学校法人浪商学園 理事長 野田 賢治氏

2021年に学園創立100周年
これからも体育、スポーツを通して
社会に役立つ人材を送り続ける


「不断の努力により、智・徳・体を修め社会に奉仕する」
 浪商学園は1921(大正10)年に浪華商業実修学校として大阪市南区(現天王寺区)に創立しました。商業や貿易実務を教える小さな学校で、当時商業の中心地であった大阪に、全国から集まってきた生徒たちが学んでいたようです。建学の精神は「不断の努力により、智・徳・体を修め社会に奉仕する」。これは、創立者の徳永四郎先生が常々口にされていた「智・徳・体を求めて学業に励み修養に努め、国家有用の才たらんことを期せよ」という言葉が元になっています。「体」が含まれているように、創立者は教育と体を鍛えることは切っても切れないと考えていました。浪商といえば野球が有名ですが、1937(昭和12)年に選抜中等学校野球大会(現・選抜高等学校野球大会)で大阪勢初の全国制覇を果たすなど、当初から体育、スポーツを通じて青少年の育成を図ることに力を注ぎ、それが後に大阪体育大学の開学につながります。現在、本学園は、大阪体育大学・大学院、大阪体育大学浪商中学校・高等学校、大阪青凌中学校・高等学校、大阪体育大学浪商幼稚園の6校・1研究科を設置しており、2021年には創立100周年の節目を迎えます。

時代時代で求められる人材を送り出してきた体育大学
 大阪体育大学は1965(昭和40)年に大阪府茨木市に開学し、1989(平成元)年に現在の熊取町へ移転しました。初代学長は野田三郎先生、副学長は1932年ロス五輪の銅メダリストで1964年東京五輪の選手団長・強化本部長を務めた大島鎌吉先生です。当時は進学率が上昇し大学の新設も盛んな時代でした。本学は関西では最初に設立された体育大学ではありましたが、大学としては後発組であることから、既存の大学にない特色をもつために産業界への貢献を意識した、「生産体育」という概念を打ち出しました。労働者の健康管理を学び、安全衛生管理者(当時)の免許を取得させるコースを設置しました。高度経済成長期のさなか、企業の健康保険組合などでその有資格者が必要とされ、卒業生の多くは企業内で体力づくりや健康管理の指導を担っていたのです。当初はこの生産体育コースがメーンで、次に社会体育コース、学校体育コースを設置しました。本学は教員養成に強いイメージがあるかと思いますが、それはいっとき体育教員ニーズの急増期があり、すべてのコースで教員免許状を取得できたこともあって、本学の卒業生が全国的に求められたという背景によるものです。現在は教員のほか警察官、消防官や一般企業も含めた幅広い進路がありますが、いずれも時代時代に役立つ人材を育成してきた結果です。

「大体大力」を高める8つの力—着実に進む改革
 大阪体育大学は2015(平成27)年の開学50周年を機に、これからの10年を展望した長期計画「大体大ビジョン2024」および第4次中期計画(2015-2018)を策定しました。「大体大ビジョン2024」では「大体大力、新しい時代を切り拓く」をテーマに、教育、研究、拠点づくりの3つのビジョンと、ビジョンを実現するための重点施策を作成しています。「大体大力」を高める8つの力として「教育力」「研究力」「競技力」「社会貢献力」「就職力」「学生募集力」「広報・マーケティング力」「組織・経営力」を規定。これら8つの力を高めていくことが「大体大ビジョン2024」の実現のために不可欠という構造になっています。次の中期計画とともに「大体大ビジョン2024」の実現に向かって、今後も全力を尽くしていきます。

100周年で、さらにその先を見据えていく
 学園創立100周年を迎える準備は、2011(平成23)年の創立90周年のときから始めています。各設置校の代表者が10年後の100周年に向けてそれぞれの将来構想を発表しました。そこで設置校ごとの特色を活かして時代の最先端をいく社会に認められる教育機関になると宣言し、幼児教育から高等教育まで、相互に連携を図りながら魅力ある教育の提供などによって各界、各分野をリードする人材育成を目指すことを確認しあいました。以来、各設置校が3年、4年といった短期目標に対する振り返りを行いながら、法人本部と密に連携して、2021年の100周年に向かって歩んでいます。
 とりわけ、これからの取り組みは重要です。2018年、2019年は日本の教育が大きく変わった時期だったと、後々顧みられるであろう転機になり得るからです。2020年度からは新学習指導要領が実施されます。昨年には文部科学省が、「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)」を取りまとめ、公表しました。両者にはつながりがあり、2040年という時期を一つのターゲットにして、「予測不能」と記されるその時代に活躍できる人材を育てることがコンセプトになっています。そのような状況のなかで、私はスポーツをしている学生がこれからますます社会から求められる人材となるのではないかと思います。スポーツはどの競技においても、選手はコートやピッチに送り出され、常に自分で状況を判断して主体的に行動することが要求されます。これは予測不能な時代に求められる資質になるはずです。本学園は、大学院、体育大学、高校アスリートコースを設置する学校法人として、学園創立100周年に改めて建学の精神に立ち返りながら、その価値を発信する機会にしたいと考えています。

小規模大学ならではのきめ細やかな教育を展開
 最後に、大阪体育大学の教育上の特色についてですが、まずは施設面の充実があります。コンパクトなキャンパスに、さまざまな施設が集約されていて、教室、更衣室、シャワー室、グラウンドへの一連の移動が極めてスムーズに行える学生の動線を最優先に考えた配置になっています。次に、本学は学部の収容定員が2500名という小規模大学ですが、それが学生への支援には強みになっています。教職支援、学習支援は非常にきめ細やかに行われており、キャリア支援センターでは1年生から4年生まで毎年一人ひとりと面談を実施し、職員が学生全員の就職希望や就職活動の状況を把握します。その結果、昨今比率の高まっている一般企業への就職においても、他大学と同様の優良企業への就職を遂げています。
 創立者の一人、野田三郎先生には「教育は環境だ。環境を整備しなければ良い教育はできない」という強い信念があり、それが脈々と今も受け継がれています。本学は学生にとってより良い環境を提供し続け、これからも体育、スポーツを通して、社会に役立つ人材を送り続けていきます。



野田 賢治氏

【Profile】

野田 賢治(のだ・けんじ)氏

1978(昭和53)年 学校法人浪商学園に奉職。1986(昭和61)年に常務理事、2003(平成15)年より現職。
大阪私学経営者協議会会長・顧問、大阪私立中学校高等学校連合会会長・顧問などを歴任。
2012(平成24)年4月より文部科学省大学設置・学校法人審議会 学校法人分科会特別委員を務め、
2014(平成26)年4月より委員に就任。

【大阪体育大学の情報(スタディサプリ進路)】

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