西武文理大学 学長 小尾敏夫氏

開学20周年を機に、ICT分野への強化・改革を図り、
競争力のある大学を目指す


次代にふさわしい学びの場に
 2019年に開学20周年を迎える西武文理大学は、これまで、ホスピタリティ教育を軸に実学教育と人間教育を融合させ、サービス・イノベーションを学ぶ「サービス経営学部」と看護専門職を育成する「看護学部」の2学部体制で、サービス業界および保健医療業界におけるプロフェッショナルを輩出し、ホスピタリティ教育のパイオニアとして各方面から注目を集めてまいりました。
 そして今年4月、私は西武文理大学の学長に就任し、開学20周年という大きな節目を目前に、より魅力ある大学づくりを目指してその基本的な考え方を打ち出しました。
 少子高齢社会と情報社会、そしてグローバル社会が融合し、イノベーションの時代に変革している現代社会。この新しい時代に適応できる先見性と実行力を養う学びの場として、本学に欠けている部分が私の専門とするICT分野であると捉えています。大学運営にこれまでの研究実績や成果を最大限に生かし、カリキュラムをはじめさまざまな体制づくりを整えながら、長期的展望に立った数々の構想も含めて大きく改革を進めていきます。

魅力ある大学づくりを目指して
 これからの西武文理大学は、「情報社会」「少子高齢社会」「グローバル社会」この3つの社会に貢献するイノベーションを創造できる人材の育成を目指します。
 サービス経営学部についていえば、あらゆる業界、企業でICTやAIなどの技術が活用されており、その進歩には凄まじいものがあります。ホテルや飛行機・新幹線の予約はその場で瞬時に完了させることができる。あるいは既に運用されている自動車や鉄道の自動運転の開発など、ひと昔前では想像もできない時代へと突入しています。
 AIを使った新しい情報産業がどんどん増えていくこれからの時代を見据え、本学のサービス経営学部は、イノベーションを起こしたり、イノベーションによって新しいシステムができるということを理解するための学修や研究の場にしていきたいと考えています。
 一方、今日の医療福祉や介護の現場では、当たり前のようにロボットが活躍しています。今後もその進化のスピードはますます高まることでしょう。また、個人の医療情報は電子化され、ビッグデータとして世界中のどこからでもその情報が活用できるという時代は、もうそこまでやってきています。
 そこで、本学の看護教育にICTやAI、あるいはビッグデータなどが学べる看護学部の学生のためのカリキュラムを私はいち早く、本学で実現させたいと考えています。ICTやAIをある程度理解している看護専門職が医療現場で活躍する。これまでにはないこの看護教育は、日本にとっても重要な進歩となります。これを西武文理大学から始めたいのです。
 本学のサービス経営学部および看護学部にICTというものを掛け合わせることで、大きな可能性が生まれてくると感じています。

西武文理大学が、イノベーションを起こす拠点に!
 本学のカリキュラムにAIやビッグデータ、サイバーセキュリティなど、ポピュラーな科目を組み入れることはそれほど難しいことではありません。しかし、問題はそれらを指導する専門家の不足です。教員の数といえばほんのひと握りで、引っ張りだこの状況です。そこで私は本学に実験研究のためのスペースを作り、研究型の大学として人を集め、専門家を増やしていき、イノベーションの聖地にしていくために西武文理大学のキャンパスに産業イノベーションセンターを開設する。これはぜひ実現させたい構想の一つです。
 さまざまな企業や自治体、イノベーションに興味関心のある専門家や研究者、他大学の教授などがオープンイノベーションとして集まり、これまでにない新しいものを生み出す。異業種・異文化との交流を通して新たな知識や技術が生まれ、オープンイノベーションを起こすことのできる場所になることを理想としています。
 さらに、オンラインシステムを使ってテレビ会議をすれば、その場で、日本はもとより世界各国の人々とリアルタイムにさまざまな議論を交わすこともできるのです。

人生100歳時代における、リカレント教育の勧め
 西武文理大学で実現させたいもう一つの構想が、リカレント教育です。これは国策としても考えるべきことであるとも思っています。
 人生100歳時代といわれる今、驚くほどのスピードで日々進化する日本社会において、22歳で大学を卒業し、それ以降80年近い間、大学で学んだことを生かしていくことには、古典文学や歴史の世界でない限り無理があります。
 50歳前後で再度自分の人生を見つめ直して、残りの人生に向けて何か新しい技術や知識を身に付けたいという人々を再度大学に呼び込む。もちろん大学側も、約30年後の進化した日本社会や国際社会の変化に適応した大学として、しっかりとした受け皿を整備する必要があります。さらに日本の人口は減っていても、世界の人口は増えています。アジアやヨーロッパからも学生が来るような、グローバルでオープンな大学にしていくことも必要でしょう。
 例えば「100歳学部」など、長期的な展望に立った学部を作る。こうしたことが大学の使命であり、大学の果たす役割なのだと考えています。



小尾敏夫氏

【Profile】

小尾敏夫(おび・としお)氏

慶應義塾大学経済学部卒業、同大学院修士課程修了。
早稲田大学大学院にて博士号(国際情報通信学)取得。
国連開発計画の企画担当官、コロンビア大学主任研究員、労働大臣秘書官、早稲田大学国際学術院(大学院アジア太平洋研究科)教授、電子政府・自治体研究所所長を経て、2018年4月より現職。
内閣府IT戦略本部評価専門調査会委員、ユネスコ大学防災教育委員長などを歴任。
北京大学(中国)、ジョージワシントン大学(米国)、エセックス大学(英国)、サンクトペテルブルク国立大学(ロシア)、タマサート大学(タイ)の各客員教授を務めてきた。
また、APEC電子政府研究センター長、総務省ICT超高齢社会構想会議座長代理、総務省電子政府推進員協議会会長、国際情報化協力センター評議員、国連ITU(国際電気通信連合)事務総長特別代表、国際CIO学会世界会長、OECD・APECシルバーICTプロジェクト委員長、情報通信ネットワーク産業協会顧問、電気通信協会委員長、タイ政府情報通信省顧問なども務めてきた。
2013年第7回世界電気通信賞、2013年に平成25年度総務大臣賞(情報化促進貢献個人等表彰)2015年に2度目の総務大臣賞を受賞。
専門は、ICT、情報通信政策。

【西武文理大学の情報(スタディサプリ進路)】

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