教えて!「試行調査で見えてきた?新テストの姿」

  大学入試センター試験に代わって実施される新テスト「大学入学共通テスト」の第2回試行調査(プレテスト)が11月10、11日の両日に行われました。スケジュールに入っていた2019年度の確認試行調査は行わないことにしたといいますから、このまま21年1月の本番を迎えることになります。今後、新テストにどう臨んでいけばいいのでしょうか。

教えて!「試行調査で見えてきた?新テストの姿」

 昨年の第1回プレテストは新テストの理想型を追求し、あえて「とがった問題」(大杉住子・大学入試センター審議役)を出題したため、国語の記述式で正答率が0.7%の問題さえありました。それに対して今回は、選抜テストとして使えるよう、平均正答率を5割程度にすることを目指したといいます。そのため、現行のセンター試験問題と似てきたなという印象を持った先生も少なくないでしょう。

 作問に当たっては、国語や生物で文章量を2000字程度減らしたり、物理や化学で数値計算を要する問題を精選したりするなどの改善を行ったといいます。それでも、「国語以外の教科・科目においても問題文の読解力が求められることにはなる」(入試センター「問題作成における主な工夫・改善等について」)のは確かですから、普段の授業や学習で、文章や図表などを正確に読み取り、文章に的確に表現する訓練を日常的に積ませることが不可欠となるでしょう。

 入試センターは第2回プレテストの結果を年度内に分析・検証し、19年度初頭には各教科・科目の問題の狙いや実施方法等を通知するとしています。しかし具体的な問題としては、過去2回の「試行」問題しかないことになります。そのため、過去問から試験対策をしようとしても無理があります。

 重要なのは、出題されたプレテスト問題から、新テストに込められた「メッセージ」(大杉審議役)を読み取ることにあるでしょう。言うまでもなく新テストは高大接続改革の目玉として導入されるものですが、大学入学者選抜改革自体が、高校教育・大学教育を含めた「三位一体」改革の一環であることを忘れてはいけません。

 だからテスト問題には当然、高校教育改革が反映されます。新テストが思考力・判断力・表現力を中心に測定することを目指しているのも、既に現行の学習指導要領で学力の3要素を育成することが重視されていることを前提としています。新指導要領ではこれを「資質・能力の三つの柱」に発展させますが、新テストではそうした高校教育改革の趣旨を、現行指導要領の範囲内で可能な限り先取りすることを目指しています。今から新指導要領に向けて授業改善の取り組みに着手することが、新テスト対策の王道であるばかりでなく、それ以外に道はない、と言っても過言ではないでしょう。

 一方、新テストに伴って導入される英語4技能の外部資格・検定試験に関して、東京大学は必ずしも受検を義務付けず、CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)のA2レベル以上に相当する英語力があると明記する高校の調査書や証明書類でもいいことにしました。名古屋大学も同様の方針を発表しており、今後も旧帝大系を中心に追従する大学が増えることでしょう。生徒の学力評価を対外的にも耐えられるようにする高校の役割が、ますます高まります。実際には大変かもしれませんが、それもまた高校教育の王道であるはずです。

 もちろん、学力の三つ目の要素である「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度(主体性・多様性・協働性)」も忘れてはなりません。個別入試では、3要素すべてを評価して入学者を選抜することが求められるからです。

 各教科・科目等はもとより、高校の教育活動全体を通じて、教科横断的に3要素や資質・能力を育成する全校的なカリキュラム・マネジメント(カリマネ)と授業改善が、入試対策としても急務です。




<インタビュー・寄稿>の記事をもっとみる


【profile】
渡辺敦司(わたなべ・あつし)●1964年北海道生まれ。1990年横浜国立大学教育学部教育学科卒業。同年日本教育新聞社入社、編集局記者として文部省、進路指導・高校教育改革など担当。98年よりフリーの教育ジャーナリスト。教育専門誌を中心に、教育行政から実践まで幅広く取材・執筆。
教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説 http://ejwatanabe.cocolog-nifty.com/blog/