武蔵丘短期大学 学長 後藤人基氏

『体感・体験・体得』、
社会に役立つ力を2年間で身につける

「健康」をテーマとした日本初の短期大学
 学校法人後藤学園の歴史は、戦後間もない1947年から始まります。戦後の荒廃の中、学園の創立者・後藤奈美子が「女子教育に力を入れて社会の復興に役立てていきたい」という強い想いをもちスタートした、専門学校ドレスメーカー女子学院(現・専門学校武蔵野ファッションカレッジ)が出発点です。後藤が抱いていたファッションに対する思想を、2019年に写真集『ファッション哲学』として刊行しました。
 1951年に学校法人となり、洗練された料理を日常にとクッキングスクール、食と栄養について法令化された調理師、栄養士の養成校を設立して発展。現在は、武蔵野ファッションカレッジ、武蔵野調理師専門学校、武蔵野栄養専門学校を擁し、専門知識と技術をもった人材を輩出し続けています。
 これらの専門学校では、戦後の社会で不足していた「衣食」のプロフェッショナルとして活躍できる人材の育成に力を入れてきました。時代は進み、日本は豊かになりました。「衣食」は充足し、その次に求められたキーワードが「健康」です。
 健康は、栄養・運動・休息のバランスで成り立ちます。これからの時代は、健康的な生活をする人が増え、健康で持続可能な社会を作っていくことが大切ではないか。そのためには、運動・栄養の専門知識をもち、健康指導ができる人材が必要になる、と確信し、1991年に短期大学を開学しました。当時の文部省(現・文部科学省)からは、「健康」をテーマとする短期大学は他に例のないユニークなものであると評価を頂き、認可に結びつきました。
 現在は健康生活学科の中に、健康栄養専攻、健康スポーツ専攻、健康マネジメント専攻の3専攻を設け、栄養と運動のための指導力、マネジメント力を備えた『人財』を養成しています。

地域と連携し社会で通用する力を
 本学が位置する吉見町は人口約2万人、地域のコミュニティを活かした各種イベントが盛んで、子ども対象の教室、生涯学習、子育て支援、高齢者の健康づくりなど幅広い年齢に向けた教室が、多い時には20ほども開催されています。本学は吉見町と提携し、学外実習やボランティアという形で、積極的に学生を地域社会に出し、イベントの企画や運営に携わらせていただいています。また、隣接する東松山市で開かれる日本スリーデーマーチという世界規模のウォーキング大会に協力をさせていただいています。
 「体感」「体験」「体得」本学ではこの3つをキーワードに「身体で覚える授業」を大切にしています。学外実習やボランティアはその一環なのです。例えば授業で教わる運動能力の測定を実際のイベントで高齢者の方に行うと、「言葉掛けはゆっくり」、「アンケートの文字は小さくて読めない場合もあるので読んで差し上げるほうがよい」などを実感として学べます。子どもとの接し方も、実際に子どもたちと対話し、相手をしたほうがより多くのことが身につきます。
 学生はこのような経験を通じて、学習することの意味と社会とのつながりを確認します。今まで学校で学んできたことは間違っていない、この道は自分に向いているということがわかると、勉強への取組が変わっていきます。それから、自分が思っていたより自分にできることやもっている力がたくさんあることに気づき、その自信がより一層の成長へと繋がっていきます。逆に今の自分に足りないもの、できないこともわかり、それを克服しようというファイトもわいてきます。
 学外での活動は、本学が専門知識の習得と並んで大切にしている人格形成に役立っています。挨拶、感謝、思いやりと気配りが学外での活動を通して自然と身についていきます。正に、「衣食足りて礼節を知る」建学の精神にある“人格を育てる敎育“です。そのため、本学では率先して全員に1年生のうちからボランティアなどを体験させられるようにバックアップしています。

『ムサタン5C』全教職員が支える就職活動
 本学の学生は元気で素直、私たち教員も率直にそう思います。外部の方からよくそう言っていただきます。そうした学生の良さは伸ばしていってあげたい。幸い本学は少人数制により、一人ひとりの学生に目が行き届きます。教員はもちろん、職員もほとんどの学生の顔と名前が一致しています。また、交友関係やさまざまな事情もかなり把握できています。そのため日常生活での悩み事や進路の相談に乗ることができるのです。
 進路といえば本学では、キャリアデザイン、カウンセリング、コミュニケーション、クリエイティブシンキング、コンピュータ活用の5つの観点、『ムサタン5C』という、全教職員が就職活動支援を行う独自の就職サポート態勢を取っています。学生はゼミや担任教員はもちろんのこと、部活動の顧問、職員にも相談しやすい人に相談ができます。学生食堂などで見かけた学生に「面接はどうだった?」など、教職員から積極的に声かけをするように心掛けています。また、ハローワークにもご協力いただいて、就職後の悩み、トラブルにも対応しています。在学時に信頼関係が築けているので、卒業後も大学を訪ねてきます。
 キャリア系の授業は1年前期からスタート。社会人のマナーから始まり、履歴書の書き方、面接の指導を行います。2年次にはそれぞれの進路に合わせた形で、各自に必要な就職活動の支援をしています。このきめ細かな指導が功を奏し、毎年、100%近い就職率をキープしています。

学び合いで多様化する社会の変化に対応できる人材を
 開学した1991年から現在までの間に、社会情勢は大きく変化しました。健康産業が栄え、サプリメントがたくさん出回っています。スポーツ界では、トップアスリートが栄養士のアドバイスを受ける流れになってきています。高齢化が進み、高齢者の運動の大切さが世間に認識されるようになりました。これらの社会の流れに対応できる、氾濫する健康情報を把握し、見極め、健康全般に対する知識を体系的に整理できる「健康のプロフェッショナル」を今後も育成しつづけようと思っています。
 学生たちの姿を見ていると、私たち教員がわかりやすい授業を行うことはもちろん、お互いに学び合うことも大切と感じます。実技の授業が得意な学生がいるとそれをお手本に他の学生もがんばります。そういう意味では、多くの日本代表選手を生んだ女子サッカー部「シエンシア」や、女子バレーボール部、女子バスケットボール部、陸上競技部などで活動するトップレベルの選手と学生が接することも、大変良い刺激になっているようです。健康栄養専攻でスポーツにあまり関わってこなかった学生も多様性を身につけていきます。また、自分とは違う世界の人と思っていたトップアスリートも自分たちと同じ学生だと知ることも視野を広げます。
 私たちは学生に、ここで単に2年間の時間を過ごすだけではなく、学んだことを“何かの形”として身につけて卒業してもらいたいと思っています。そのために資格取得に力を入れ、中学の保健体育科教員免許をはじめ、栄養士やアスレティックトレーナー、医療事務など32の資格取得をサポートしています。
 学生は卒業後、スポーツジム、ホテル、レストラン、病院や学校など、社会の幅広い分野に飛び立っていきます。また、プロとして競技人生を続ける学生、学びを深めるために4年制大学や大学院に進学する学生もいます。すべての学生が納得できる人生を歩んでいけるように、教職員一同、全力でサポートしていきたいと思っています。
 現在は、さまざまな工夫をし、細心の注意を払ったうえで対面授業や学外活動に取り組んでいます。また、学内全館にFree Wi-Fiの環境を整えて新しい学習様式に対応しています。


後藤人基氏

【Profile】

後藤人基(ごとう・ひとき)氏

1950 年生まれ。73年明治大学文学部文学科を卒業。87年学校法人後藤学園理事長に就任。99年同学園
学園長を兼務。2020年同学園武蔵丘短期大学学長に就任。埼玉県私立短期大学協会理事を務める。_

【武蔵丘短期大学の情報(スタディサプリ進路)】

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