川村学園女子大学 学長 熊谷園子氏

移り変わる時代に、
女子大学にしかできない教育を。


学園創立者・川村文子が目指した女子教育
 川村学園女子大学は創立32年目を迎えましたが、本大学の基礎となる川村学園の発足は、大正13年(1924年)。以来、95年にわたり、女子教育に専念してきました。学園創立者の川村文子が女子教育に携わる直接のきっかけは、大正12年(1923年)に起きた関東大震災でした。機能不全に陥り、混乱を来した東京と日本を再生するには、女性の働きが大切だと確信し、川村文子は、翌年には東京・目白に川村女子学院を創設しました。
 「感謝の心」を基盤とした「自覚ある女性」の育成と「社会への奉仕」を建学の精神とし、川村学園女子大学もこの理念を受け継いで、社会において真に必要とされる女子の人材育成を目指しています。
 本学には、今もなお歌い継がれる「感謝の歌」があります。「かしこしや この世守りて とこしへに みいつも愛も かぎりあらじな」。川村文子が鬼子母神の方角から昇る朝日に圧倒され感動をうたったもので、大自然のもつ再生の力を目のあたりにし、この太陽とともに自分たちも昇っていくのだという思いが込められた、本学園に関係する人々にとっては忘れ得ぬ歌です。学園の諸行事をはじめ、日々の朝礼等において歌われ、卒業生が集まると必ずこの歌が歌われます。学園にとっても重大な意義をもつ歌です。

建学の精神は「感謝の心」「自覚ある女性」「社会への奉仕」
 建学の精神に則り、本学では、感謝の心を基盤とした女子一貫教育の完成を目指し、時代に即応する人材の育成を理想とし、日々の教育活動を行っています。
 川村学園に大学が開設されたのは、昭和63年(1988年)です。開設当初は文学部だけでしたが、現在では、千葉県我孫子市と東京都豊島区にキャンパスをもち、文学部・教育学部・生活創造学部の3学部8学科を設置する女子文科系総合大学として発展を遂げています。
 文学部には国際英語学科・史学科・心理学科・日本文化学科を、教育学部には幼児教育学科・児童教育学科を、生活創造学部には生活文化学科・観光文化学科を設置しています。学生の興味関心に対応し、多様な科目を修得しやすくするため、我孫子キャンパスでは5つ、目白キャンパスでは3つの「副専攻」を設けています。また、他学部他学科の専門科目も履修できる「クロスオーバー学習」制度も設けています。そうすることで例えば幼児教育学科の学生が、心理学科の専門科目である発達心理学や児童心理学の授業が履修できるようになりました。

新しい時代の家庭科教育を
 さらに本学では、幅広い教養の獲得を目的に、共通教育科目を豊富に設けています。大学生の基礎となる一般教養科目を選択必修にしていますが、そこに、新しい領域のユニークな科目を数多く揃えています。
 例えば、「宇宙から見た地球論」「ワーク・ライフ論」「ジェンダー研究入門」「生命倫理と現代社会」などがあります。新しい情報を授業に取り入れるため、外部の方が講師を務める授業もあります。「女性学」では、「恋人間の暴力」など学生に必要なテーマを取りあげる講義もあります。女性だから考えてほしいという科目が多くあり、女性であることに自信をもってほしいと考えています。
 またこうしたバラエティに富んだ講義は、学生一人ひとりの興味に応じた知識の深化を期待できるだけでなく、分野横断的な資格取得を可能にしています。生活文化学科では、これまでの栄養士、栄養教諭に加え、新たに中学および高校の「家庭科」教育職員免許状が取得できるようになりました。
 ここで本学の「家庭科」について少し説明したいと思います。本学の生活文化学科で学ぶ「家庭科」は、家政学ではなく社会学のなかの家庭科という観点から科目群を構成しています。生活文化学科では、社会学的見地から生活の質を向上することを考究してきました。この点を「家庭科」教育に生かそうと考えています。例えば「家庭ゴミの分別」は、大きく環境問題から捉える必要があります。被服を学ぶ際にも、社会生活の視点つまりリメイクといった環境の視点や「介護しやすいパジャマ」のようにユニバーサルデザインといった社会生活の視点が必須となります。学科の必修科目には「女性と現代社会」「社会生活入門」などを用意し、家庭は社会生活の一部という視点を大切にしています。

学生一人ひとりを伸ばす確かな「ささえるちから」
 また初年次教育にも力を注いでいます。入学後すぐ、ガイダンス期間中に新入学生全員を対象に国語・数学・英語の共通試験を行い、追加指導が必要な学生に対しては、リメディアル教育を実施しています。この授業は、成績上位の学生からも参加希望があるほどの人気講座です。
 その他、学生サポートという点については、我孫子キャンパスに、学生研究室を設置し、教務補助という職員が学生の学習面での相談に応じています。科目履修の方法やレポートの書き方、学生生活における悩みなど、広く学生相談に応じています。特徴的なのは、こうした教務補助職員全員が、本学の卒業生だということです。だからこそ、学生に寄り添った細やかなサポートが可能になるのです。一方、目白キャンパスでは、教員や職員が学習相談に応じています。このように本学では、普段の授業に加え、学生が充実したキャンパスライフが送れるように、仕組みづくりにも力を注いでいます。授業と学生生活のサポートが学生たちに粘り強く挑戦する、という自分を「ささえる力」を育んでいると考えています。
 また、両キャンパスに、生活全般の悩みを受け付ける学生相談室があります。我孫子キャンパスでは臨床心理士が常勤し、目白キャンパスでは定期的に臨床心理士が対応時間を設け、学生サポートをしています。
 さらに本学では、求め続けられる女子大学であるために、卒業生の追跡調査を行っています。これまでも同窓会組織の充実をはかり、特に教職に就いた卒業生の情報交換を目的としたGオフィスを開催してきました。それに加えて、卒業から5年が経ったOGの方々にご協力を頂き、本学で学んだことの優位性やまた不足部分についてアンケートを通して意見収集を行っています。そうして得た結果を基に、現役学生や未来の学生の教育に役立てています。現状に満足するのではなく、変わり続ける大学として今後も努力に努めてまいります。



熊谷園子氏

【Profile】

熊谷園子(くまがい・そのこ)氏

東京都生まれ。青山学院大学大学院文学研究科修了(文学修士)。1988年4月川村学園女子大学文学部講師就任。Oxford University College客員研究員、川村学園女子大学図書館長、文学部長、副学長を経て2014年4月より現職。

【川村学園女子大学の情報(スタディサプリ進路)】

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