教えて!「そもそもスクール・ミッション/ポリシーって?」

 3月31日の学校教育法施行規則改正で、「スクール・ミッション」(各高校に期待される社会的役割)の再定義と、「スクール・ポリシー」(①育成を目指す資質・能力 ②教育課程の編成・実施 ③入学者の受け入れ――に関する三つの方針)の策定・公表が求められることになりました。何やらまた新しい改革が降ってきたようですが、そもそもミッション/ポリシー改革は、何のためにやるのでしょうか。

教えて!「そもそもスクール・ミッション/ポリシーって?」

 初等中等教育全般に関わる中央教育審議会の審議では、高校をめぐって「普通科再編」ばかりが注目されてきました。しかし設置学科や国公私立の別を問わず、全高校に求められるという点では、ミッション/ポリシー改革こそが高校改革の「本丸」と言っていいでしょう。

 既に大学では、アドミッション・ポリシー(入学者受入れの方針、AP)をはじめとした「三つのポリシー」(3ポリ)改革が進んでいることをご存じでしょう。これを高校段階にまで引き下げた、とみることもできます。また、何より高校等進学率が99%に達し、生徒の興味・関心や意欲が多様化する一方、ますます社会の激動が予測される中では、単に進学や就職をさせれば高校教育は終わり、というのでは済まなくなっていることも確かです。

 このうちスクール・ミッションは、学校の設置者が再定義を行うものです。ミッションの再定義が行われてから、各高校で3ポリを策定するのが理想形です。ただし公立の場合は、既に都道府県の教育振興基本計画や高校の中長期計画が進行中の場合もありますから、ミッションの再定義の前に3ポリ策定が求められることは十分想定されます。

 3ポリの策定は、①育成を目指す資質・能力→②教育課程の編成・実施→③入学者の受け入れの順に行うべきことが、中教審「新しい時代の高等学校教育の在り方ワーキンググループ(WG)」審議まとめに示されています。どんな生徒を育成するかが第一であり、そのためのカリキュラムであり入学者選抜なのですから、当然でしょう。

 ところで、こうしたミッション/ポリシー改革は「新しい」のでしょうか。新学習指導要領では、各学校がカリキュラム・マネジメント(カリマネ)によって育成を目指す資質・能力を明確にし、学校教育目標などに具体化することが求められているはずです。資質・能力の三つの柱(知識・技能、思考力・判断力・表現力等、学びに向かう力・人間性等)は各教科等で同じものになっており、教科等を横断することで、学校全体で目指す資質・能力が育成される、というのが新指導要領の考え方です。

 では3ポリの策定に、何か面倒な作業が必要になるのでしょうか。既に多くの高校では今春の大学入試改革を意識して、思考力・判断力・表現力等を意識した授業改善が行われていることでしょう。総合的な学習の時間(総合学習)が高校で「総合的な探究の時間」(総合探究)に替わるとともに、「地理探究」「理数探究」などの新科目に代表される通り、各教科等にも探究的な要素が強まっています。高校指導要領の改訂も、「高大接続改革」の一環です。

 総合型選抜(旧AO入試)や学校推薦型選抜(旧推薦入試)を意識して、全校的に総合探究に取り組む高校も増えています。1999年改訂の指導要領の下、一部の心ある先生が孤立無援で総合学習を立ち上げざるを得なかった状況を思い起こせば、雲泥の差です。逆に言えば、キャリア教育に取り組んできた先生にとって、大きなチャンスの再来でしょう。

 高校WGの審議まとめでは、「『生徒を主語にした』高等学校教育」の実現を求めています。まさに各高校の授業で、目の前にいる生徒たちに、どのような資質・能力を付けさせて、上級学校やその後を含めた社会に送り出すかを真剣に考え、授業をはじめとした教育活動を具体的に見直すこと自体が、ミッション/ポリシー改革の基本だと言えるでしょう。



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【profile】
渡辺敦司(わたなべ・あつし)●1964年北海道生まれ。1990年横浜国立大学教育学部教育学科卒業。同年日本教育新聞社入社、編集局記者として文部省、進路指導・高校教育改革など担当。98年よりフリーの教育ジャーナリスト。教育専門誌を中心に、教育行政から実践まで幅広く取材・執筆。
教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説 http://ejwatanabe.cocolog-nifty.com/blog/