教えて!「小中などの学習指導要領の改訂」

  小中学校の学習指導要領と、幼稚園教育要領が、間もなく正式に告示されます。特別支援学校の指導要領も案が公表され、パブリックコメント(意見公募手続)に掛けられています(4月15日まで)。高校は来年3月告示の予定ですが、総則をはじめ小・中とは共通の部分も多いのが通例です。どのように改訂されるのでしょうか。


教えて!「小中などの学習指導要領の改訂」

 『キャリアガイダンス』の愛読者にとって、大ニュースがあります。「キャリア教育」が指導要領上、初めて明記されたのです。しかも、小学校からです。

 そこ(総則第4 児童の発達の支援 1児童の発達を支える指導の充実(3) )には、児童生徒が「学ぶことと自己の将来とのつながりを見通しながら、社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる資質・能力を身に付けていくことができるよう、特別活動を要としつつ各教科等の特質に応じて、キャリア教育の充実を図ること」とあります。キャリア教育の推進を担当した教員には当たり前のことでも、一般にはまだ理解は進んでいない現状の中、総則に盛り込まれた意義は強調してもし過ぎることはありません。

 また総則には、初めて前文が設けられました。文部科学省は、そこに中央教育審議会での議論の手掛かりを残したといい、改訂の公式キャッチフレーズ「社会に開かれた教育課程」の実現も強調されています。そして本文の構成も、▽何ができるようになるか(第1 教育の基本)▽何を学ぶか(第2 教育課程の編成)▽どのように学ぶか、何が身に付いたか(第3 教育課程の実施と学習評価)▽子どもの発達をどのように支援するか(第4 発達を踏まえた指導)▽実施するために何が必要か(第5 学習活動の充実のための学校運営上の留意事項)――というように、改訂趣旨を反映して構成が大幅に変えられています(第6は「道徳教育推進上の配慮事項」)。

 「資質・能力の三つの柱」が明記されたことは、言うまでもないでしょう。(1) 知識及び技能が習得されるようにすること(2) 思考力、判断力、表現力等を育成すること(3) 学びに向かう力、人間性等を涵養すること――を「偏りなく実現できるようにするものとする」とされています。

 総則だけでなく、各教科の目標が、すべてこの三つの柱に沿って再整理されたことにも注意が必要です。各教科を単に独立したものとして教えればいいのではなく、全教科・領域等に「横串」を刺すことによって、各教科では教科固有の「見方・考え方」を発揮しつつも、学校全体として共通する資質・能力の三つの柱で育成しよう、という考え方です。

 それを実現するのが、カリキュラム・マネジメント(カリマネ)です。アクティブ・ラーニング(AL)が「定義のあいまいなカタカナ語は法令文書になじまない」として全部「主体的・対話的で深い学び」に置き換えられたのに対して、こちらのカタカナ語は6行にわたる定義を示した上で、その略語としてカギカッコ付きで「特別に認めてもらった」といいます。

 カリマネは、キャリア教育にとっても重要な意義を持ちます。教科・領域等に横串を刺すにもカリマネは不可欠ですが、教科の学びを実社会と関連付け、社会で活用できる資質・能力につなげるには、まさにキャリア教育の観点からのカリマネは外せません。一説に100以上あると言われる「○○(マルマル)教育」も、カリマネによって教科および教科間連携の中に落とし込むことが期待されます。

 また、特別支援教育の視点が、小中学校の総則はもとより各教科等に盛り込まれたことも見逃せません。通常学校・学級に配慮が必要な児童生徒が存在することはもちろん、学校段階が上がるにつれて特別支援学級・学校との行き来も盛んに行われることも踏まえました。高校にも発達障害をはじめとして特別な支援が必要な生徒が増えている中、特別支援学校の指導要領も参照したいものです。

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【profile】
渡辺敦司(わたなべ・あつし)●1964年北海道生まれ。1990年横浜国立大学教育学部教育学科卒業。同年日本教育新聞社入社、編集局記者として文部省、進路指導・高校教育改革など担当。98年よりフリーの教育ジャーナリスト。教育専門誌を中心に、教育行政から実践まで幅広く取材・執筆。
教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説 http://ejwatanabe.cocolog-nifty.com/blog/