教えて!「共通テスト英語と外部資格・検定試験」

 2020年度に創設される「大学入学共通テスト」の試行調査(プレテスト)が11月に行われますが、英語試験は来年2月に別途実施するといいます。
ところで英語は、23年度まで現行の大学入試センター試験と同様に共通テストでも英語試験を出題し、各大学は共通テストか外部の英語資格・検定試験のいずれか、または両方を課すと聞いていますが、その後はどうなるのでしょう。

教えて!「共通テスト英語と外部資格・検定試験」


 結論から言いましょう。24年度以降は出題されません。大学入学者選抜における英語の評価は、すべて外部検定の活用に一本化されます。
 もちろん、先の総選挙のように一寸先は闇ですから、この先、何が起こるか分からないと言えばその通りです。しかし少なくとも7月の共通テスト実施方針策定時から文部科学省の担当者は、24年度以降は英語を出題しない方針であることを明言しています。
 
 実施方針を見ても、24(平成36)年度以降「出題しない」とは書いてありません。しかし、よくよく読むと、まず、英語4技能評価は「資格・検定試験を活用する」という大原則を示した上で、「制度の大幅な変更による受検者・高校・大学への影響を考慮し、認定試験の実施・活用状況等を検証しつつ、平成35年度までは実施」するとしています。いかにも分かりにくい「霞が関文学」ですが、言わんとすることは、平成35年度までは「移行措置」であり、共通テスト英語は平成35年度限りだよ、ということです。
 高校や大学の関係者には、24年度以降も共通テスト英語の出題を続けてほしいという要望が根強く、文科省の会議等でも、質問や意見が頻繁に出されています。これに対しても文科省の担当者は、実施方針に沿った説明をするという、いかにも国会答弁のような説明に終始しています。それも要するに、新課程対応となる24(平成36)年度以降は絶対に出題しないよ、と言っているに等しいのです。
 
 では、なぜ文科省は、そこまでして外部資格・検定試験にこだわるのでしょうか。
 共通テストの英語では、今まで通り「読む」「聞く」の2技能しか測定できません。「話す」「書く」の試験もセンターで実施すべきだ、という意見もありますが、記述式問題の出題ですら混迷に混迷を重ねた上に、国語で80~120字程度を含む3問の「条件付記述式」という形に落ち着いたぐらいですから、センターが実施することになったら、それ以上に莫大な費用と時間(日程)が掛かることになり、とても現実的ではありません。
 
 入試は2技能で行って、4技能を身に付けさせるのは大学入学後で十分じゃないか……という考え方もあるでしょう。しかし文科省や、その下で英語教育改革を論議してきた関係者には、そもそも高校が4技能をしっかり指導していないじゃないか、という不満があります。
 ご承知のように現行の学習指導要領でも、高校の科目名を「コミュニケーション英語~」などとして、4技能のバランスが取れたコミュニケーション能力の育成を目指し、授業も英語で行うことを基本としています。しかし文科省の調査を見ても、低調なのは明らかです。高校卒業までに英検準2級~2級程度を達成した生徒の割合を50%にするという政府目標(第2期教育振興基本計画)も、17年度までの達成は絶望的です。
 それでは国内外でグローバル化がますます進む社会に出ていく生徒たちに、必要な英語力が付きません。しかも新指導要領では、小学校高学年から4技能の英語が教科化され、中学校も英語での授業が基本になります。入学者選抜における外部検定の活用は、なかなか授業改善が進まない高校に業を煮やしてのことだ、とみることもできます。
 
 もちろん検定料の負担軽減など、受験生への配慮は不可欠でしょう。ただ、国立大学協会は近く、20年度から外部検定を活用することを申し合わせたい考えです。4技能に対応した授業は、待ったなしなのです。


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【profile】
渡辺敦司(わたなべ・あつし)●1964年北海道生まれ。1990年横浜国立大学教育学部教育学科卒業。同年日本教育新聞社入社、編集局記者として文部省、進路指導・高校教育改革など担当。98年よりフリーの教育ジャーナリスト。教育専門誌を中心に、教育行政から実践まで幅広く取材・執筆。
教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説 http://ejwatanabe.cocolog-nifty.com/blog/