神戸海星女子学院大学 学長 小野 礼子氏

(2017年10月20日更新) 学生一人ひとりに真摯に向き合い 献身的に関わる 本学の伝統を守っていきたい 「マリアの宣教者フランシスコ修道会」を設立母体とする大学  神戸海星女子学院大学の設立母体は、フランス人のシスター・マリ・ド・ラ・パシオンが1877年に創設した「マリアの宣教者フランシスコ修道会」というカトリックの女子修道会です。日本での活動は1898年、ハンセン病に苦しむ人々の救済活動のため熊本に5名のシスターを派遣したのが始まりです。以来、これまでに約320名のシスターが日本で教育や福祉の分野において活動してきました。海星女子学院は、戦後復興には女子教育の整備が必要という考えの下、1946年に前身校である高等聖家族女学校の経営を修道会が引き継いだことに始まります。その後、1951年に学校法人海星女子学院を設立すると同時に、小学校・中学校・高等学校を設置し、1965年には本学が開学します。開学当時は文学部英文学科・仏文学科という構成で、私は文学部英文学科の卒業生です。現在修道会は経営に携わっていませんが、「真理と愛に生きるというキリスト教的価値観に基づき、人を支え、社会に奉仕する女性の育成を目指す」という建学の精神を通じて、生涯を教育と福祉の奉仕活動に捧げたシスター・マリ・ド・ラ・パシオンの精神を継承しています。 時代のニーズをとらえた特色ある2つの学科を設置  現在本学は、現代人間学部「英語観光学科」「心理こども学科」の1学部2学科を設置しています。  「英語観光学科」は、旧英語キャリア学科および観光ホスピタリティ学科を一体化し2012年に改組、2014年に現在の名称に変更した学科です。観光ホスピタリティ学科において英語のニーズが高まり、英語キャリア学科でも観光系の就職が増えてきたことを受けて、英語と観光の両方を学べる学科を作りました。2つの分野を本格的に学べる学科は数少ないと思います。今観光は訪日外国人の急増により注目されている分野です。そのため英語コミュニケーション力と観光実務を修得し、外国人観光客の受け入れに貢献できる人材は貴重です。さらに英語と観光の知識と実践力は、サービス業の他幅広い職種の素養にもなりますので、さまざまな業種への就職に備えられます。  保育士資格、幼稚園教諭一種免許状、小学校教諭一種免許状、認定心理士資格などを取得できる「心理こども学科」は、心理学とこども学を学べるユニークな学科です。心理学の科目(必修・選択)が21もあるのが大きな特長です。「保育・教育」と「心理」の学びを通して子どもだけではなく、保護者の方も支援できる先生を育成しています。保育所、幼稚園、小学校への就職率はすべて100%です。  学科の枠を越えて学ぶこともできます。「英語観光学科」では小学校英語指導者養成のための「海星キッズイングリッシュプログラム」を設けていますが、「心理こども学科」の学生が小学校教諭免許課程を取りながらこのプログラムを履修できる他、中学校教諭二種免許状(英語)の取得も可能にして、2020年からの小学校の英語教科化に対応できる教員を育成しています。「英語観光学科」でも将来小学校で英語を教えたいと希望する学生のために、他学科科目の履修により小学校教諭一種免許状の取得を可能にしています。  また、アメリカ・イギリス・カナダ・オーストラリア・韓国への短期から長期までの留学プログラムを用意するとともに、世界的な観光地であるハワイで、観光を中心とした実務を体験するインターンシップや、ホームステイをしながらハワイの文化を体験したり、現地のプレスクールの子どもたちや先生方と交流したりする機会を設けている「海星ハワイプログラム」のほか、各種海外インターンシップ・研修の制度を豊富に整えています。「心理こども学科」の学生もハワイでの「プレスクール実習プログラム」、アメリカでの「アシスタント・ティーチャー・インターンシップ」、オーストラリアでの「幼稚園実習研修」などのプログラムに参加し、国際体験をすることができます。学生たちには国内・海外を問わず、グローバルに活躍する女性に成長してほしいと思っています。 少人数を超えた「超小人数環境」を実現  本学の教職員が学生一人ひとりに対して真摯に向き合う姿勢は、私が学生だったころと現在も変わっていません。もともとハンセン病患者の救済のために来日したシスターの精神を引き継いだ大学ですので、その献身的な姿勢が伝統になっているのだと思います。例えば教員採用試験のための講座を授業外で行ったり、一人ひとりの相談に応じたり、研究室で個別に指導したりするなど、徹底して学生をサポートするのが本学の教員です。  その背景には本学ならではの、少人数を超えた「超小人数環境」があります。ゼミは平均10名、英語のクラスも10名前後という環境です。人数の多い共通科目でも学生一人ひとりに気を配っています。英語やピアノの指導においては、習熟度別に適切なクラス配置を行うことで、それぞれのレベルを引き上げる教育を展開しています。大切なのはベストを尽くすこと。人はそれぞれ必ず多くの才能をもっています。しかしベストを尽くさなければ、能力を伸ばすことはもちろん、今まで知らなかった自分の才能と出合うことはできません。自分の新たな才能に出合えば、もっとできるというチャレンジにつながります。そのような教育をしていきたいですね。 近畿の女子大学で、実就職率2年連続1位  「超小人数環境」の成果の表れの一つに、本学の就職状況があります。実就職率において近畿の女子大学で2年連続1位の評価を頂きました(大学通信社調べ/2015年3卒業生・2016年3月卒業生実績)。実就職率とは大学院進学者を除く卒業生総数に占める就職決定者の割合で、これが高いことは就職を希望する学生が多いことを示しています。本学では1年次生からキャリア教育を開始し、3年次生には毎週ゼミの後にキャリアサポートプログラムを用意しています。4年次生になるとゼミ教員とキャリアセンターが緊密にコンタクトを取り、一人ひとり面談を実施して動向を把握、就職が決まるまで、就職活動を全面的にサポートするようにしています。この点においても本学の教職員は本当に熱心で、キャリアセンターが状況を把握していない学生は一人もいません。  卒業生は幅広い業界で素晴らしい活躍をしています。学生たちのロールモデルとなる人も数多くいますので、今後は卒業生の来学を一層盛んにするなど、学生との接点を強化していきたいと思います。それは卒業生である私の役割の一つだと考えています。 鍛え抜かれた自身の学生時代  私の学生時代を振り返ると、本当によく勉強させていただいたと大学に感謝しています。先生方が厳しくも温かく鍛えてくださり、大学で初めて勉強の楽しさを知りました。アメリカの大学に学士入学した後、大学院に進みましたが、本学での学修が下地になってやり遂げることができました。アメリカの大学は出席に厳しく、宿題の量も桁違いに多いため、日本の大学出身者は戸惑うことも多いのですが、私は海星と同じだという受け止め方ができたくらいです。  学生一人ひとりに真摯に向き合い、献身的な教育を通じて個々の才能を開花させる。この本学の伝統を、これからもしっかり守っていきたいと考えています。

小野礼子氏

【Profile】

小野礼子(おの・れいこ)氏
1954年大阪府豊中市生まれ。神戸海星女子学院大学文学部英文学科卒業。イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校大学院国際英語研究科修士課程修了(M.A.)。神戸海星女子学院大学専任講師、助教授を経て2007年より同教授。文学部国際英語メディア学科主任、現代人間学部英語キャリア学科主任、同学部英語観光学科主任、宗教主事、法人評議員を歴任。2017年4月より現職。専門は社会言語学、語用論、英語教育。

【神戸海星女子学院大学の情報(スタディサプリ進路)】

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