和洋女子大学 学長 岸田宏司氏

内なる国際化と多様性重視の教育で、
グローバル対応力の高い学生を育てます


大切なことは女性の「自立」と「自律」
 1897(明治30)年、東京の麹町区飯田町(現在の千代田区富士見)に設立した裁縫の各種学校「和洋裁縫女学院」が和洋の歴史のはじまりです。本学の創設者である堀越千代は、「日本が列強諸外国に劣らない国となるには、未来を担うこどもの教育が肝要であり、延いては、最初にこどもの教育をする女性の教育が日本の近代化に不可欠であると判断し、女学校の立ち上げを決意した」と書いています(「論説講話」より引用)。就学前の子どもの教育を担う女性の教育が、日本の近代化の原動力になると考えたのです。
 近代化に向けて邁進していた当時の日本では、女性の教育や役割を重視する新しい考え方が芽生えていました。この発想は、現在、SDGsの目標5「ジェンダー平等を実現しよう」と根を一にするものです。本学の出発点には、多様性を認め、人を排除しない姿勢があり、現代の「ダイバーシティ」や「インクルーシブ」につながるものです。
 時代の流れのなかで、女性の「自立」と「自律」をテーマに、本学ではキャリア教育にも力を入れています。キャリア教育といっても、資格取得や就職に特化した内容ではありません。自らの一生をどのように生きていくか、学生自身がデザインできるようになる教育を目的にしています。
 2019年になってもなお、社会に出ると女性がリーダーになるチャンスは少なく、あらゆる分野でサポートに回ることが多くなります。しかし、自分自身がリーダーになる姿も描いてほしいのです。ワークライフバランスという言葉がありますが、私は、ワークとライフは並列で考えるものではなく、人生の基盤はライフにあると教えています。仕事は、ライフのなかの選択肢の一つ。豊かな生活を考えるためのキャリア教育を目指しています。そうした考えに基づき、和洋のキャリアプログラムは、いわゆる面接練習やマナーを身に付けることに留まらず、ライフイベントが多様な女性のライフコース設計を念頭に指導を行っています。

「女性の多様な生き方にこたえられる教育システム」を提供
 学校法人 和洋学園は2022年に創立125周年を迎えます。125年の間に社会は大きく変わり、女子教育のありようも大きく変化しました。本学は、自分の人生を自分らしく生きていくための、「女性の多様な生き方にこたえられる教育システム」を提供する大学であり続けたいと考えています。そのため、時々で大小の改革を重ねてきました。
 近年では、2008年度に教育組織と研究組織を分ける大きな教育組織改編を行いました。さらに学びの領域を広げるために「学部・学科」から「学群・学類」制度を導入しました。
 また、2015年に開設した本学独自の「ラーニングステーション(全学教育センター)」では、学生の人生を豊かにする教養教育の強化を行っています。例えば誰もが気軽に参加できる「わよらカフェ(和洋ラーニングカフェ)」では、お茶を飲みながら教員と話せます。例えば、世の中で起こっていることや、授業では話しきれない話などが聞けます。また、授業でわからなかったことを聞くこともできます。
 さらに2018年には看護学部看護学科を設置。2020年には、現在の人文学部国際学科を国際学部(英語コミュニケーション学科/国際学科)とし、4学部9学科体制となる予定です。

2020年、新たに国際学部を設置予定 
 グローバル化が進む現代において、多様な文化を理解する力・多様な価値観を受け入れる力が必要不可欠になっています。国際学部では、こうした環境の変化に対応し、バックグラウンドが異なるさまざまな人々と協働して、成果を生み出せる「インクルーシブリーダー」の育成を目指しています。そのためには、まずは自分自身のなかにある異文化への壁を取り去ることが必要だと考えています。それを「内なる国際化」と名付け、その教育に力を注いでいきたいと考えています。それは、女性の役割を重視し、多様な人を理解し、新しい社会を作り上げるという本学の創立の理念を体現することでもあります。
 国際学部では、これらの力を育むために国際社会学、国際経済学、国際観光学など、グローバルな視野で社会科学をとらえる科目が設置されています。またコミュニケーションの力を育む科目も充実しています。語学の修得に留まらず、文化を学び、異文化の背景を理解した深いコミュニケーションができるようになることを目指しています。
 これらを実現するための柱になるのがPBL(Project-Based Learning)です。例えば、国際空港で利便性を高めるための施策を、学生が考えて企業に提案するプロジェクトがあります。最初からうまくできるわけではありません。試行錯誤をくりかえし、一つの結論に到達することを目指します。こうしてアイデアを煮詰めることで、学生は広い視野と実行力を身に付けます。PBL終了後は、ゼミに分かれて学びを進めます。卒業論文はゼミで学んだものとは別のテーマを選ぶことも可能です。自身の興味を大切にした学びが、和洋女子大学の特徴の一つです。
 国際学部には、英語コミュニケーション学科(定員60)と国際学科(定員60)の設置を予定していますが、両学科とも社会の動きをとらえながらインクルーシブリーダーを目指すことは変わりません。より語学の専門性が求められる場での活躍を目指す方は、英語コミュニケーション学科、国内外問わず幅広く国際社会で活躍したいと考える方は国際学科を選択してもらえれば、と考えています。

幅広い視野をもち主体的に学ぶ学生を育てる
 本学で学ぶ場合、学生が主体的に学ぶ姿勢が問われます。受け身ではなにも学べません。高校生のうちから、小さな疑問を大切にしてください。そして、「どうしてだろう」と思ったことは、ぜひ、調べてみてください。身近な一つの疑問から、社会の大きな仕組みが見えることもあります。小さな疑問を大切に。身近なことにアンテナを張り、俯瞰して社会を見る目をもつ女性に、ぜひ入学していただきたいと思います。
 本学では、現在、高大連携の強化を推進しています。大学での学びについて疑問があれば、高校の先生方、または生徒自ら、どんなことでも聞きに来てください。本学を志望する生徒には、高校時代に力を入れておくべき学習や活動について、アドバイスができます。
 今年実施した高大連携プロジェクトでは、家政分野に興味をもつ高校生に来てもらい、高校での学びは大学でどのように発展していくかを伝えました。例えば、「おいしいポテトサラダのマッシュの仕方」を、レシピではなく、科学的な見地からおいしく作る方法を実習しました。生活科学、家庭経済といった家政学とのつながりを生徒さんが肌で感じることを目指しています。
 新テストについても高大連携の場でディスカッションし、高校と大学の双方が学生の学力を保障しながら、よりよい学びの環境をつくっていきたいと考えています。ぜひ一度、和洋女子大学に足をお運びください。




岸田宏司氏

【Profile】

岸田宏司(きしだ・こうじ)氏

関西大学大学院社会学研究科博士課程前期課程修了、専門「老年学」。市川市社会福祉審議会会長。市川市社会福祉審議会障害者専門部会長。(株)ニッセイ基礎研究所上席主任研究員を経て、和洋女子大学家政学部教授、2012 年4月より和洋女子大学学長就任。

【和洋女子大学の情報(スタディサプリ進路)】

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