神戸女子大学 学長 洪 愛子氏
学園創設から90年近くにわたって受け継がれてきた伝統を大切に
今後も自分の道を切り拓く力をもった女性の育成に力を尽くします
家政専門学校を原点とする、戦時中から続く名門学園が母体
本学の歴史は第二次世界大戦中の昭和15年(1940年)11月、行吉國晴(ゆきよし くにはる)とその妻・行吉哉女(ゆきよし かなめ)が神戸市葺合区(現在の中央区)に神戸新装女学院を開学したことから始まりました。
昭和25年(1950年)4月に神戸女子短期大学を、昭和41年(1966年)4月に神戸女子大学をそれぞれ開学し、いずれも行吉哉女が初代学長に就任しました。さらに、昭和61年(1986年)4月には神戸女子大学大学院を開学。これまでの変遷のなか、さまざまな学部・学科・専攻・課程を開設し、それぞれの時代にふさわしい女子高等教育を行ってきました。
現在、本学のキャンパスには須磨キャンパス、ポートアイランドキャンパス、三宮キャンパスの3つがあります。
文学部、教育学部、家政学部を設置している須磨キャンパスと、健康福祉学部、看護学部、心理学部を設置しているポートアイランドキャンパス。2つのキャンパスでは学生がそれぞれ興味のある分野や目指す分野についての学びを深めています。また、三宮キャンパスには研修会や講習会、会議などにご利用いただける「神戸女子大学教育センター」を備え、文化や情報の交流拠点、発信拠点として機能しています。
大切にしてきたのは、女性として「生き抜くこと」と「働くこと」
昨年2025年は本学の母体である学校法人行吉学園の創設から85周年を迎えた記念の年でした。そして今年は神戸女子大学の開学からちょうど60年に当たる年です。これまで長い歴史を歩んできましたが、本学は創設期からの建学の精神を今も変わらず大切にしています。
本学の建学の精神は、「民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする有為な女性を育成する」です。シンプルに言うと、本学は平和と福祉を大切にし、その2つに貢献する女性を育成することに力を尽くしてきたということです。
女子大学のなかには、女性としての品格を重視して教育活動を行う大学は数多くありますが、本学は女性が自立すること、手に職をつけることを目的に、家政分野に特化した教育を行う専門学校としてスタートしました。「女性として生き抜く」ことに加え、「女性として社会で活躍する」ことを大切にしてきました。
これまでにさまざまな分野の学部・学科を開設してきましたが、もちろん先手必勝!とばかりに学部・学科を作ってきたわけではありません。時代ごとの社会のニーズを見極め、先を見据えて慎重に準備を進め、新しい学部・学科を開設してきました。
例えば平成27年(2015年)4月に開設した看護学部も同様です。看護の学校が多くあるなかで本学はなぜ看護学部を開設することにしたのか。看護の分野は女性の特性を活かし、高度化・複雑化する医療・社会のニーズに応えるために、学部設置が本学にとって必然であると考えたためです。
私は本学に赴任する前は公益社団法人日本看護協会で看護教育の大学化を推進するという役割を果たしてきました。その経験のなかで、看護分野は4年間以上掛けてしっかり学ばなければならない分野であることを痛感していました。
また、私自身、専門学校を卒業して看護師の資格を取得しました。専門学校で学ぶなか、看護について、社会についてもっと知りたい。そのようなジレンマを感じることがありました。そこで卒業後に看護師として働きながら大学経済学部に進学し、知りたかったことを自ら調べ考える、理解するという学びの喜びを経験することができ、学び続ける習慣がついたのです。
資格を取得するための教育という点では、専門学校も大学もそれほど大きな違いはありません。例えば看護専門学校でも、英語やドイツ語で書かれたカルテを読むために、カルテで使われる英語やドイツ語について学ぶ機会はあります。ただし、十分な時間を掛けたとは言えないのが実情です。
大学での学びの大きな特徴の一つは「教養教育」が充実しているということです。その教育の下、自分で課題を見つけ、自分で解決していく「課題設定力・解決力」を修得する機会があります。そのなかで広い視野、そして「考える力」が身につきます。
看護師、介護福祉士、社会福祉士といった専門職では、それぞれの専門的な知識に加え、人としての力が強く求められます。人と向き合い、深く関わるためのコミュニケーション能力が必要です。それを身につけるためにも大学で学ぶ意味は大きいと考えています。
厳しい時代でも本学の果たすべき役割が変わることはありません
昨今、女子大学は激動、激変の時代に突入しています。全国の女子大学では入学者の募集停止や男女共学化を行う大学も増えています。この厳しい時代のなかで本学はどのような役割を果たしていくべきなのでしょうか。
それは今も昔も変わらず、「学び続ける女性を育てる」ということです。人として、職業人として、常に学び続け、チャレンジし続け、自分の道を切り拓く力をもった女性を育てるということです。
高校生や大学生の皆さんには常に社会への関心、人への関心をもってほしいと思います。今の自分で満足してしまわないことも大切です。次の10年後、20年後、自分はどうなっていたいかをイメージし、普段から一歩一歩着実に努力してください。生涯にわたって学び続け、新たなチャレンジをし続けてほしいと思うのです。そのことがより良い人生につながっていきます。
高校の先生方も高校生の皆さんの「好奇心の芽」を大事にされていると思います。これからも生徒の皆さんの好奇心をくすぐり続け、広い視野で社会全体を見ることができるような教育を続けていっていただきたいと思います。本学が責任をもって先生方の思いを受け継ぎ、本学での学びにつなげ、生徒の皆さんの可能性を大きく広げられるよう、育成していきます。
世界に開かれた国際都市・神戸に立地する大学として、本学はこれからも変わらず、学び続ける学生、チャレンジし続ける学生を育成していきます。未来の社会をつくっていく若者たちをいっしょに育てていきましょう!

【Profile】
神戸女子大学 学長 洪 愛子(こう あいこ)氏学位:医学博士、看護学修士、経済学士
専門分野:感染管理、医療管理
【学歴】
1995年3月、大阪市立大学経済学部卒業
2000年3月、東京医科歯科大学大学院医学系研究科保健衛生学専攻修士課程修了
2004年3月、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科環境社会医歯学系専攻博士課程修了
【職歴】
1980年4月~1996年1月、大阪大学医学部附属病院勤務
1996年2月~2000年3月、ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社勤務
2000年4月~2017年6月、公益社団法人日本看護協会勤務
2017年7月~、神戸女子大学勤務
2019年4月~2023年3月、神戸女子大学看護学部長
2023年4月~2025年3月、神戸女子大学・神戸女子短期大学副学長
2025年4月~現在、神戸女子大学・神戸女子短期大学学長
【神戸女子大学(スタディサプリ進路)】
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