教えて!「これからの大学はどうなる!?」

 2040年ごろの社会を見据えて高等教育の在り方を検討してきた中央教育審議会の「将来構想部会」が25日、中間まとめ案を大筋で合意しました。これからの大学は、いったいどうなるのでしょう。幾つかの国立大学が法人統合の検討を始めたというニュースも、これに関係しているのでしょうか。

教えて!「これからの大学はどうなる!?」

 2040年というと、ずっと先のような気もしますが、今年生まれた子どもが「大学の学部段階を卒業するタイミング」(中間まとめ案)です。一方、主な大学入学年齢である18歳人口は、「2018年問題」を迎えた今年の118万人から、32年には100万人を割り、40年には88万人と、30万人も減ってしまうと予想されています。

 大学進学率は昨年度の段階で52.6%でしたが、同部会では40年の大学進学率を57.4%と推計しており、昨年度の短大進学率(4.7%)が加わる程度です。今でも私立大学の4割が定員割れとなっている中、大幅な留学生の増加や社会人の「学び直し」でもない限り、国公私立を合わせて780ある大学は、量、質の両面で、とても維持できません。

 何より人工知能(AI)の登場で仕事の半分が入れ替わると言われる中、「超スマート社会(Society5.0)」やグローバル化など、「人生100年時代」の社会に向けた人材育成の課題は山積しています。国レベルはもとより、地方創生の観点からも、地域の高等教育規模をどうするかの検討が迫られています。

 同部会は、全国だけでなく、都道府県別にも、進学動向や学部の配置状況が2040年にどうなるかの推計値を示しています。規制緩和の時代に文部科学省が各大学の定員管理を行うような「護送船団方式」は取りようもありませんから、個別大学はもとより、各地域で将来の高等教育はどうあるべきかを考えてもらう必要があります。

 そこで同部会が打ち出したのが、段階的な「連携・統合」です。まずは域内にある複数の高等教育機関が、産業界や地方自治体を交えて協力し合う「地域連携プラットフォーム(仮称)」を構築します。さらに、例えば共同で教職課程を設置するなど、国公私を超えた連携を可能とする「大学等連携推進法人(同)制度」を創設。そうして連携が深まっていけば自然と統合話も持ち上がってくるだろう、ということで、国立大学は1法人が複数大学を持てる(現在は1法人1大学)「アンブレラ方式」、私立大学は丸ごとの統合だけでなく、学部・学科単位で譲渡ができる制度なども検討されています。入学する大学を一つに絞り、その大学の中だけで4年間学ぶ、という当たり前に思ってきた姿は、将来的に一変してしまうかもしれません。

 大学での学び自体にも、変革が迫られています。中間まとめ案では、高等教育が「個々人の強みを最大限に活かすことを可能とする教育」を行った上で、「何を教えたか」から「何を学び、身に付けることができたのか」への転換が更にもとめられると指摘しています。初等中等教育の「何ができるようになるか」「何を学ぶか」「どのように学ぶか」と軌を一にした、コンピテンシー(資質・能力)に基づく教育課程改革が求められています。

 教育の質については大学が自ら責任を持って保証し、第三者の評価を受け、その成果を社会に対して積極的に情報公表していくことが必要であるとして、学修成果や教育成果の可視化に係る情報と併せて、留年率、中途退学率など、新たな情報公表の促進も提言されています。

 そもそも高校教育・大学教育・大学入学者選抜を一体とした高大接続改革の中では、大学教育改革が先行してきました。「三つのポリシー」(アドミッション・ポリシー=AP、カリキュラム・ポリシー=CP、ディプロマ・ポリシー=DP)の策定義務付けが典型です。大学が生き残りを懸けて、場合によっては個別大学を超えた改革を急いでいるのですから、高校教育の側もうかうかしていられません。生徒の進路実現のための入試対策といった直近の対応も大切ですが、あくまで高校・大学を通して社会で活躍できる力を付けさせるにはどうするか、という発想で未来志向の高校教育を考えなければ、卒業後に不幸になるのは生徒たちです。


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【profile】
渡辺敦司(わたなべ・あつし)●1964年北海道生まれ。1990年横浜国立大学教育学部教育学科卒業。同年日本教育新聞社入社、編集局記者として文部省、進路指導・高校教育改革など担当。98年よりフリーの教育ジャーナリスト。教育専門誌を中心に、教育行政から実践まで幅広く取材・執筆。
教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説 http://ejwatanabe.cocolog-nifty.com/blog/