―接続から共創へ―高校生の「学びたい」を高校と大学がともに育てるとき

「高大接続システム改革会議」の議論を受けた入試改革の柱であった、記述式問題や英語民間試験、ポートフォリオを入学者選抜につなぐプラットフォームが見送られたことなどを受け、「高大接続改革は、頓挫したのでは」という印象を持たれている方もいらっしゃるかもしれません。

しかし今、高校・大学の現場では、高校で本格化しつつある「総合的な探究の時間」などを舞台に、これまでの単発の出張授業や大学訪問ではなく、〝高校生の主体的な学び〞を高校と大学が共に支援する新たな協力が始まっていたり、高校で育んだ「主体的に学ぼうとする力」や「学びたいという意欲や意志」を評価し、入学後の学びにもつなげていこうとする新しい入学者選抜が次々と産声を上げています。  

高校教育、大学教育、そしてその間をつなぐ大学入学者選抜のすべてを通じて学力の3要素を着実に育成し、評価し、さらに発展させていくという三位一体の改革は、システムではなく、本来こんな高校や大学の個別の挑戦、創意工夫、試行錯誤の中で推進し、形作られていくのではないでしょうか。

本特集では、高校と大学、ときには地域が一緒になって高校生の「学びたい」という思いを育成したり、進路指導・入試を通してそ の「学びたい」思いをつなぎ、進学後のさらなる成長につなげようとしている事例や、生徒の姿をご紹介しています。  

また、全国の大学に高大連携に関する取組内容についてお聞きしたアンケート調査では、想定を超える300以上の大学から情報をお寄せいただきました。

高校ではこれから、育てたい生徒像を明確にし、GP・CP・AP からなるスクール・ポリシーの策定を進めていかれると思いますが、一足先に「3つのポリシー」に基づく教育改革を進めてきた大学では今、高校・大学・社会の中間に立ち、学生の学びと成長をどうつないでいくかが重要なテーマとなっています。

高校と大学、それぞれが教育改革で大きく動いている今だからこそ、高・大・社のつながりを生徒を主語に捉えなおし、手を差し伸べ合い、育てたい生徒・学生像を対話しながら必要な「学び」を〝共創〞していく、新しい高大接続のあり方が模索できるかもしれない。

林知里(本誌デスク)