの共通点を見いだすことができます。
IBでは「探究する人」「知識のある人」「考える人」「コミュニケーションができる人」「信念をもつ人」「心を開く人」「思いやりのある人」「挑戦する人」「バランスのとれた人」「振り返りができる人」という10の学習者像を掲げています。IB認定校は、この10の人間性に価値を置き、それに基づいた教育を徹底します。
本学に開設するIB教員養成コースを終えた学生は、新しい教育者としてジュネーブに本部を置くIB機構からCertificate (認定)されます。認定はIB が行うため、資格は世界基準ということになります。本学のすべての学部生が対象で、高等学校教員免許取得を目指す本学の学生であれば誰でも受講可能です。このコースを受講することで、文化的・社会的背景が違う人たちの多様性を受け入れることができるコミュニケーション能力や論理的な思考能力を養うことができます。
国際化の時代に求められる能力
IB教育は、資格教育でもなければ、英語教育でもなく、いわば全人教育というべきものです。すべてのIBプログラムは、国際的な視野をもつ人間の育成を目指しています。人類に共通する人間らしさと地球を共に守る責任を認識し、より良い、より平和な世界を築くことに貢献する人間を育てるプログラムです。たとえば、現在の「世界史」学習では暗記が中心ですが、IBでは、世界史を学ぶことによってどうすれば戦争が起こらない社会をつくることができるかまで考えることが求められます。歴史から学ぶだけでなく、その先につくる新しい社会の有り様にまでコミットする人間を育てる教育です。
現在、文部科学省で検討されている2020年度から実施予定の新しい学習指導要領では、「課題の発見・解決に向けた主体的・協働的な学び」としてアクティブ・ラーニングに注目が集まっています。この集大成がIBだと言ってもよいでしょう。しかし残念ながら、現在、日本の教育現場においてIBの認知度は高いとはいえません。今後は、アクティブ・ラーニングの広まりと共にIBに対する理解が、IBを知ることでアクティブ・ラーニングへの理解が深まることを期待しています。
【Profile】
加計 役(かけ・まもる)氏
千葉県柏市出身。米国フィンドリー大学経営学修士(MBA)取得。2000年に加計学園に入り、2011年より加計学園副理事長就任。広島加計学園理事長、吉備高原学園学園長なども兼務。一般財団法人・世界で生きる教育推進支援財団理事も務めている。