昭和大学 学長 久光 正 氏
4学部6学科をもつ医療系総合大学の
強みを生かした「チーム医療」教育
独自の「チーム医療」教育を徹底。1年次の全寮制がベースを養う
医療の現場では、医師や看護師、薬剤師など多様な職種がチームを組んで患者さんの治療やケアに当たる「チーム医療」の重要性がますます高まっています。このような状況に高い評価を受けているのが、本学が教育の柱に据える独自のチーム医療プログラムです。医・歯・薬・保健医療の4 学部6 学科をもつ医系総合大学として、全学部の学生が連携して学べる環境が大きな強みとなっています。プログラムは1年次より「PBLチュートリアル」として展開し、臨床場面を想定した課題に対して患者さんを中心とした情報をチームで共有しながら議論を重ね、解決を探ります。学部混合チームで学ぶスタイルは6年間、ないし4年間のなかで可能な限り続き、年次を重ねるごとに専門性も磨かれていきます。
そして、こうした学生同士の連携のベースとなるのが1年次の全寮制です。本学ではこれを初年次教育の一環と位置付けており、英米の名門大学の寮を参考にして始まって既に半世紀の歴史があります。すべての学生が富士吉田キャンパス(山梨県)の学生寮で1年間、4学部の学生をシャッフルした4人部屋で共同生活を送ります。物事が円満に進むときもあれば、波風が立つときもあるでしょう。しかしこれらを自分たちで乗り越える経験を通じて自らの意思を的確に仲間に伝え、仲間と意見を交わす力がおのずと養われていきます。まさに1年間の全寮制教育はチーム医療に不可欠なコミュニケーションスキルのトレーニングであり、それが卒業後の現場で生きてくるのです。
生涯「至誠一貫」の精神の下、国内外で活躍する医療人へ
本学での学びを通じて培われた「チーム医療」へ適応力は、国内の医療現場ではもちろん、さらには国際医療協力というグローバルなフィールドでも存分に発揮されています。口唇口蓋裂治療のパイオニアとしても知られる本学は、2011年よりアフリカ・マダガスカルへ医療チームを毎年派遣しています。現役の医師や看護師らを中心に構成される派遣メンバーには4学部の学生も加わり、高度な医療設備が乏しく近代医療とはかけ離れた厳しい状況下で、チーム医療の一員として自分が果たすべき役割を深く考察する貴重な機会となっています。
2018年に創立90周年を迎えた本学は開学以来、まごころを込めて患者さんに尽くす「至誠一貫」の精神を掲げてきました。医療の在り方そのものも大きく変わろうとするなか、医療現場に携わる者自身も10年、20年と高いモチベーションをもって常にステップアップしていかなければ、もはや追いつけない時代を迎えています。だからこそ今後も本学の「至誠一貫」の姿勢は変わることなく、現場に立ったときに患者さんのために最善を尽くすという原点を一生涯もち続けることのできる医療人を、育てていきたいと考えています。
【Profile】
久光 正(ひさみつ・ただし)氏
1981年、昭和大学大学院医学研究科博士課程修了。
1992年より同学医学部教授。
副学長を経て2019年7月より現職。