学校法人塚本学院 副理事長 塚本英邦氏

(2017年3月27日更新)

既存のものや少し新しいものを組み合わせて
新しい創造を生み出す
「アートサイエンス学科」新設

大阪芸術大学グループの始まりは戦後復興への取り組み

 学校法人塚本学院は、1945年(昭和20年)に故塚本英世初代理事長・学長が創設した平野英学塾に始まります。戦後、高まっていた英語学習の需要に応えようと創設した学校です。平野英学塾はその後短期大学に改組され、1952年(昭和27年)には短期大学に大阪幼稚園教員養成所と附属の青い鳥幼稚園を併設します。未整備な状態であった子どもたちの教育環境を向上させる狙いがありました。青い鳥幼稚園では米軍から中古バスを購入し、保育士を乗せて全国を回るという移動幼稚園の事業も行いました。創設者は日本社会の本格的な復興のためには芸術教育が必要だと考え、1957年(昭和32年)に大阪美術学校を設置します。続いて1964年(昭和39年)に浪速芸術大学を開設、1966年(昭和41年)に大阪芸術大学に改称し今日に至ります。現在塚本学院では、大阪芸術大学、大阪芸術大学短期大学部、大阪美術専門学校と4つの附属幼稚園を運営しています。

 大学開学にあたり、故塚本英世初代学長は芸術教育に対する以下の考えをまとめました。「自由の精神の徹底」「創造性の奨励」「総合のための分化と境界領域の開拓」「国際的視野に立っての展開」「実用的合理性の重視」。これら5項目を建学の精神と位置づけ、現在も受け継がれています。

2017年4月、日本初の「アートサイエンス学科」を開設

 2017年4月、大阪芸術大学は日本初の「アートサイエンス学科」を開設します。何を目指す学科なのか。例えばスマートフォンという製品は世界を変えました。革新的な製品なのですが、開発には特段新しい技術は活用されていません。タッチパネルもインターネットも既存のテクノロジーでした。アートサイエンス学科の方向性もそのイメージです。既存の技術や少し新しいものを組み合わせることで、まったく新しい商品やサービスを創造する。そのための考え方を学ぶ学科です。

 本学科客員教授の猪子寿之(チームラボ代表)氏による「ミュージックフェスティバル チームラボジャングル」は、ムービングライト約250個をプログラミングで動かして光の彫刻をつくるなどの光のイベントでした。ムービングライトという技術を用いてまったく新しい空間を構築したという点で、猪子氏の活動はアートサイエンスにおけるアウトプットの一つの事例といえます。同じく客員教授の村松亮太郎氏はプロジェクションマッピングを定着させたこの分野の第一人者です。プロジェクションマッピングはスクリーンというメディアの枠を超えた表現形態です。

 学科開設2年目の2018年には、アートサイエンス学科のための新校舎が完成予定です。設計者は建築界のノーベル賞といわれる「プリツカー賞」受賞者の妹島和世氏です。建物自体がアートであり、その空間の中で創作に取り組みます。設備も充実しており、教員と学生の協働の場「Lab(研究室)」や、音や映像を駆使した表現を追究する実習スペース「スタジオ」、交流の場「ラウンジ」、インタラクティブで実験的な作品展示ができる「ギャラリー」などを設置します。

各分野でトップランナーを目指す人に来てほしい

 この学科には各分野でトップランナーを目指す高校生に来てほしいと思っています。アートサイエンスの考えをもつ人たちは、社会や組織をリードしている人たちと非常に視点が似ており、自分自身で能動的に何かをつくったり発見したりという、開拓心をもっているという共通点があります。本学科客員教授でMITメディアラボ(MIT・マサチューセッツ工科大学建築・計画スクール内に設置された研究所)副所長の石井裕教授は、「造山力(ぞうざんりょく)」という興味深い言葉をつくっています。いま頂にいる人を目指すのではなく、自分で山を造ってその山の頂点に自分が立つ。やろうとしていることが既存の山にはなく、まったく新しい分野を開拓してトップを目指すという意味で、まさにアートサイエンス学科で育てたい人材と重なります。

 活躍領域は多様になると思います。もちろん一般企業勤務でもいい。問題は、既存のものを組み合わせて新しい創造を生み出す力をどう発揮するかです。それは組織内における人と人かもしれないし、能力と能力かもしれません。そのような考え方をもって社会で活躍できる人材を育てていきます。

着実に向上してきた大阪芸大のブランド力

 近年卒業生をみていますと、大阪芸大出身であることを積極的に標榜してくれる人が増えています。ブランド力は着実にあがっていると感じています。これからも卒業生が母校を誇れるように、ブランド力をさらに引き上げていきたいと思います。そのためにはよい教員を揃え、最新の設備を整え、質のいい教育を行う。それを淡々と真面目に続けていくことに尽きると思います。その結果、優秀な卒業生が増えると学生も自然と集まってくれると思います。最近では映像学科の募集が非常に好調です。映像学科は多くの映画監督を輩出しています。本学教授の田中光敏氏のような方から40歳代、30歳代の若手監督まで幅広い世代が活躍中です。このような状況を全学的に広げていけば、ブランド力も一層向上していくでしょう。

4年間アートに没頭した経験は将来必ず生きる

 建学の精神に「自由の精神の徹底」とあるように、本学は実に自由度の高い大学です。一つのキャンパスに全学科が集約しており、例えば演劇に取り組むなら、俳優、音楽、美術、撮影、広報のためのポスターなど、すべての役割を担える学生たちがいる上、本格的な劇場もあります。教員は各分野の第一線で活躍する人たちで、プロから指導が受けられます。また、他学科の興味ある授業を履修できるのもワンキャンパスのメリットです。自ら動く学生にとっては、自由に何にでも取り組める大学です。

 芸術を学ぶということは、人生を豊かにする礎ができたと言っても過言ではないと思います。学生たちが専攻した学問内容を活かした就職先で活躍することはもちろん、たとえ別の道に進んだとしても、芸術を続けることでその人の人生は豊かなものになるはずです。

 大切なのは4年間アートに没頭し、真剣に取り組んだという経験です。その経験は将来どの分野でも役立つでしょう。これからもそれができる大学であり続けたいし、そのための環境は万全に整えていきたいと思います。



塚本英邦氏

【Profile】

塚本英邦(つかもと・ひでくに)氏
大阪芸術大学専任講師を経て准教授、教授。2013年より大阪芸術大学短期大学部学長。2014年より学校法人塚本学院副理事長、大阪芸術大学副学長も兼務。公益財団法人日本高等教育評価機構理事。公益財団法人小野奨学会理事。国立大学法人奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 情報科学専攻博士後期課程修了。博士(工学)。

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