学校法人東京音楽大学 鈴木勝利 理事長

音楽文化の地平を拓く。
音楽大学の枠にとどまらない教育を


新しい音楽文化の創造を目指す
 東京音楽大学は、1907 年に設立された東洋音楽学校を前身とする、我が国で最も古い歴史をもつ私立音楽大学です。建学の精神である「アカデミズムと実学の両立」・「音楽による社会貢献」・「国際性」は、現在においても色あせることのない理念として、脈々と受け継がれています。
 本学では、この建学の精神を実践しながら日本の音楽文化を支える優れた人材を育成してきました。毎年、多数の卒業生や学生が、国内外の著名なコンクールやオーディションなどに入賞しています。また、音楽界、教育界、音楽産業分野にとどまらず、マスコミや一般企業にも優れた人材を送り出しています。
 近年、知識基盤社会、高度情報化社会の到来に対応する能力として、新たな価値の創造や柔軟な思考力、実践力が重視されています。こうした社会においては、自ら課題設定ができ、解決策を模索し、実践することができる人材の育成が重要な課題となっています。本学では、教員と学生が協働して音楽と人、社会の関係性を探求することを通じ、社会基盤としての新たな音楽文化の創造を目指すことによって、学生個々がこれらの資質と優れた音楽観を身に付け、音楽関係分野をはじめ社会のあらゆる分野で活躍できる人材の輩出を目指しています。
 新たな時代と人々の営みに対応した本学の創造的な活動は、「ミュージック・リベラルアーツ専攻」や「吹奏楽アカデミー専攻」の設置、教養教育の充実強化などの教育研究活動の改革として具現化されています。

音楽の素養をもつ国際性豊かな教養人を育成
 本学では、2017 年 4 月に、音楽と教養を中核として、高い英語能力を身に付けている人材の育成を目的とした「ミュージック・リベラルアーツ専攻」を開設しました。グローバル化や多様化が急速に進む世界にあって、本専攻の卒業生が、音楽という世界共通の専門性に加えて高い教養と語学力を身に付け、幅広い分野において国際的に活躍することを期待しているところです。
 2019 年 4 月には、音楽に関する幅広い学びのニーズに応え、「吹奏楽アカデミー専攻」を新設しました。「吹奏楽アカデミー専攻」で育成するのは、吹奏楽の指導者です。卒業後は、主に中学・高校の教員として、または教員以外の吹奏楽指導者として社会に貢献していただきたいと考えています。
 2020 年 4 月には、音楽学部の音楽教育専攻を「音楽文化教育専攻」として改編充実します。さらに大学院音楽研究科では、音楽教育専攻を「音楽文化研究専攻」と改めるとともに、多様な世界の音楽文化を研究する「多文化音楽研究領域」を新設します。

都心にある2つのキャンパスで豊かな学びを実現
 本年 4 月に、中目黒エリアと代官山エリアの中間に、緑豊かで座席数 420 のホール、多数の練習室、レッスン室および最先端の録音設備を有するスタジオを備えた「中目黒・代官山キャンパス」を開校し、池袋キャンパスに加え都心に2つのキャンパスを設けました。
 池袋キャンパスは、800 席以上の大ホールをはじめ、中小ホールなどの充実した教育研究施設設備を有し、学部生、大学院生の教育研究の場として機能するとともに、付属民族音楽研究所などの研究活動が行われています。2020 年には、付属音楽高等学校が池袋キャンパスに移転し、付属幼稚園の園児から大学院生までが集う教育研究の場となる予定です。
 この短時間で移動可能な2つのキャンパスは、それぞれの立地と施設・設備等の特色を生かし、有機的な関係性を保ちながら新たな音楽文化の創造、発信を行っていきます。

学外との連携で、アカデミズムと実学を充実強化
 本学では、創立以来、音楽の教育研究を通して、世界に通用する国際性豊かな人材育成に力を尽くしてきました。その伝統を未来へとつなぎ、向上発展させていくため、ザルツブルク・モーツァルテウム大学、ショパン音楽大学、モスクワ音楽院をはじめ、海外の数多くの大学と連携し、交換留学・短期留学を積極的に展開しています。昨年は、イギリスのサセックス大学に初めて 2 名の正規留学生を送り出しました。
 国内では、2010 年から上智大学との単位互換プログラムを始めています。上智大学で提供される 500 を超える講座で取得した単位は、本学の単位となります。来年度には、聖心女子大学とも実施する予定です。
 また、地域社会等とも密接に連携した幅広い活動を行っています。自治体、音楽関係団体、音楽コミュニティと協力し、コンサート、公開講座、ワークショップ、音楽祭などを実施して、学生は社会との関わりを学び、大学は地域における文化の担い手として貢献しています。

一人ひとりの学生が望む将来のキャリア形成を後押しする
 「Society 5.0 に向けた人材育成〜社会が変わる、学びが変わる〜」(Society 5.0 に関わる文部科学大臣懇談会)にもありましたが、高度に情報化が進展した社会においては、人々が共感できる音楽や音楽を学ぶことの意義や必要性がますます高まってくるのではないかと考えています。
 音楽を志す先にあるのは、演奏家の道だけではありません。音楽関係の仕事に携わること、音楽で培った感性を活かしてさまざまな業界で活躍するなど、将来の選択肢は広がっています。音楽の学びを通して育まれる、豊かな感性、想像力、苦心してモノを創りあげる力、変化への対応力、忍耐力、集中力、これらは社会が求める重要な資質です。
 音楽の力を信じ、音楽の学修を通して自分の可能性を伸ばしたい、そんな高校生にはぜひ本学を目指していただきたいですね。



鈴木勝利氏

【Profile】

鈴木勝利(すずき・かつとし)氏

学校法人東京音楽大学理事長・公益財団法人労務管理教育センター理事・弁護士。明治大学法学部卒。関東弁護士会連合会元理事・学校法人明治大学元理事などを歴任。専門は学校法務・労務管理。著書・論文多数あり。

【東京音楽大学の情報(スタディサプリ進路)】

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