神奈川歯科大学 理事長 鹿島 勇氏

100年前から変わらぬ建学の精神のもと
100年後の価値創造を見据えた教育を行う


グローバルな視点で健康長寿社会を支える
 本学は、1910年(明治43年)東京神田猿楽町を建学の地とする東京女子歯科医学講習所に始まり、その建学の精神を今日まで継承している歯科医学教育機関です。現在、学校法人神奈川歯科大学として、歯学部歯学科、短期大学部歯科衛生学科・看護学科を併設し、神奈川県横須賀市および横浜市に開学しています。
 また、本学は“健康長寿社会を支えるプロフェッショナル組織”を目指すことを将来ビジョンとしています。それは日本国内に留まることなく、グローバル化という時代の潮流に対応したものでなくてはなりません。そこで、アジア地域全体を対象とした国際歯科医療教育機関としての役割を担うべく、積極的に留学生の受け入れを行っています。現在は約150名の留学生が、横須賀本校を学び舎として歯科医学の研鑚に努めています。昨年、初めて留学生が歯科医師国家試験にチャレンジし、10名中7名合格という結果を残しました。

歯科衛生のプロフェッショナルを育成する
 2019年4月1日、本学は東京歯科衛生専門学校と共に、歯科衛生士の新たなる価値の創造に挑戦します。具体的には、インプラント、矯正、歯周病、口腔機能低下等に対応する専門性の高い先端口腔医療機関の人材育成拠点を東京につくります。徹底した個別教育支援を充実させ「国家試験全員合格」を目指します。
 本学の建学の地は東京神田ですが、その後、1950年には、我が国で初めて歯科衛生士教育を行う日本女子歯科厚生学校を新たに開校しました。東京歯科衛生専門学校との連携は、原点回帰でもあり、本学が掲げる東京未来化構想の一翼でもあります。
 ところで歯科衛生士と聞いて、皆さんはどのような印象をおもちでしょうか。歯科衛生士は、歯科助手と誤解されがちですが、事実は異なります。それは、主に「歯科予防処置」「歯科診療の補助」「歯科保健指導」を行う、国家資格が必要な専門職です。
 今後本学では、複数の先端口腔医療のサテライトクリニックを実習の場とし、専門性の高い歯科衛生士の育成を構想しています。本学の人材と教育プログラムを東京歯科衛生専門学校と共有することで、先端口腔医療の人材育成拠点をつくります。

開かれた大学として地域に貢献する
 このたび、構内にある世界三大花木の一つであるジャカランダが、第7回横須賀市景観重要樹木審議会において「横須賀市景観重要樹木」に指定(2018年3月)されました。本学のジャカランダは、「本学のシンボルツリー」であるだけでなく、地域の皆さまにも愛されています。開花時期には、本学が主催する「ジャカランダフェスティバル」に、5000名を超える来場者がキャンパスを訪れます。
 さらに、地域に開かれたキャンパスとして、2019年には構内に保育所を開設しました。この施設は教職員のお子さんだけでなく、地域の方々もご利用いただく予定です。横須賀という地域特性を踏まえ、バイリンガル教育を視野に入れています。また、本学附属病院の1階には、障がいをおもちの方の働く場として、カフェテリアを作りました。将来的には、児童福祉施設出身者の方々にも雇用の場を設け、奨学金を活用しながら夜間大学に進学できるようなサポートプログラムを作りたいと思っています。これらはすべて、地域貢献の一環です。

未来を見据え、バックキャスティングで「今」をつくる
 大学経営においては、今後ますます時代を先取りしたリーダーシップが必要になることと確信しています。本学が留学生の受け入れを始めた10年前、周囲の理解を得ることはとても難しいことでした。教授会ですら、その意義を理解していたとは言えません。ところが、10年経った今、グローバル化を見据えての取り組みだったことが、広く共感を呼んでいます。
 2045年には、AIの進化スピードが無限大になるシンギュラリティを迎えると言われています。コンピュータが人間レベルの知性を獲得する2029年からバックキャスティングすると、これからの10年の過ごし方が見えるでしょう。本学は、100年後の価値創造を見据えて、教育活動を行っています。
 改革を始めて10年。財政再建と復旧、復興、未来化構想のすべてを同時に進めてきました。財政再建はできました。今求められるのは、未来化構想です。時間の流れが加速されるなか、学習効率を高めることも重要なテーマです。そのために本学では、すべての授業を録画し、学生が誰でも自由に学修できるICT教育も取り入れています。グローバル化、ボーダレス化に備えて異文化理解のための教育にも力を注ぎ、国際的医療人の育成を目指しています。このように時代の変化を見据え、環境を整えながらも建学の精神である「愛の精神」の実践を行い、心豊かな歯科医師の育成を続けてまいります。



鹿島 勇氏

【Profile】

鹿島 勇(かしま・いさむ)氏

神奈川歯科大学大学院博士課程修了。神奈川歯科大学放射線学助手、講師、助教授、教授、同大学附属病院副院長、同大学副学長、同大学図書館館長を歴任の後、同大学評議員、理事を経て、2009年12月より学校法人神奈川歯科大学理事長。

【神奈川歯科大学の情報(スタディサプリ進路)】

大学・短大トップインタビューに戻る