就実大学・就実短期大学 学長 桑原和美氏

変化する時代を力強く生き抜く人材を育成し、
地域に根差し、地域を輝かせる大学に

「去華就実」を基軸に、堅実に教育の枝葉を育む
 就実学園は2024年(令和6年)に創立120周年を迎えます。本学のルーツは1904年(明治37年)に創設された岡山実科女学校です。その背景には近代日本における女子教育の重要性に対する認識の高まりと、日露戦争により家を守る女性の技能と教養の必要性がありました。時代の要請に応えた「実地有用」の教育理念は、時代を超えて今も本学の人材育成の礎となっています。
 建学の精神である「去華就実」は、1908年(明治41年)に発布された「戊申詔書」の中の「華ヲ去リ實ニ就ク」に由来するとされ、外見的な華やかさに心奪われることなく、実質的・本質的な人間性の豊かさや内面の充実に努めるという価値観を示しています。本学は、「去華就実」と「実地有用」を教育・研究、地域貢献、組織運営等のあらゆる活動における精神的な基軸としています。
 本学は岡山就実短期大学(1953年)、就実女子大学(1979年)の開設を経て、2003年に薬学部を開設すると同時に男女共学となりました。文学部からスタートし、現在は人文科学部、薬学部、教育学部(2011年)、経営学部(2014年)の4つの学部と3つの大学院研究科、そして2つの学科からなる短期大学を擁する総合大学へと発展を遂げています。
 言葉や文字・歴史・思想などを通じて人間を追究する人文科学を礎に、人の病気の治療や健康の保持増進に貢献する薬学、子どもの成長を支え、時代に応じた教育の内容と方法を追求する教育学、さらに世界と地域で活躍できるビジネスの理論と実践方法、コミュニケーションの方法を学ぶ経営学へと、着実に新しい学びの場を拓いてきました。その歩みは、まさに「去華就実」を体現したものであると言ってよいでしょう。“堅実”とは、守りに入るということではありません。本学は基軸となる考えを押さえながら、時代と社会の変化を的確に捉え、地域に根差した大学としてこれから先も新たな枝葉を育てていきます。

「実地有用」の専門性をもった人材育成
 本学における学びの専門性もまた「実地有用」であることを特色としています。人文科学部は、学生が本物を見る・触れる体験から得た発見、知識、理解を基に文化・言語・歴史を多様な視点で探求するプログラムによって専門性と普遍的な力をもつ学生を育てます。
 経営学部の留学プログラムや長期インターンシップは15週間に及ぶ本学独自の実践的な学びのプログラムです。50社以上の岡山県内の会社・団体や欧米・アジア各地の提携大学において学んだ経験を活かし、主体的に課題の発見・解決に取り組むことで学生は大きく成長し、その力は最終的に地域に還元されます。
 教育学部では正規のカリキュラム以外にも、学生が教育・福祉の場におけるインターンシップやボランティアに積極的に取り組むためのプログラムや実社会での問題に対応するためのさまざまな模擬トレーニングの機会を多く設け、実践的な力の養成に重点を置いています。
 薬学部は高度な専門性と強い使命感、高い倫理観に加えて、臨床場面におけるコミュニケーション能力の高い薬剤師を養成する教育に力を入れています。
 短期大学の幼児教育学科、生活実践科学科を含め、本学の専門教育はそれぞれの特色を発揮しながら、その根底において「実地有用」の人材を育成するという目標で強く結ばれているのです。
 本学では全学共通の初年次導入カリキュラムとして、2019年度より初年次教育「スタートアップ就実」を開設しました。1年生全員が学部・学科の垣根を取り払ったクラス編成により、専門の枠を超えて、建学の精神の実践をはじめ、大学での学び方、思考方法、キャリア・ライフデザインについて、グループワークやアクティブラーニング、上級生のSAが交じったディスカッションなどの方法により学修する特色あるプログラムです。また、ICTを活用した取組も整備され、広く学びの基礎を身に付ける内容となっています。
 さらに、時代に即した学修環境の整備を狙い、本学ではこの数年間に2棟の校舎を新設し、現在建設中の大学の顔となる新A館は2021年1月に竣工予定です。最新の情報教室と学生用ホールを備えた4階建ての本館と3階建ての別館を渡り廊下で連結し、さらに他の3つの校舎と各階で結ばれます。授業や活動に合わせて建物を自在に移動する快適さとそこから見える多彩なキャンパス風景もまた、大学生活の楽しさの一部になることでしょう。目の前の最寄駅から大学敷地まで徒歩1分のまっすぐ延びる専用プロムナードも整備される予定で、こうした新校舎のデザインや施設・設備には学生の声が反映され、設計・デザイン選定にも学生の代表者が参加しています。
 また隣接する就実小学校、すぐ近くには附属の就実こども園があり、世代を超えた触れ合いはもとより、教職・保育系の実習やさまざまなボランティア活動には理想的な環境と言えるでしょう。
 0歳から大学院まで一貫性を活かした教育の幹を、大学として、学園としてさらに太いものにしていきたいと考えています。

学生が成長を実感し、“満足”につながる教育支援とキャリア教育
 本学では少人数のクラス担任制度により、教員と一人ひとりの学生との距離が近く、丁寧な支援が自慢です。年に複数回行われるクラス会には大学から費用の支援があり、食事をしながらの親睦は学生にとって特に楽しい思い出となっているようです。
 今後、より注力していきたいのが学生たちの満足度-学生自身が“成長した”と自信をもって言える状態-の向上とキャリア教育です。現在も各学科とキャリアセンター、保育・教職支援センターが連携し丁寧にサポートを行っていますが、今後さらに入学から卒業まで、あるいは卒業後も支援できる一貫した支援の充実を図っていきます。
 “大学で身に付ける力”は、とても多様なものです。数値化し、チャートやグラフで示すことに意義があるのではなく、その結果を学生自身が成長実感と一体化して捉えられることが大切です。大学生活で自分が何を学び・考え・どう行動したのか、一つひとつの経験の積み重ねやプロセスに意味があるのだということを理解し、何かを身に付けたと実感できれば、それがキャリアに結実します。本学はそれを学生が自信をもって語れるようキャリア教育の体制をさらに整備していきます。


桑原和美氏

【Profile】

桑原和美(くわはら・かずみ)氏

長野県出身。専門は文化資源学、舞踊学。日本女子体育大学卒、お茶の水女子大学大学院修士課程修了、サリー大学大学院(英国)修士課程修了、東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得満期退学。就実女子大学文学部助手、助教授を経て、2011年から就実大学教育学部教授。学生部長、副学長を歴任し、2020年4月より現職。就実学園理事。

【就実大学の情報(スタディサプリ進路)】

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