教えて!「高校教育さらなる改革へ?」

 政府の教育再生実行会議が17日、①技術の進展に応じた教育の革新 ②新時代に対応した高等学校改革――に関する第11次提言をまとめました。既に諮問が行われている中央教育審議会で、その具体化が議論されることになります。とりわけ②では、生徒の7割が在籍する普通科について、国が「類型の枠組み」を示すことが提言されています。高校教育には、さらなる改革が求められるのでしょうか。

教えて!「高校教育さらなる改革へ?」

 「大学入試改革をしようとしている最中にもかかわらず、足元の高校普通科教育が揺らごうとしている。しっかりとした見通しを持って、振り回されないようにしていくことが必要だ」――。15日に仙台市内で行われた東北大学の「高等教育フォーラム」で、高校教員からこんな指摘がありました。

 もっとも、これは14日の自民党「教育再生実行本部」の第12次提言を受けた発言でした。「高めのボール」を投げるのが「本部」の役割だと政権交代時、与党関係者は解説していました。今回も、「本部」提言では「新たな枠組みを創設する」としてサイエンス・テクノロジー科やグローバル科、探求科、地域科などの具体的な「改正イメージ」を例示したのに対して、肝心の「会議」提言では、国に対して▽普通科の各学校が教育理念に基づき選択可能な学習の方向性に基づいた枠組みを示す▽類型の選択状況や実施状況等の把握に努める――とするにとどめており、必ずしも類型化やコース分けを強制するニュアンスではないようです。

 普通科改革の必要性に関しても、「本部」提言の方が「我が国の高等学校制度は、『昭和の学校』から脱却し切れていない状況にあり…今こそ、『令和』に相応しい高等学校へ生まれ変わることが必要」「普通科は、多くが偏差値で輪切りされ、全員に大学入試等に困らない指導をしようとするあまり、生徒の能力や個性に十分に対応できておらず…偏差値や大学入試の呪縛から解放することが必要」などと強い口調で改革を迫っているのに対して、「会議」提案は「一斉的・画一的な学びは生徒の学習意欲にも悪影響を及ぼす」と指摘するなど、やはりトーンが若干違っています。

 あくまで「会議」の大方針を受けて具体化を検討する中教審は今後、どのような方向性で審議していくのでしょうか。8日の初等中等教育分科会では、新たに「新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会」と、その下に「高校改革ワーキンググループ」を設置することが決まりました。高校教育にも詳しい専門家が集められるであろう諸会合では、地に足の着いた議論が求められます。

 ところで高校教育の在り方に関しては、24日に関西学院大学西宮上ケ原キャンパスで行われた全国大学入学者選抜研究連絡協議会(入研協、大学入試センター主催)の大会で、示唆的な全体会がありました。テーマは「高等学校における学びの現在(いま)と未来(これから)」。パネリストのうち『月刊高校教育』に総合学習や探究活動に関する連載も持っている廣瀬志保・山梨県立吉田高校教頭は、本誌『キャリアガイダンス』をはじめ教育情報誌などで最近、新学習指導要領の新科目名に多く用いられている「探究」についての特集が増えているなどの変化に注目。新しい「総合的な探究の時間」を教科学習と関連付けて探究の質を高めるよう訴えました。もう一人の柴浩司・大阪府教育庁教育振興室副理事は、府立高校の「トップテン」が率先して全教科で探究的学習を推進してきたことを報告しながら「(高校での)『学びの転換』は確実に進んでいる。知識・技能に裏打ちされた思考力・判断力・表現力や主体性等を評価していただきたい」と大学側に要望しました。

 実は既に、ボールは高校側から投げられているのだとも言えるでしょう。それをどう受け止めるかも、中教審の課題ではないでしょうか。


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【profile】
渡辺敦司(わたなべ・あつし)●1964年北海道生まれ。1990年横浜国立大学教育学部教育学科卒業。同年日本教育新聞社入社、編集局記者として文部省、進路指導・高校教育改革など担当。98年よりフリーの教育ジャーナリスト。教育専門誌を中心に、教育行政から実践まで幅広く取材・執筆。
教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説 http://ejwatanabe.cocolog-nifty.com/blog/