教えて!「共通テストは高校教育を変える!?」

 大学入試センター試験の後継である「大学入学共通テスト」の第1日程が、先ごろ終わりました。1月30・31日には、第2日程が行われます。直前になって国語・数学の記述式問題と英語の民間試験活用という二つの目玉が見送られるなど曲折を経ての船出でしたが、共通テストは今後、高校教育にどのような影響を与えるのでしょうか。

教えて!「共通テストは高校教育を変える!?」

 実際に出題された各教科・科目の問題を見て、各高校では、どう受け止めたでしょうか。センター試験に比べて問題の分量が多かったなど、出題傾向の変化に対する戸惑いは別として、「暗記から思考へ」と新学習指導要領に向けて授業改善に取り組んできた先生にとっては「自分たちのやってきた方向は間違っていなかった」と自信を深めたことでしょう。一方で、従来の指導法では本当に通用しなくなったと痛感された先生もいらっしゃることでしょう。

 というのも、出題にあたって大学入試センターは「『主体的・対話的で深い学び』の実現に向けた授業改善のメッセージ性」を打ち出すことを、明確に表明していたからです。
 
 問題作成方針では、センター試験の蓄積を生かしつつも、新学習指導要領で育成を目指す資質・能力を踏まえ、知識の理解の質を問う問題や、思考力・判断力・表現力等を発揮して解くことが求められる問題を重視する、としていました。さらに「授業において生徒が学習する場面や、社会生活や 日常生活の中から課題を発見し解決方法を構想する場面、資料やデータ等を 基に考察する場面など、学習の過程を意識した問題の場面設定を重視する」とも明言していました。実際、問題作成プロセスにおいて現職の高校教師の関与の比重が高くなったのではとも言われています。

 ここで改めて確認しておきましょう。共通テスト導入の契機となった高大接続改革は、高校教育・大学教育と、その間にある大学入学者選抜を、三位一体で改革することを目指すものです。とりわけ入学者選抜改革では、知識・技能、思考力・判断力・表現力、主体性・多様性・協働性(「主体的に学習に取り組む態度」を言い換え)という初等中等教育の「学力の3要素」をすべて評価して入学者を選抜し、大学入学後にさらに伸ばしてもらおう――というのが眼目です。共通テストが思考力・判断力・表現力の測定をいっそう重視することにしたのも、そのためです。

 また、高校教育改革では、小中学校も含めた学習指導要領の改訂により、学力の3要素を拡張した三つの柱(知識・技能、思考力・判断力・表現力等、学びに向かう力・人間性等)により、資質・能力を育成することを目指しています。今回の共通テストが現行の学習指導要領下であるにもかかわらず、新学習指導要領の資質・能力を重視して出題することにしたのは、こうした高大接続改革の理念に根拠があります。

 折しも26日にあった中央教育審議会の答申では、高校に「スクール・ミッション」(存在意義・社会的役割等)の再定義と、入口から出口まで三つの「スクール・ポリシー」策定を求めています。特に後者は大学教育改革(3ポリ改革)の高校版とも言えるもので、特に「育成を目指す資質・能力に関する方針」(グラデュエーション・ポリシー=仮称)に基づいて「教育課程の編成および実施に関する方針」(カリキュラム・ポリシー=同)を策定するカリキュラム・マネジメント(カリマネ)が課題となります。

 つまり、進行する高大接続改革だけでなく、今般の答申で初等中等教育改革の一環としての高校改革が加わることで、各高校が主体となった授業改善による資質・能力の育成が、ますます求められるわけです。そうして高校で育成された生徒を引き受ける大学が、学生の資質・能力をさらに伸ばすため、いっそう大学教育の改革を加速するであろうことは、言うまでもありません。

 そうした教育改革全体の流れを受け止めながら、目の前の生徒に合わせてカリキュラムを見直し、日々の授業改善に取り組むことこそが、最大の「共通テスト対策」になることでしょう。

大学入学共通テスト→ https://www.dnc.ac.jp/kyotsu/index.html


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【profile】
渡辺敦司(わたなべ・あつし)●1964年北海道生まれ。1990年横浜国立大学教育学部教育学科卒業。同年日本教育新聞社入社、編集局記者として文部省、進路指導・高校教育改革など担当。98年よりフリーの教育ジャーナリスト。教育専門誌を中心に、教育行政から実践まで幅広く取材・執筆。
教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説 http://ejwatanabe.cocolog-nifty.com/blog/