広島文化学園大学・短期大学 学長 田中宏二氏

対人援助を主とする専門職業人を育成
教育・研究を通して、地域社会に貢献


ヒューマンサービスのプロフェッショナルを養成する学び舎
 広島文化学園大学は4学部6学科、3研究科(博士前期・後期課程)3専攻、短期大学3学科を擁し、4つのキャンパスを学びのフィールドとして、地域に根差した教育・研究活動に取り組んでいます。建学の精神「究理実践」とは、理論の追究と実践とを一つに結びつけることを目指した、教育と研究、そして人材育成を行うという本学の使命であり、同時に、理論と実践の反復で検証と学修を深めるという“学び続ける者”としてのあるべき姿を表しています。
 1964年に、学園発祥の地である広島市・長束において広島文化女子短期大学(現:広島文化学園短期大学)が、続いて1995年、呉市・郷原に公私協力方式で呉大学(現:広島文化学園大学)を開学。その後、地域社会の要請により呉市・阿賀、安芸郡・坂町にそれぞれキャンパスを設置するに至りました。2018年4月には「健康」をテーマに、スポーツと福祉を融合した人間健康学部を設置。年齢や体力の高低、障害の有無を問わず、誰もが楽しめるスポーツ「アダプテッド・スポーツ」の理論と実践を学問の軸として、中学校・高等学校の保健体育教員をはじめ、スポーツ施設のインストラクターや福祉施設の健康運動指導員等を目指せることが特徴的な、大変ユニークな学部です。これに加えて、社会福祉士や精神保健福祉士といった国家資格の受験資格も取得可能で、志向に応じて人々の健康や福祉に対して多角的にアプローチできる人材を目指すことができるのです。
 既存の学部においても、幼稚園教諭や保育士、小学校教諭をはじめ、看護師、保健師、養護教諭、音楽療法士といった「ヒューマンサービスのプロフェッショナル」となる人材の育成を特色としています。

「夢カルテ」による学生一人ひとりの夢や希望の実現
 学生の主体的な学びを推進し、夢を実現に導くための取り組みの一つが「夢カルテ」です。入学時に将来の夢や目標、キャリア像を掲げ、目指すゴールへ向けて日々の学修や課外活動の記録を蓄積。自己点検と評価を行うとともに、定期的にチューターによるアドバイスを受けることで、段階的に成長できるシステムとなっています。
 この「夢カルテ」をさらに拡大し、4年間の成長の証として、学生の自信につなげることができるシステムへのブラッシュアップを計画しています。現在、キャリア支援企業のプログラムを試験的に導入し、学修成果および社会人基礎力といった成長の可視化に取り組んでいます。GPA(成績評価値)をはじめ各種スキルの向上を図り、学修が将来の目標とどのように結びつくか、また適切な授業科目の学修が進んでいるか、加えて、部活動やアルバイト、インターンシップ、ボランティアといった課外活動を包括した広い意味での履修記録、謂わば「学修成果証明書」を作ろうとしています。この学修成果証明書から自身の大学生活を振り返り、就職活動に臨んで“私はこういう人間です”と、自信をもって社会へ羽ばたいてほしいと考えています。

文部科学省「私立大学研究ブランディング事業」における取組
 本学は、「対人援助」を理論的な基盤として、すべての学部に対応した博士課程を備えています。この土壌を活かし、4つのキャンパスの所在地である長束(広島市)、郷原・阿賀(ともに呉市)、坂(安芸郡坂町)、それぞれの地域課題に根差した研究活動を行い、その成果を還元したいという想いがありました。一例として、長束キャンパスのある広島市安佐南区は子育て世代が多く居住しています。そのため、子育てや発達障害に関するニーズが高いと考えられます。呉市やその至近にある坂町においては、高齢化率が高く、高齢者の健康維持や認知症の進行防止・予防教育といった高齢者福祉に対する課題があります。これらの課題と各キャンパスにある学部の学びを融合した研究活動の場が、各地域に設置した「来(き)んさいカフェ」です。
 「来んさいカフェ」では、地域の人々の集いの場として対人援助プログラムを実施しています。同時に「子ども・子育て教育福祉」「スポーツ・健康福祉」「看護・医療福祉」の3つの研究部門から、持続可能な地域支援サポーター養成プログラムの開発・検証を行います。
各地の「来んさいカフェ」には、以下の特色があります。

【広島】子ども・子育て教育福祉研究部門
自閉症スペクトラム障害や、発達障害のある子どもと保護者の支援活動を行う「発達障害支援事業」をはじめ、就園前の子どもをもつ保護者を対象とした「ぶんぶん親子教室」、五感に訴えかける光や音を用いて心身のリラックスを図る「スヌーズレン」、「音楽療法」などを実施。

【坂・郷原】スポーツ・健康福祉研究部門
誰でも気軽に楽しめるアダプテッド・スポーツを行い、心身の健康を図る「スポーツ教室」や、身体的・知的な重度の障害児を対象としたアダプテッド・スポーツの支援プログラム「HBG重度・重複障害児スポレク活動教室 はなまるキッズ」。そして、高齢者の健康増進に関する公開講座を開催し、健康寿命の延伸を目指す「高齢者の活力増加支援」などを実施。

【呉】看護・医療福祉研究部門
地域の人々の健康増進や疾病・介護予防と健康寿命の延伸支援を行う「高齢者カフェ」をはじめ、高齢者の認知症予防と認知症者の支援を行う「認知症カフェ あがりんさい」を運営。

 これらの活動にはスタッフとして学生も参加します。自身が取り組む専門分野の学びを実践するとともに、地域の人々との関わりを通して人間的にも大きく成長することを期待しています。

変化し続ける社会を生き抜くための“夢”を、全学を挙げて応援
 AI(人工知能)の台頭により、仕事の形が大きく変わると言われています。しかし私は、対人的なコミュニケーションを中心とした“人間だからこそ行える”ヒューマンサービスは、変化し続ける時代を生き抜いていくことができる領域であると考えます。
 本学には毎年、多様な学生が入学してきます。中には、学修の躓きから自信を失いかけている学生もいるでしょう。しかし、人が好きで“人と関わる仕事に就きたい”と考える人には、ぜひ本学の門を叩いてほしい。学生たちが挫折感を振り払い、自信をもって社会に羽ばたける人物へと育てることは、私たちの使命です。どこで才能が花開くかは誰にもわかりません。そこにこそ、教育の面白さとやりがいがあるのです。



田中宏二氏

【Profile】

田中 宏二(たなか・こうじ)氏

広島市出身。広島大学大学院教育学研究科実験心理学専攻修士課程修了。広島工業大学(講師)、大分医科大学(現:大分大学医学部、助教授)にて教鞭を執る。
1985年よりメリーランド大学(アメリカ)にて客員研究員を務めたのち、1991年、岡山大学教育学部に教授として就任。2005年より同大学副学長・理事、エグゼクティブアドバイザーを歴任した。2012年より2015年まで日本健康心理学会理事長。
2016年より現職。健康心理学、教育社会心理学を専門とし、「健康と人間関係(ソーシャルサポート)の機序」「いじめ・がん患者・高齢者へのサポート介入」「教師ストレス」などを主題とした研究実績がある。その他の活動として、JAXA宇宙飛行士選抜評価委員(心理適性部門)も務めた。文学博士。

【広島文化学園大学の情報(スタディサプリ進路)】

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