高崎健康福祉大学 理事長兼学長 須藤賢一氏
2019年4月、群馬県で初めての農学部を設置。
地域社会も国際社会も支える人材を育成します。
他人に貢献できる喜びを自分の喜びにする「自利利他」の精神
高崎健康福祉大学は、2001年に群馬女子短期大学を母体として設立された総合大学です。現在は、人間発達学部、健康福祉学部、保健医療学部、薬学部の4 学部7 学科を擁しており、2019年には農学部を新設する予定です。各専門分野の学びおよび資格取得と、専門を超えて一人の人間の幸せを総合的に見つめる包括的な視野を重視した教育を行っています。
国際化する社会においては、海外を志向する学生のみならず、我が国の地域社会を支える人材にも国際的な素養が求められます。本学では、地球のどこにいても、自ら考えて行動できる学生の養成を目指しています。そのために教職員も常に学んでいます。新しい時代を見据えた教育法を取り入れ、学内教職員向けの教育コーチング研修も積極的に取り入れています。
本学は「健大精神」として、人の喜びを自分の喜びとする「自利利他」を掲げています。人とふれあい、人の役に立つ実感は何ものにも代えがたいやりがいです。「自利利他」の精神をもち、他人に貢献できる喜びを自分の喜びにする。そして、その喜びを自らのエネルギーにして、自分自身を高めることができる人になってほしいと願っています。
国内有数の農業県である群馬県に農学部を新設
本学が立地する群馬県は、利根川水系の豊かな水と全国2番目の日照時間の長さから、全国有数の農業県として知られています。群馬県産の農作物は、24品目が全国出荷量でトップ10に入っています。
しかし、残念なことに、県内の大学に農学部はありません。これまで県内の大学では、農学の専門知識を学ぶことはできませんでした。そこで、本学で学ぶことができるように、2019年4月に農学部を開設する予定で準備を進めています。
我が国の農業は、現在、就農者の高齢化や後継者不足など深刻な問題に直面しています。一方で、我が国の農産物は、その安全性や高品質なことから海外から高く評価されているのも事実です。
本学農学部では、農業の課題の克服とその優位性を大きな果実に導くためにそのイメージを刷新し、農産物の高品質化・高付加価値化、ブランド化、輸出の増進等を介して就農者が誇りや喜びに満ち、同時に所得向上に寄与して農業の魅力を高める人材の養成と研究開発を目指します。
種まきから、地域社会、ひいては人類の未来を見据える
食と農は人類の生存と健康の基盤となる重要なテーマです。農学とは、生命の仕組みを理解するだけでなく、種まきから収穫、そして食卓、さらには健康まで切れ目のない視野をもって利活用する行為を学ぶことだと考えています。
本学農学部は、次世代の担い手やリーダーの育成、ICTの活用、攻めの農業の展開、安心・安全な食の提供など農学に必要な実学的環境を整えています。
キャンパス内に圃場を設け、豊富な実習授業を行います。生物が好きで、土が好きな、自分で種を蒔いて生産することに喜びを感じるような学生に入学していただきたいと思います。
農業は、民芸や祭りなど、地域社会と最も密接に関係する産業です。農業を盛り上げることは、少子高齢化によって衰退する地域社会の再興にもつながると考えています。新たに農業を志す学生はもとより、農家の後継者にも新時代の農業を学んでいただけることと思います。
専門的かつ横断的に農学の幅広い知識・技能を習得
農学部には生物生産学科を設け、2年次から段階的に、「生命科学コース」、「作物園芸システムコース」、「フードサイエンスコース」、「アグリビジネスコース」の4コースに分かれて、それぞれの専門的な学問体系を学んでいきます。
「生命科学コース」では、生物生産・食品・健康の一連のサイクルを理解し利用するための研究・開発に携わる人材の育成を目指します。
「作物園芸システムコース」では、ICT等先端技術を活用して生産過程の省力化や作物の高品質化など、スマート農業を確立するための研究・開発・技術指導に携わる人材の育成を目指します。
「フードサイエンスコース」では、食品の加工や保蔵技術、機能性食品など人々の健康に直結した研究・開発・品質管理に携わる人材の養成を目指します。
「アグリビジネスコース」では、生物生産・食品・健康の一連のサイクルを、経営学・経済学・社会学を用いてリードまたはサポートする人材の養成を目指します。
定員は1学年100名。専門的に学びながらも、コース横断的な科目履修を積極的に推奨し、農学の幅広い知識・技能を習得できるようなカリキュラムを構築中です。
さらに、大学だからこそできる研究機能を強化します。1期生が卒業する春には大学院の設置も構想しており、高度な研究を継続的に行うことができるよう、環境を整えていきます。
スマート農業で、地域社会と国際社会に貢献する人材を育成する
世界を見渡せば、今後ますます、人口増加と食糧不足が大きな問題になっていきます。日本は人口減少社会が進み、我が国の農業は、離農者が増え、担い手不足が顕在化しています。
本学農学部では、農林水産省が提唱する「スマート農業(ロボット技術やICTを活用して超省力・高品質生産を実現する新たな農業)」を担う人材の育成に力を入れ、新しい時代の農業の担い手を育てます。
ロボット技術やICTを活用すれば、農業従事者が旅行などで農場を離れていても、スマートフォン等を通じて栽培状況を把握でき、遠隔操作も可能となる新しい農業への転換が可能です。また、ドローンを農作業に応用することもできます。「農業は大変」というイメージが刷新されれば、離農者の減少、新規就農希望者の増加も見込めると考えています。
食と農は人類の生存と健康の基盤となる重要なテーマです。現在は、世界規模で和食がブームとなっており、日本の農産物にも注目が集まっています。しかし、我が国の農産物を海外へ輸出するためには、さまざまな課題があり、制度上も難しい問題があります。農業は、良い農作物を作るだけでなく、それをより多くの顧客に届けるためのシステム作りも学ばなければならない時代になっています。
農業行政に明るく、アグリビジネス(農業に関連する幅広い経済活動)に精通し、GAP(Good Agricultural Practice:農業生産工程管理)のできる人材の養成が急務です。本学で農学を学ぶ学生には、自らの考えと専門的知識をもち、地域でスマート農業を活用しながら、国際的な視野で活躍する農業人材となってもらいたいと考えています。
【Profile】
須藤賢一(すどう・けんいち)氏
北海道大学大学院農学研究科博士課程修了。
農林水産省森林総合研究所成分利用研究室室長を経て、ポストドクターとしてカナダ・サスカチュワン大学化学工学科で研究活動。
1991年から群馬女子短期大学副学長として学園に赴任。以降同短期大学長、学園理事長を歴任し、現在に至る。
群馬県私立大学協会会長、ぐんま地域・大学連携協議会会長。