名古屋文化短期大学 学長 成瀬正春氏
国際的な視野に立ち、豊かで潤いのある生活文化を
創造できる「よき社会人」を育成します。
先を見据え、時代の要請に応じた人材の育成を目指す
本学は1933年に山田新平、久子夫妻によって設立された山田和服裁縫所を前身にもつ短期大学です。家庭生活を基盤とした女子教育を行うことを建学の精神に掲げ、「よき家庭人」の育成を目指して教育を行ってきました。その精神を引き継ぎながら、時代の要請に応じて教育体制の見直しなどに取り組んできました。
1950年には名称を山田家政短期大学に変更しました。服飾や調理を中心とした家政科を設置し、「よき社会人」の育成のために再スタートを切りました。1987年には名古屋女子文化短期大学と校名を変え、それまでの教育の内容を発展させ、より広範な生活文化へと学びの枠を拡大。同時に、この頃から急速に進みだした国際化に対応できるよう国際的な視野をもった人材を育成する教育へと展開してきました。
2004年には男女共学化に踏み切り、それに伴い校名も名古屋文化短期大学と変更しました。現在、ライフスタイル、美容、ファッション、食生活など3専攻、12コースを設置し、「グローバルに役立つよき社会人」の育成に取り組んでいます。
教育を支える3つの柱
本学での2年間で、専門知識、専門技術をしっかり修得させるのはもちろんですが、短期大学ですので、それに加えて教養ある人材を育てることを重要な使命だと考えています。そのために教育理念として3つの柱を掲げています。
第1は、国際化、情報化時代の新しい可能性に挑戦できる人材の育成です。情報があふれる現代において必要なのが、情報を整理して正しく判断する能力です。そのために、情報をどのように精査し、より質の高い情報をどのように整理するのかといった方法を学ばせています。国際化については多文化共生社会を理解できる人材の育成に力を入れています。
第2は、自立した学生の育成です。自分で考え、自分で判断して行動できる人材を育てたいと思っています。そのために「学生自らが関心を持つきっかけを引き出す」「学生自らが判断できるまで待つ」という、学生主体の教育を推し進めています。また、「模擬結婚式」をはじめ、学生自らが企画、実行するアクティブラーニング形式の授業を多く取り入れ、学生の自立心を育てています。
第3は、第1でも触れましたが国際的な視野に立って新しいモノの見方ができる人材を育てること。そのためには、日本と海外の文化の違いを理解することが必要不可欠と考えているため、海外研修を積極的に取り入れています。本学では学生の約半数が海外研修に参加し、国際的な感覚を身に付けるために海外で経験を積んでいます。
社会で生き抜くために教養を深め、コミュニケーション能力を育む
専門知識や専門技術は当然必要ですが、それだけで社会を生き抜いていけるものではありません。なぜなら、職場には同じように専門の知識や技術をもった人が集まっているわけですから。その中で「自分らしさ」を発揮するには教養の深さや、物事を能動的に考える力、コミュニケーション能力が必要だと考えています。
本学では教養を深めるために、学生には新聞を毎日読むことや、物事を能動的に考える習慣を付けるために、授業後に授業内容に関するコメントシートを提出することなどを勧めています。これらを通して文章の読解力、理解力などを深めるとともに、学生自らが社会や授業により深い関心をもつきっかけづくりをしています。
能動的に行動するためには、コミュニケーションをとったり、リーダーシップをとる力などが求められます。そこで「アクティブラーニング」を取り入れ、リーダーシップの取り方やグループ内での個々人の活躍の重要性を学ばせています。また相手の話を聞いて、自分の意見を伝える練習も行い、コミュニケーション能力の向上を図っています。
教職員同士で話し合う機会を設けたり、互いの授業を見学して教授法などを研究する取り組みも行っています。教職員もよりレベルアップした授業を行うため日々努力を重ねています。
本物の良さに触れる教育を実施
“本物に触れる教育”にも力を入れています。例えば、歌舞伎の観劇や、一流ホテルでの食事などを教育の一環に組み込んでいます。各業界の最高峰のもの、一流のものに触れることで良い刺激を受け、感動する心や美意識、感性を育てたいと考えているからです。そして、頑張ればいつか自分も一流のプロとして活躍できるかもしれないという、学生たちに夢を抱かせる教育をしています。
産学連携に早くから取り組む
毎年、教育内容や教授法、新しいコースの設置など、たゆまぬ改革を推し進めています。それは、創立以来一貫して時代を先取りする短期大学を目指し、10年後はどうなっているかを踏まえた教育に取り組んできたからです。
また、名古屋の都心に位置するという好立地を生かして、近隣で活躍する各業界のスペシャリストを講師に迎えた実践的な教育を展開してきました。言うなれば、早くから産学連携に取り組んできたわけです。高校と大学双方が教育の在り方や情報を共有する高大連携に対する取り組みも積極的に行い、高校の教職員の方々や保護者のニーズをリサーチしたうえで、業界に精通した講師と共に本学での学びや業界の情報提供にも努めています。
4年制大学と専門職大学の利点を取り入れた新たな教育を模索中
4年ほど前から、より職業実践教育に特化した専門職大学や専門職短期大学の制度化が話題になっています。教養教育を重視し、産学連携などの取り組みを積極的に行ってきた本学は、4年制大学と専門職大学の利点を早くから取り入れた短期大学だと自負しています。今後はさらに教養教育体制と専門職教育体制を深化させ、さらに充実した教育体制を構築していきたいと思っています。
短期大学が得意とする2年間での集中的な教授法を生かし、専門職大学が目指す教育を組み込みたいと考えています。
本学は美を学び、美を極めて、美しい生活文化を創造できる人材を育てています。ですから「美」に関心をもち、人を笑顔にしたいと考えている学生にぜひ学んでほしいです。
また、入学前から在学中、卒業後まで、教職員はもちろん、私自身も学生一人ひとりと話をして、夢の実現に向けて最大限の支援をしています。その点も少人数教育を徹底している本学の魅力だと思います。
【Profile】
成瀬正春(なるせ・まさはる)氏
岐阜市立岐阜薬科大学大学院薬学研究科修士課程修了。名古屋市立大学医学部学位取得(医学博士)。
名古屋市衛生研究所環境化学部技術職員、名古屋市立大学医学部衛生学教室助手などを経て、2018年に名古屋文化短期大学長に就任。
専門は被服衛生学。現在も日本家政学会、日本衣料管理協会等の役員を務める。