愛知医療学院短期大学 学長 石川 清氏

行政や赤十字との連携の下
高度な災害医療のスキルを身につけた
リハビリのプロを育てていきます


37年の歴史と伝統を持ち1,700名以上のリハビリのプロを社会に輩出
 本学は、建学の精神である「知恵と慈しみの心をもって障がいを有する人々の心身を広く支えることができる医療人を育成すること」を使命として、1982年、中部地方の私学では初のリハビリ専門学校として創立されました。以来、一貫してリハビリに特化した教育機関として発展し、2008年、短期大学へ改組しました。近年、ハード面では、リハビリクリニック、ラーニングコモンズ、学生プラザなど施設・設備の充実を図ってきました。ソフト面では、GPA制度・ルーブリック評価法導入による教育の質的向上、入学前教育・初年次教育の充実、学習アドバイザー制強化による学生支援の充実などを行ってきました。この間、就職率は毎年100%を達成し、37年間の歴史の中で1,700名以上のリハビリのプロを社会に輩出してきました。本学の大きな特色は、少人数体制の下、すべての教職員が学生一人ひとりの個性をしっかりと見定めて、卒業後のフォローも含めた非常に密度の濃い指導を実施していることです。

注目が集まる災害時のリハビリの役割
 東日本大震災や熊本地震などの大規模災害の被災地では、避難所生活が長引くことによる「災害関連死」が大きな問題となりました。そして、その被災者の健康を守るためにリハビリのプロが果たす役割の大きさに注目が集まっています。一方、清須市は東海豪雨で甚大な被害を受け、今後も水害が危惧される地域です。また、南海トラフ地震発生に際しては液状化現象が危惧されている地域であり、清須市は災害対策を最重点項目の一つとして掲げています。本学は清須市にある唯一の医療系大学であることから、大規模災害時には災害医療に関して、本学の担うべき役割は大きく、地域からも大きな期待が寄せられています。これらの点を踏まえて、本学は災害医療救護を重要な柱の1つと位置づけ、特色のある大学を目指しています。災害医療救護活動ができる人材育成のため、災害医療を使命としている日赤との連携を密にして、日赤が実施する災害訓練等に参加することによって、学生及び教職員が災害医療救護活動のノウハウを修得しています。また、定期的に実施している清須市の総合防災訓練には全学を挙げて取り組むことにより、日頃から行政と顔の見える密接な関係を築き、学生及び教職員の災害に対する意識を高めています。大規模災害時の災害救護にかかわることは、医療人として大きなやりがいであり、本学の学生には是非そのスキルを身につけ、社会貢献できる人材に育ってほしいと願っています。

三位一体となって地域のお年寄りを元気にする
 本学は長年にわたって、官学連携事業として高齢者を対象とした運動教室や高齢者に対する介護予防活動としての「清須市民げんき大学」、子育て支援事業など社会貢献的な事業に取り組んできました。これらの事業は本学の重要な柱の一つであり、これをさらに発展させるべく3年先の創立40周年(2022年)に向け新たなビジョンに取り組んでいます。従来から併設しているクリニックに加え、来年4月、こども園を併設します。短大、クリニック、こども園の3つの組織が、三位一体となって、地域や行政と強固に連携し、地域にしっかりと根差した特色のある短大を目指しています。お年寄り、学生、こどもの3世代が、お互いを思いやり、助け合いながら、日々日常の生活の中で交流する世界を創りたいと思っています。地域のお年寄りは学生、こどもとの交流を通してやりがいや生きがいを見出し、学生はお年寄りからこどもまでの幅広いライフステージの人たちとの関わりによって心身を広く支えることができる人材に育つことができます。本学は「三位一体となって地域のお年寄りを元気にする」というビジョンを掲げ、この地域になくてはならない存在になるばかりでなく、この地域のモデルケースとなることを目指しています。

全学的なコーチング導入で主体性のある学生を育成
 前述した創立40周年(2022年)に向けた新たなビジョンを達成するために、本年度より3年計画で全学的なコーチングを導入しました。いまコーチングは「個人が学ぶスキル」から「組織改革の手段」へとその活用の場が広がっています。組織改革を行うための手段として全学的にコーチングを導入するのは全国でも珍しく、その成果を期待しています。教職員がコーチングスキルを身につけることにより、コーチングが短大の風土となり、教職員や学生がリーダーシップを発揮し、良好なコミュニケーションが得られます。さらに、学生教育の面で、教職員が学生に対してコーチングスキルを活用することで、現在の学生に最も欠けているとされる「主体的に物事を考え行動する資質」を養い、主体性のある学生を育成することができます。

「健康経営」の考え方を取り入れ、「健康」に関して意識の高い学生を育成
 近年、国が積極的に推進している『健康経営』の取り組みが注目され、一般企業を中心に『健康経営』に力を入れている企業が増えています。『健康経営』とは「企業が職員の健康に配慮することによって、経営面で大きな成果が期待できる」との基盤に立ち、健康管理を経営的視点から捉えることです。健康とは単に病気でないと言うことではなく、心身共に健康で生き生きとして働ける状態です。本学は健康に深く関わる業界であることから、「教職員・学生の健康」を重点項目と位置づけ、一人ひとりが自らの健康増進を意識し、心身ともに健康で生き生きと働くことができるよう積極的な健康づくりを行います。具体的には、健康経営宣言の公表、教職員・学生の健康管理を行うための健診データを一元管理するシステムの導入、さらには、規則正しい生活習慣(食習慣、運動習慣)の啓蒙、禁煙教育・敷地内禁煙の徹底等の禁煙対策にも取り組んでいます。本学は「健康経営」の考え方を取り入れ、「健康」に関して意識の高い学生を育成し、予防医学の領域においても活躍できる人材を社会に送り出したいと思います。

四年制大学への移行を視野に入れ、盤石の体制で短大を運営
 以上述べた通り、本学の歴史と伝統を守りつつ、創立40周年に向け新たなビジョンを達成するために様々な取り組みを行っています。従来、本学が短大であることの利点として、3年間で卒業でき国家試験の受験資格を得られるという強みがありました。しかしながら、近年、理学療法士も作業療法士も社会的なニーズが高まるにつれて質の向上が急務となり、厚生労働省も「高度化する医療に対応できる人材の育成」を求めています。そして、5年先をめどに養成課程のカリキュラム数の増加が計画されています。3年間でこのカリキュラムをこなすのはかなり厳しいことが懸念され、今後は四年制大学への移行を視野に入れ、盤石の体制で短大運営を行っていきます。具体的には、3年先の創立40周年を迎えた時点で4年制大学移行の可否を決断することとし、その時までに4年制大学への移行に必要となる条件を確実にクリアすべく盤石の体制作りを進めて行きたいと思っています。



石川 清氏

【Profile】

石川 清(いしかわ・きよし)氏

医学博士、1947年名古屋市出身、1970年名古屋大学工学部航空学科卒業、1977年名古屋大学医学部卒業、1978年名古屋市立大学病院麻酔科助手、1986年カナダのトロント大学留学、1989年名古屋市立大学病院集中治療部助教授、1994年名古屋第二赤十字病院麻酔科・集中治療部長、2001年同副院長・救命救急センター長、2007年同院長、2018年愛知医療学院短期大学教授、2019年同学長、専門領域は麻酔、集中治療、救急医療、災害医療、国際救援。

【愛知医療学院短期大学の情報(スタディサプリ進路)】

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