広島文教大学(仮称) 学長 森下要治氏

※2019年4月、広島文教女子大学より名称変更予定(構想中地域と共に歩んでいくために 教育学部の新設、男女共学へ移行 変わらぬ「文教らしさ」を軸に飛躍する 新学部設置と男女共学化 文教の教育をより多くの学生へ  本学は『大学探しランキングブック2017』(大学通信調べ)において、全国の高等学校の進路指導教諭が評価する「面倒見が良い大学」中・四国地区私立大第1位を獲得するなど、地元の女子教育を担う教育機関として、教育力を重視、小学校教員採用試験では例年高い合格実績をあげるなど、きめ細かな指導を徹底し人材育成を行ってまいりました。2019年4月に「人間科学部 初等教育学科」を「教育学部 教育学科」に改編、また、同時に男女共学に移行し、校名を「広島文教大学(仮称)」に変更、新校舎も建設予定と、過去十数年の中で最も大きな改革を行っているところです。 改革の背景にある「地域への思い」  私は、昨今の大学改革論議の中で用いられる「高等教育機関を取り巻く状況」という言葉に違和感があります。大学だけが社会の中から個別的に飛びだしているかのような表現ですが、大学も社会の中の動きの一つであるはずで、むしろ立地する地域社会の中で、大学が地域とどのようにつながっているのか、改めて問い直すところから始めるべきではないかと思うのです。本学が立地している広島市安佐北区は、市内でも高齢化が進んでいる地域の一つです。一部報道では、本学の共学化は少子化対策が目的であると説明されましたが、今回の改革の柱は、「大学だけが変わるのではなく、地域に最もインパクトを与え貢献できることを突き詰め、地域と共に成長できる大学づくり」を実現することです。女子大としての本学は、地域貢献の文脈であれば地域の若者の半分の夢しか叶えていないという見方もできます。全国の教員男女比を見てみると、学校区分が幼稚園、小学校、中学校と上がるほど、男性教員の比率が上昇しています。教育学部を構想するに際し、このような状況を勘案しました。また共学化によって男子にも門戸が開かれ、男性小学校教員の養成に貢献、女子に対しては中高の教員免許も取得可能になるので、選択肢を広げることができます。より多くの若者が教員になる夢を叶え、良い先生となり地域で活躍する―教育学部を強化することが地域貢献につながる、地域と共に発展する道を模索した際に男女共学化を考えた、という背景をご理解いただきたいと思います。 教育学部をどういった学部に育てたいか  教育学部設置にあたり、「優しい教員を育てる優しい教育機関を作りたい」と構想しています。教育機関とは、どこよりも優しい職場であるべきだと考えます。ただしそれは決して甘やかすという意味ではありません。厳しさは当然あるのだけれども、厳しさの底に優しさを抱えた人物、常に相手のことを思いやる、優しい人材を育てたいということです。それは立ち返ると、本学の「心を育てる(育心育人)」という教育理念につながることだと考えます。  象徴的な事例が、初等教育学科の4年生が作成する教員採用試験内容を地域別に記録した冊子です。合格者だけでなく教員採用試験に不合格だった学生であっても、後輩のために自分の教員採用試験の経験を共有してくれます。既に終わった試験について、時間をかけて記録を残すこの行動は、優しさが根本になければできません。今、自分で学んでいることが、子どもたちにどう役に立つのかと想像力を働かせ、将来的には他者に、社会につながっていくということを常に意識している証拠です。自己満足だけで生活していると、人に優しくすることはできないのです。  教員免許を取得するだけなら、どの大学でも同じです。本学は、教員採用試験を「個人戦」ではなく、「団体戦」と考えています。ライバルだから協力しないではなく「自分」の学びの場を「みんな」で作り、「自分」の活動によって「みんな」の学びの場を支え、互いに高め合うことで合格を掴み取っていく。本学は、こうした考え方を理解していただける学生の入学を期待しています。  また、教育学部専用棟も建設予定です。新校舎のコンセプトは、「ラーニングアクアリウム」―学ぶ姿が可視化できる場づくりです。先輩たちのがんばる姿を後輩たちが自然に目にすることができるもの、また仲間との学び合いを重視した作りです。講義室と教員の研究室を同じフロアにガラス張りで展開することで、学生と教員とが行き来し一緒に学べる場を意図的に作ろうとしています。学生と教員が一緒になって学ぶ、本学らしい「団体戦」のスタイルが盛り上がっていくような建物にしたいと思っています。いろいろな人がここを見て「文教の子はがんばるね」と前向きな気持ちになってもらえるような場所を作ります。 女子教育から「女子の」教育へ  男子の入学者が増えたとしても、女子中心の学校であることに変わりはありません。しかし、少数派の男子が入学してくるときに、女子学生が大学の中でどう振る舞うかは非常に大切な学びです。男女が共に学ぶことで、女子の教育機会自体は拡がっていくはずです。それを「女子の」教育と改めて定義したいと思っています。新たに出会う人に対する優しさがこれからの本学を形作るうえで最も重要なことになっていきます。  本学は派手ではないけれども堅実、ということは地域の方にも高校の先生方にもご理解いただいています。たとえ共学化して見かけの姿が変わっても、真実・堅実・誠実という根底に流れる精神を重んじ、変わらぬ文教らしさをもって教育にあたってまいります。

森下要治氏

【Profile】

森下要治(もりした・ようじ)氏
島根県出雲市出身。広島大学大学院文学研究科博士課程後期単位取得満期退学。 広島大学文学部の助手を経て、1997年に広島文教女子大学文学部講師として着任。 人間科学部に改組後、助教授、准教授、教授を経て、2015年から副学長、 翌年からグローバルコミュニケーション学科長を兼任、2017年から現職。専門は日本文学。

【広島文教女子大学の情報(スタディサプリ進路)】

大学・短大トップインタビューに戻る