学校法人白梅学園 理事長 井原 徹氏
資格の白梅から、
資格とアカデミアの白梅へ
建学の精神は「ヒューマニズム」
白梅学園は1942年3月に設立された東京家庭学園が前身です。戦後、保育者養成に専門化され、女性の教養や、家庭における実際的技能を、科学性、社会性、芸術性を重視した理念や方法に基づき教育活動を展開してきました。
白梅学園短期大学(1957年)を基盤として、白梅学園大学(2005年)のスタート後は地域との連携を重視し、白梅子育て広場の取組などを通じて、「ヒューマニズム」を社会的・公益的にも発展させてきました。2022年には学園創立80周年を迎えます。
本学建学の理念は、人間を愛し、人間の価値を最高度に実現しようとする「ヒューマニズムの精神」にあります。すべての人に備わる個性や才能、優れたものを発見して伸ばすこと、すなわち「人間の尊厳」を教育指針として活動しています。公益的活動としては、学生が主体となって活動を展開する「白梅子育て広場」、東日本大震災支援活動、公開講座などの地域に開かれた取組も積極的に行っています。
目指せる13種類の資格・免許と高い公務員実就職率
本学では保育、教育、心理、福祉などの学びに関連したさまざまな免許・資格が取得できるよう、学科ごとにカリキュラムを整えています。目指せる資格・免許は、保育士資格、幼稚園教諭免許状(1種・2種)、小学校教諭1種免許状、特別支援学校教諭1種免許状、社会福祉士(国家試験受験資格)、介護福祉士(国家試験受験資格)、学芸員資格、社会福祉主事(任用資格)、児童指導員(任用資格)、公認心理師(学部学修部分の科目開設)、認定心理士、スクールソーシャルワーク教育課程修了証、世代間交流コーディネーターの13種類です。約9割の学生が2種類以上の資格を取得しており、多くの学生が在学中に「保育福祉」「教育心理」など、実社会で役立つ学びを複数組み合わせて修得しています。
本学では学生に資格の取得を勧めていますが、それは、社会のニーズに応えられる、高い専門性を備えた人材の育成を目的としているからです。
実際、資格を取得した卒業生の公立小学校教諭・公立特別支援学校教諭・教員の採用試験合格率は82.6%。公務員実就職率は31.3%で首都圏私立大学第2位の実績です。
学問研究の場としての白梅学園大学
本学で学ぶ「子ども学」は、子どもの研究を通じて人間そのものを見つめる学問です。専門知識、スキルに加え、子どもの背景にある文化や社会、人間の歴史や心理学まで総合的に学び、子どもを多角的に捉え支援できる力を養います。
大学子ども学部は、子ども学科、発達臨床学科、家族・地域支援学科の3学科があり、短期大学は保育科の1学科です。
大学では「教養教育課程」と「専門教育課程」の組み合わせで学びを進めていきます。「教養教育課程」は、「外国語」「体育」「情報」「ヒューマニズム科目」「教養基幹科目」「教養演習」で構成され、学びの基礎力を養うとともに、人文・社会・自然の諸科学分野を幅広く学びます。「専門教育課程」は3学科共通の「子ども学コア科目」と各学科の専門科目に分かれ、コア科目で学びの土台を固めたうえで、保育、教育、心理、福祉など各自の専門性を高めます。
短大では、2年間で保育者として必要な力を習得し、現代のニーズに合った保育・教育分野での実践力を高められるよう、「教養教育科目」と「専門教育科目」の二つの教育科目を設置しています。
少子高齢化の時代、現代社会が抱える諸問題は複雑化し、ソサエティ5.0の到来を見据え、子どもが育つ環境も変化しています。そのような時代に、子どもの教育はどうあるべきかを、常に問い直しています。学生、教員を問わず自由に、対等にディスカッションし、大学から社会に問い直し、発信していくアカデミアの拠点としての白梅を目指しています。
新しい時代の「子ども学の拠点」として
2022年に創立80周年を迎える本学は、2021年度~2025年度の5年間を記念事業期間と定め、学園のさらなる飛躍を目指し、ハードとソフト両面での教育改革を行います。ハード面での改革は、校舎の新改築を含む学習環境の充実化です。ソフト面では、カリキュラムの変更を含む教育内容の見直しと整備です。具体的な内容については、2019年夏に理事会で集中討議を行い、改革の方向性を確認しています。
2019年4月の理事長着任時に、私は三つの約束をしました。一つ目は、学園の一体感を醸成すること。二つ目は、経営の透明性を高めること。三つ目は財政再建です。
一つ目の一体感を醸成するとは、学園内の学校間、教員間、職員間、さらに教員と職員の間のコミュニケーションを円滑にするというものです。二つ目の経営の透明性については、理事会などの意思決定機関で決まったことは、極力翌日までに、遅くとも3日以内に公表するように努めています。三つ目の財政再建については、財務体質を改善しながら財政の健全化を図ることです。これらの試みは、学園の永続性を念頭におき、大学経営全体を強固なものにしていくことが目的です。
時代が変化する中、本学も「資格の白梅」から「資格とアカデミアの白梅」への転換を目指しています。保育者養成のフロンティアとして、さらなる時代の変革期に向けた研究力の向上、新しい保育・教育の提案、新しい子ども学の拠点としての白梅の展開にご期待ください。
【Profile】
井原 徹(いはら・とおる)氏
1946年生まれ。早稲田大学第一法学部卒業後、1969年早稲田大学に職員として入職。財務部長、早稲田大学理事・監査室長などを歴任後、定年退職。2006年実践女子学園監事就任。
2009年より実践女子学園理事長を務め、任期満了につき退職。
2019年より学校法人白梅学園理事長。