新渡戸文化短期大学 学長 関谷 透氏
若い世代を中心に、創立 100 周年に向けた
次世代プロジェクトが始まっています。
資格を通して、社会に貢献できる専門性の高い人材を育成
1927 年(昭和 2 年)、東京市本郷区(現・東京都文京区)に女子文化高等学院として創設された新渡戸文化短期大学。創設者の森本厚吉博士は、当時、家庭経営の中心であった女子の教育が最も重要であると考えました。翌年には女子経済専門学校に昇格し、初代校長に新渡戸稲造博士を迎え、消費経済学の授業や家事の実習に加え、政治、法律、時事などの幅広い分野にわたる教育が行われました。
建学の精神は、「Veritas vos Liberabit 〜真理はあなたたちに自由を与える〜」で、ヨハネによる福音書第 8 章の言葉を頂いており、「学問の目的は、真理の発見にある。真理は私達に自由を与えてくれる。」と解釈しています。
本学の教育理念は、「活(はたら)く頭、勤(いそ)しむ双手(もろて)、寛(ひろ)き心」の「Head、 Hands、 Heart」の 3H 精神です。現在では、同精神を引き継ぎ、「いのち、やさしさ、おもいやり」を大切にした教育を進めています。
本学は建学の精神と教育理念のもと、「栄養士」、「幼稚園教諭」、「保育士」および「臨床検査技師」の資格を通して、社会に貢献できる専門性の高い人材を育成することを目的とし、専門職に関する優れた知識と技能を備えた、心豊かで思いやりのある人材を輩出しています。
少人数教育で教員と学生の距離が近く、きめ細かな個別指導
短期大学は、常に社会の移り変わりと要望に対応して変化し続けなければなりません。本学も、2003 年(平成 15 年)には生活学科の中に 2 専攻を置いて共学とし、2006 年(平成 18 年) から臨床検査学科を設置して、それまで専門学校として行っていた臨床検査技師教育を引き継ぎました。現在は、2 学科で生活と医療に関する実践的な教育を行っています。
生活学科に設置しているのは、食物栄養専攻と児童生活専攻です。
食物栄養専攻は、食や栄養と健康の理念をふまえた幅広く応用力のある知識と、洗練された調理の技術を修得し、現場で活躍しながら社会に貢献できる心豊かな栄養士の養成を目的としています。取得できる国家資格は栄養士。1 クラス 40 名の少人数制で、教員と学生の距離が近く、発言や質問、ディスカッションのしやすい雰囲気の中で、学びを深めることができます。本学の食物栄養専攻が目指すのは、食を通じて人々を笑顔にすることができる調理の上手な栄養士です。多くの体験型授業で専門性を深め、人々の健康づくりに貢献するための技能を身につけます。
児童生活専攻は、乳幼児の教育・保育及び家庭や地域社会に関する本質と原理を学ぶとともに、専門的な知識と技術、工夫する力を身につけ、社会に対する深い洞察と優しさ、思いやりのある幼稚園教諭・保育士を養成することを目的としています。1 学年 50 名の少人数制で、勉強もピアノの練習も、きめ細かな「個別指導」が中心です。取得できる国家資格は、幼稚園教諭二種免許状と保育士。同じ敷地内にある新渡戸文化子ども園との連携により、実際に園児と触れ合う経験を積むことができます。授業終了後には「アフタースクール(学童保育)」の小学生たちと過ごしたり、休日には地域の「子育て支援」活動で赤ちゃんのお世話をするなど、本学には「実践教育」の環境が整っています。
日本初の臨床検査技師養成校として多くの卒業生を輩出
臨床検査学科は、1952 年(昭和 27 年)に我が国初の臨床検査技師養成校となる医学技術研究室として発足しました。本学の臨床検査技師養成教育の歴史を紐解くと、日本の臨床検査技師養成教育の歴史が見えてくるともいわれています。長い歴史の中で多くの優れた卒業生を輩出し、彼らは現在も、全国の医療施設で活躍しています。本学に附属病院はありませんが、5カ月間にわたる臨地実習は、卒業生が働く東京大学医学部附属病院、慶應義塾大学病院、東京慈恵会医科大学附属病院、聖路加国際病院などを始めとする一流病院で行っています。
臨床検査学科は、高い専門性と倫理観を兼ね備えた臨床検査技師を養成することを目的としています。学生は、技術を身につけるだけでなく、地域のボランティアとしても積極的に活動します。中野区と協定を締結し、がん検診受診率向上を目指し、中野区役所内や中野駅周辺でボランティア活動を実施。また、献血広報活動なども行うなど、地域とのつながりを大切にしながら、医療人に必要な慣習や人格を身につけ、コミュニケーション能力を高める努力をしています。
新渡戸文化短期大学は、学園内に子ども園、小中学校、アフタースクール、高等学校が併設されているため、その利点を活かしてさまざまな学園内コラボレーションを実施しています。特にボランティア活動は、新渡戸文化学園全体で行う活動です。小中学生・高校生が取り組む躾プロジェクトは、勉強だけではなく、思いやりや調和の取れる人を育むための取り組みで、朝の地域清掃には短期大学生も一緒に参加しています。清掃活動を通して、挨拶の仕方やマナーなど、短期大学生は子どもたちのお手本になっています。
100 周年に向けて活性化する次世代プロジェクト
18 歳人口が減少するなかで、短期大学を取り巻く環境は年々厳しくなっています。しかしながら、短期大学だからこそできる教育があることも事実です。短期大学の利点の一つには、短期間で学位がとれることが挙げられます。漠然とした知識ではなく、資格をとり、専門職に就く人材を短期間で養成するには、短期大学が適していると言えるでしょう。地域のニーズに対応する職業人の育成、きめ細かな教育の実践、教員と学生が協力して行うアクティブラーニング、4 年制大学への編入支援にも力を入れています。
社会が短期大学に求めるものに常に敏感でなければならないと考えています。今後も需要があるのは、教育、家政、保健、医療などの分野です。これらの分野で専門技術をもった職業人として活躍する人材の育成が、短期大学に求められる役割であろうと考えています。そして女性の地域への進出、地域経済の活性化を支えていきます。
現在、新渡戸文化学園では 2027 年の創立 100 周年に向けて、次世代プロジェクトが進行しています。子ども園、小中学校、アフタースクール、高等学校、短期大学の教職員が横断的に参加し、主にアクティブラーニング、ICTの活用、新しい行事の形、食育の 4 分野のこれからについて若い世代を中心に話し合っています。
栄養士、幼稚園教諭、保育士、臨床検査技師は、いつの時代にも求められる専門職です。新渡戸文化短期大学では、これからも、専門職に関する優れた知識と技能を備えた、心豊かで思いやりのある人材の育成に力を注いでいきます。
【Profile】
関谷 透(せきや・とおる)氏
東京慈恵会医科大学大学院修了。医学博士。放射線科専門医。東京慈恵会医科大学放射線医学講座助手、英国 Royal Marsden 癌研究病院助手、英国 Manchester 大学医学部放射線診断科臨床研究員兼講師、東京慈恵会医科大学放射線医学講座講師、同准教授などを歴任。東京慈恵会医科大学放射線医学講座教授を経て、 新渡戸文化短期大学学長。