教えて!「2022年の教育改革はどう進む?」

 2022年を迎えました。いよいよ4月からは、高校でも新入生から新学習指導要領が全面実施となります。一方で、新型コロナウイルス感染症への対応は3年目を迎え、若年層にも拡大するオミクロン株が加わって、ますます高校現場には教育改革について考える余裕がなくなっている、というのが正直なところです。今年の改革は、どう進むのでしょうか。

「2022年の教育改革はどう進む?」

 昨年、最も学校現場の関心を呼んだ改革テーマの一つが、教員免許更新制の「廃止」(発展的解消)ではなかったでしょうか。政府はいま開かれている通常国会に、教育職員免許法改正案を提出する予定です。成立すれば、施行日以降は免許の期限がなくなり、更新も不要となります。

 更新制の代わりに導入される見通しなのが「教員受講履歴管理システム(仮称)」です。これが、どのように制度設計されるのかも注目されます。また、それ以外の養成・採用・研修の在り方についても、中央教育審議会の特別部会の下に置かれた小委員会で集中的に検討し、夏ごろまでに一定の結論を出すとしています。

 学校の働き方改革をめぐっては、6年ぶりに教員勤務実態調査が行われます。2019年1月の中教審答申や、それに合わせて文部科学省が策定した「公立学校の教師の勤務時間の上限に関するガイドライン」の成果が問われます。ただ、文科省が毎年行っている「教育委員会における学校の働き方改革のための取組状況調査」の21年度結果を見ても、見通しは暗そうです。実態調査の結果を受けて、改めて働き方改革の本格的な論議に着手することが期待されます。

 働き方改革にも寄与すると言われているのが、ICT(情報通信技術)環境の整備です。GIGAスクール構想の前倒しにより、小中学校には既に1人1台端末が国費で整備されましたが、高校はネットワーク環境だけです。末松信介文科相と牧島かれんデジタル相は11日、「情報Ⅰ」の必履修化をはじめとした新指導要領の全面実施に合わせて、高校でも1人1台環境を整備するよう、共同メッセージを出しました。学校設置者の積極的な対応が求められます。

 一方、中教審の初等中等教育分科会は、1月14日の会合で「個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会」の設置を決めました。昨年1月の中教審答申を受けて、「デジタル化などの社会変化が進む次世代の学校教育の在り方」を検討するといいます。答申にあった「個別最適な学び」「協働的な学び」をめぐっても、現場でどう展開するか、まだ十分に見えているとは言えないでしょう。特別部会でどのような方向性が示されるかも注目点です。

 そうした文科省・中教審の動向にも影響を与えそうなのが、政府全体の動きです。教育再生実行会議の後継組織として、昨年末に「教育未来創造会議」が発足しました。高等教育が中心ですが、高校にも大いに影響することは間違いありません。

 教育改革全体にじわじわと影響力を発揮しそうなのが、昨夏に内閣府の総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)の下に設置された「教育・人材育成ワーキンググループ(WG)」です。これも昨年末に中間まとめを公表しており、3月に最終まとめ、4月にCSTIとして「政策パッケージ」を策定するとともに、6月の「骨太の方針」や8月の概算要求にも反映させたい考えです。

 GIGA予算の獲得に代表される通り、文科省単独では、解決困難な教育課題の打開ができなくなりつつあります。省庁横断と役割分担を掲げる同WGが、どう具体策を打ち出すかが注目されます。とりわけ2027年を「次期学習指導要領改訂(見込み)」として、今後5年程度の学習環境整備をどう展開するかも示すといいます。新指導要領の理念を実現するための方策が期待されるとともに、「次期改訂」に向けた動きとしても無視できません。


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【profile】
渡辺敦司(わたなべ・あつし)●1964年北海道生まれ。1990年横浜国立大学教育学部教育学科卒業。同年日本教育新聞社入社、編集局記者として文部省、進路指導・高校教育改革など担当。98年よりフリーの教育ジャーナリスト。教育専門誌を中心に、教育行政から実践まで幅広く取材・執筆。
教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説 http://ejwatanabe.cocolog-nifty.com/blog/