名古屋文理大学 学長 長谷川 聡氏
栄養教育70年を誇る学校法人滝川学園が母体
AI時代の「問題解決型の学び」を推進し、
これからの社会で活躍する人材を育成します
栄養士養成の名門として歩んだ70年
私たちの歴史は、老舗食品メーカーとして名を馳せた渡辺製菓の学術研究機関であった「野原研究所」に遡ります。同研究所の理事長となった滝川一益が、農林省認可の財団法人「食糧科学研究所」へと改称し、「人生にもっとも必要な生き方と、生きるための技術を教えることが重要である」と提唱しました。そして、この理念の下、昭和31年(1956年)に研究所の所在地だった愛知県名古屋市西区に名古屋栄養専門学院(現在の名古屋文理栄養士専門学校)を開学し、さらに昭和41年(1966年)には同地に名古屋栄養短期大学(現在の名古屋文理大学短期大学部)を開設しました。
これらを発端に、その後、愛知県稲沢市にキャンパスを拡充して「情報」や「経営」の分野に教育・研究の幅を広げ、平成11年(1999年)に名古屋文理大学を開設、令和7年(2025年)には大学院を設置しました。学園が栄養学の教育を始めてから2026年でちょうど70周年を迎えます。
このように当学園は70年間にわたり、栄養教育に力を注ぐとともに、同時に早い段階からICTを活用する情報教育も実施してきました。現在では「情報」分野の教育・研究でも40年の歴史を有します。名古屋文理大学には現在、健康生活学部(健康栄養学科/フードビジネス学科)と情報メディア学部(情報メディア学科)の2学部があり、「食」と「栄養」と「情報」の分野を強みとしています。
さらに、前述のように昨年開設した大学院には健康情報学研究科を設置し、健康科学と情報科学を融合した新しい学問分野の開拓に挑戦しています。
新学部構想によりこれからの社会の実現に貢献する
これまでの栄養教育と情報教育の実績、そして卒業生の活躍を基盤に、私たちはさらなる発展を目指して大学の学部・学科の再編を計画しています。現在の2学部から、フードビジネス学科を基に独立した新学部を開設し、3学部とすることを構想中です。
これまでもフードビジネス学科では、「食」を中心にビジネスについて考え実践してきましたが、現在、それに加え、社会実装まで視野に入れ、実際に新しいビジネスの創出や社会の実現につなげたいという気運が高まっています。そこで、社会調査や経営学に基づく実践的かつ科学的なビジネス教育を通じ、新たな社会の創出に貢献することを目指す新学部を開設する計画です。
また、健康栄養学科の学生が目指す管理栄養士は、病院や健康志向の強い給食施設などのスタッフとして年々社会的ニーズが高まっている職種です。データに基づき、AIも活用してあらゆるライフステージの人々の健康に貢献でき、これからの健康課題に対応できるさらに高度な人材の育成を目指す計画です。
情報メディアの分野でも、これまで世の中のニーズに応えてきた情報技術者やメディアクリエータが、AIの発達によって役割を大きく変えるなか、ニーズに応えるだけでなく、社会のあるべき方向を提案し、自ら応用分野を開拓する高度な人材の育成を目指します。
新学部を含めた3つの学部と、新分野を切り開く大学院の体制で、さらなる発展を目指します。
「問う力」を携え、自ら考え、AI社会をリードする人材の育成に注力
ところで、大学で学ぶ目的と言えば、これまでは、知識と思考力を身につけることが中心で、教育機関は、問われたことに対して素早く正確に回答する「答える力」を育てる場所でした。しかし、さまざまな分野で適切な回答をAIが生成するようになった現在、学ぶ目的も教育の目的も変わってきています。
現在の社会で求められるのは、「答える力」ではなく「問う力」です。「問う力」というのは、世の中の問題(課題や目指すべき理想)を見出し、それに対してどのように向き合うべきかを考える能力と言えます。AIを適切に活用して問題を解決するためにも、問題の本質が何であるのかを「問う力」が必要なのは明らかです。
そのような力をもつ人材を育成するためには、具体的にどのような教育が必要なのでしょうか。それは例えば、学生が自ら問題を設定し、それらを解決していくことを通じて学ぶPBL(プロジェクト・ベースド・ラーニング)のような教育です。本学では「学生プロジェクト」が盛んに行われており、必要な知識と実践的スキルを身につける「問題解決型の学び」を推進しています。
すぐに答えが出るわけではではない問題に対し、先輩・後輩も含めたチームが一丸となって取り組み、さらに教員もそこに加わって、試行錯誤を重ねます。途中途中でいろいろな問題を抱えながら、その都度解決していくプロセス自体が実践的な学びとなります。
学ぶ場は学内にとどまりません。自治体や企業、医療機関、文化施設などと連携して、学生のうちから実社会で実践的に学びます。学生は、それらの実践のなかで、失敗も含めてさまざまなことを経験しながら、問題の本質は何なのか、社会に何が提案できるのかを自ら考えることで、来るべき次代を見据える想像力と新たな世界を切り拓く創造力を伸ばしていく。こうした学びがPBLのねらいです。
学生一人ひとりに寄り添い、じっくり育てる「しとねる教育」
名古屋文理大学には「しとねる教育」と呼ぶ、初代理事長・滝川一益から代々続く理念が存在します。
「しとねる」は「人と成る」が訛 ったとも言われる中部地方の方言で、「成人にふさわしく、誰もが認める社会人に、じっくり練って育てていく」という意味も込めて使われます。
その言葉の通り、本学には教員が学生一人ひとりに寄り添い、一緒に学び、学生を成長させていく文化があります。その雰囲気をこれからも大切にしていきたいと考えています。
一方、学生には教員が何かを教えてくれるのを待つのではなく、「こんなことを学びたい」という意思を自ら発信してほしいと考えています。本学にはその思いに応える環境と文化があります。
大学で身につけた知識や技術は社会に出て数年もしたら古くなってしまうかもしれません。しかし、「問う力」を身につけて自ら学ぶ姿勢は一生の財産です。本学は今後も、学生が自由に意見を交わし、社会実装につながる提案と実践を重ねるなかで、新たな価値を創造する力を育む学びの場であり続けます。

【Profile】
名古屋文理大学 学長 長谷川 聡(はせがわ さとし)氏学位: 博士(情報科学)/名古屋大学
専門分野: 応用情報科学、応用数理科学、情報システム学、健康情報学
名古屋文理大学大学院健康情報学研究科教授
名古屋文理大学情報メディア学部情報メディア学科教授(兼担)
【略歴】
1964年生まれ
名古屋大学理学部物理学科卒業
名古屋大学大学院多元数理科学研究科博士前期課程修了
名古屋大学大学院情報科学研究科博士後期課程修了
株式会社島津製作所(京都市)、名古屋文理短期大学勤務を経て、名古屋文理大学勤務
2012年、名古屋文理大学情報メディア学部長就任
2022年、名古屋文理大学副学長就任
2026年4月、名古屋文理大学・名古屋文理大学短期大学部学長就任。現在に至る
【名古屋文理大学(スタディサプリ進路)】
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