Vol.71 マンガ編集者/千代田修平

千代田修平

【Profile】ちよだ・しゅうへい●1993年、香港生まれ。千葉県立千葉高校、東京大学文学部卒。2017年、小学館入社。『週刊ビッグコミックスピリッツ』編集部で『映像研には手を出すな!』『チ。―地球の運動について―』などを担当。2020年から『マンガワン』編集部に異動。『日本三國』、『レ・セルバン』、『ようこそ! FACT(東京S区第二支部)へ』などの作品を担当している。

恋愛と勉強に熱中

 小学館のマンガ雑誌アプリ『マンガワン』編集部で編集者として働いています。天才であるマンガ家と一緒に面白いマンガを作る仕事はとてもやりがいがあり、充実した日々を送っています。
 高校生のころから本やマンガをむさぼるように読んでいましたが、当時は将来のことは何も考えていなかったですね。高校時代に熱中していたことは恋愛と勉強です。高1のころは地味だったのですが、高2で彼女ができてからは「人生、最高」って感じで高校生活が楽しくなりました。それと、文化祭で演劇の脚本を書いたり、出演したりしたんです。この体験がめっちゃ楽しくて、大学に入ったら演劇部に入ろうと決めるほどハマりました。
 受験は、東京大学を目標に高2の夏から猛勉強を開始。なんとか合格できました。しかし、ギリギリでの合格だったので、入ってからまずは学力で挫折感を味わいました。さらに入部した演劇部でもこんな天才には到底かなわないと思った部員と出会い、打ちのめされました。これが人生で味わった初めての挫折でした。でも根が楽天的なので、自分が咲ける場所で咲けばいいんだと立ち直りました。その後も2年生の時に自分で劇団を立ち上げて脚本・演出を担当したりと、演劇にのめり込みました。

千代田修平

就活を小馬鹿にして留年

 就職活動は何の準備もせず大企業ばかりを受けて全滅。それで留年したんですが、反省して今度は自己分析や業界研究・企業リサーチ、OB訪問、インターンなど、基本的な就活をやりました。志望していたのは、コンテンツ制作、特にクリエイターを支える仕事。これは演劇の経験が大きくて、当時、天才的な演出家や役者たちと仕事をするのが一番楽しかったので、彼らを直接的・間接的に支える仕事をしたいなと。それしか仕事の意味を見出せなかったんです。
 今回は入りたいと思った会社から内定を獲得できたのですが、その中でクリエイターであるマンガ家を一番近い場所で直接的に支えられるのはマンガ編集者だと思ったので小学館を選びました。
 最初は『週刊ビッグコミックスピリッツ』編集部に配属になったのですが、実際にやってみてマンガ編集者という仕事は想像以上に楽しかったですね。最大の喜びは学生時代からやりたいと思っていた、天才の仕事を最も近くで支えられることと、物語を作ることに携われること。これはいまだに変わっていません。
 入社3年後、念願の『マンガワン』編集部に異動。このために小学館に入ったので、喜びもひとしおでした。
 これまで、作家さんと新たに立ち上げたマンガたちがヒットしました。たくさん売れたことよりも、自分たちが面白いと思ったものが大勢の読者に受け入れられたことの方が嬉しいですね。
 作家さんとの打ち合わせで意見やアイデアを出すとき、これまでに読んだ本やマンガ、観た映画や、演劇の経験が役立っていると感じます。

告白してフラれた方がいい

 僕自身が就活で留年している身なので、高校生の皆さんに進路やキャリア選択に関して伝えるべきことはあまりありません。それよりも強く伝えたいのは好きな人がいるなら告白した方がいいということですね。告白って、その相手にまったく無防備に、自分のすべてをさらけ出す行為ですよね。OKがもらえる保証もないのでめちゃ不安で勇気がいるのですが、そういう経験を10代の時にしておいた方が後々生きやすくなると思うんです。
 もちろんフラれたときのことが恐くて友達のままの方がいいという気持ちもよくわかります。でも僕は自分の経験からむしろフラれた方がいいと思うんですよ。確かにそのときはめちゃくちゃつらいですが、そこから立ち直る力とか、より自分を知るなど得られるものがたくさんある。失恋を経験しないで生きる人生はもったいない。だから「好きな人に告白してフラれろ」っていうのが、僕が高校生に一番伝えたいメッセージですね。

Change in myself

木村拓也
高校時代は青春を謳歌。将来のことは何も考えていなかったが、大量に読んだ本や観た映画、経験したことなどが今につながっている。


木村拓也
大学時代は演劇中心の生活。このころから才能のある人を集めて、その才能を引き出して人前で披露するというプロデューサー的な仕事が好きだった。


木村拓也
これまで数々のヒット作を担当してきた。特に『チ。―地球の運動について―』(魚豊)は数々のマンガ賞を受賞。アニメ化も決定している。


(取材・文/山下久猛 撮影/竹内弘真)


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