湘南工科大学 学長 渡辺重佳氏

教育改革が引き出した学生たちの「学ぶ意欲」に応え、
時代の変化にも対応する基礎力を身に付けた技術者を育成する


社会に貢献する技術者を育む工科系大学
 湘南工科大学は昭和38(1963)年、相模工業大学として湘南・藤沢の地に開学しました。創設時より一貫して工学部のみの工科系単科大学であり、現在は機械工学科・電気電子工学科・情報工学科の基盤系3学科、コンピュータ応用学科・総合デザイン学科・人間環境学科の応用系3学科、全6学科編成で約2100名の学生が学ぶ小規模な大学です。
 立地的にはまさに湘南地区に位置し、雄大な富士山と江の島を望む恵まれた環境の中にあります。今後は地元・湘南地域への貢献もより一層進めながら、広く社会に貢献する技術者を育成するべく、実践的な知識と技術がしっかり身に付く教育に力点を置いています。
 工学に関する学術の教授および研究を行うとともに、実践的、創造的な能力を備えた人間性豊かな技術者を育成することを目的とし、併せて我が国、産業界および地域社会の発展に寄与することが本学の教育理念です。しかしながら、私が情報工学科の学科長に着任した2010年頃、本学の状況はなかなか厳しいものでした。入学年度ごとの卒業率は70%を切る勢いで、卒業できても定職に就かない学生が多く、大学としての教育方針も定まらないという状況のなか、松本信雄前学長が2013年4月より教育改革をスタートさせました。

「授業に出席する」ことから始まった教育改革
 松本前学長が示した方針は、学生に対して“厳しく、仲良く、身に付く”教育を、というもので、「すべては授業に出席するところから始まる」「教員は興味関心と学ぶ意欲を高める授業を行う」「知識や技能はレベルや量を追求せず基礎をしっかり」「成績評価や進級要件の適用は厳格に」といった非常に基本的なところから教育改革を進めていきました。
 具体的な取組として、まずはIC学生証によって確認する授業出欠データをWEB上で可視化するシステムを構築しました。出席不良者は自分自身で認識ができると同時に、欠席の多い学生には担当教員がフォローする体制を築いたことで、7割程度だった授業出席率を9割以上にまで改善させる結果となりました。本学では入学後すぐに学生を少人数のグループに分け、担当する教員が学修から生活全般まで指導やアドバイスを行うCC(コミュニケーションサークル)制度があります。高校までのクラス担任のような制度ですが、これも小規模大学だからこそ実現できた教育環境です。また現在は、学生の授業出欠状況を保護者もWEBから確認できるようになっています。
 カリキュラムは、学力の3要素である「知識、技術」「協調性、計画性、実現力、表現力」「積極性、向上心」がバランスよく身に付くように、他者と協働しながら自主的に学ぶことのできるアクティブ・ラーニングを導入しました。設備やICT環境を整備し、多数の教職員がアクティブ・ラーニングを実践するための特別な研修を受け、グループでの討論、調査、検討、まとめ、発表などを行う全員参加型の授業を実施しています。単位は数を取らせるのではなく、厳選した単位をしっかり取得してもらう方針としました。昨今の技術の進展は目まぐるしく、表面的な技術だけを学んでも10年後には役に立たない知識となるかもしれません。だからこそ本学では、時代の変化にも対応できる基本的な考え方や情報収集の仕方など、社会人基礎力や技術力の基本を身につける普遍的な学びに注力しています。

学修意欲をバックアップするプログラムの充実
 こうした多数の取組が功を奏し、出席率だけでなく単位取得数や成績(GPA)の向上、退学率の半減、卒業者数の増加、さらには入学者数の増加など、さまざまな面で成果を上げる形となりました。大学が一丸となったきめ細かな就職支援体制に加え、工科系大学として教育力を企業の方々にもよくご理解いただいたことで、就職率も大幅に上昇しました。現場に立つ教員も、授業に対する学生の意欲や態度が大きく変化したと実感しています。授業中の私語や居眠りもなくなり、出された課題には学生がお互いに教え合いながら真剣に向き合うため、教員たちは学生の学修意欲を充たす課題づくりに日々苦心しているようです。
 本学の教員数は80名程度ではありますが、教職員がお互いの人となりや得手不得手をよく理解しているため、さまざまな取組に適材適所の人材を配置することで、円滑に教育改革を進めることができています。こうした実現力の速さも、小規模大学のメリットであると言えるでしょう。
 2018年度より新たな試みとして「学科横断型学修プログラム」も開始しました。これは、興味のある技術をより広く深く学びたい意欲的な学生を対象に、所属学科での専門分野を学びながら、関連する他学科の専門科目も履修することができる特別なプログラムです。通常のカリキュラムでは4年次から配属された研究室で研究を始めますが、このプログラムでは2年次から研究に関わることが可能となります。“いま、注目の技術”をテーマに、「XRメディア」「ロボティクス」「AI」「IoT」の4コースを設け、それぞれを担当する研究センターが学生の学ぶ意欲に応えています。

湘南から未来を切り拓く人材を輩出し続ける
 教育改革の成果が認められたことで、これまで以上に優秀な学生にも数多く入学いただけるようになってきました。今後はこうした上位層の学生をさらに伸ばしていく教育や課程づくりを検討しています。また、湘南地域に貢献する研究・教育も推進しています。地域と連携し、地域に役立つ研究を行ったり、ここで学んだ学生が湘南地区の企業へ就職したりすることで、地域貢献をしていきたいと考えています。現在、こうした本学の将来の方向性を示す中期計画の策定に向け、未来のキーパーソンとなる教職員が中心となって取りまとめています。学校法人の理事長もメンバーとして参画しながら、計画をしっかり実行に移せるようサポートに努めてまいります。
 テクノロジーの進化によって、多くの職業がAIにとって代わり、これまでにない職業が今後増えていくことが予想されています。湘南工科大学では、どんな時代でも対応できる基盤と、未来を生き抜くためのスキルを身に付けることができます。本学は「社会に貢献する技術者の育成」という教育目標の下、2013年度より教育改革に邁進し、いくつもの成果をあげてきました。教育改革は新たなフェーズに進み、これからも継続してまいります。広く首都圏、全国からはもちろんのこと、地元・湘南地域や神奈川県内の高校生もぜひ湘南工科大学で学んでいただきたいと思います。



渡辺重佳氏

【Profile】

渡辺重佳(わたなべ・しげよし)氏

1977年 慶應義塾大学工学部計測工学科卒業
1979年 東京工業大学大学院応用物理学修士課程修了
1979年 東京芝浦電気(現東芝)半導体事業部入社
1998年 博士(工学)(慶應義塾大学)
2005年 湘南工科大学工学部情報工学科教授に着任後、情報工学科学科長、メディア情報センター長、工学研究科長、副学長を歴任
2019年 湘南工科大学学長就任

【湘南工科大学の情報(スタディサプリ進路)】

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