教えて!高校の条件整備はどう議論されるの?

 新学期が始まりました。2024年度の高校は新学習指導要領の完成年度に加え、学校規模の縮小で教職員数も減り、忙しさが増すばかりです。いま中央教育審議会では働き方改革の議論が大詰めのようですが、どうも義務教育制度に係る内容が中心のようで、高校は置いてきぼりになっている気がしてなりません。今後、高校の条件整備は改善が見込めるのでしょうか。

 中教審で働き方改革を中心に論議しているのは「質の高い教師の確保特別部会」ですが、高校に関しては「個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会」の下に「高等学校教育の在り方ワーキンググループ(WG)」が2022年11月に設置され、23年3月に論点整理、9月に中間まとめを行っています。

 今月9日、2カ月半ぶりに開催された第11回会合のテーマは「高等学校教育をめぐる最近の動向について」でした。まず文部科学省事務局が、中間まとめを踏まえた制度改正や24年度予算、高校段階の教育費負担軽減に関わる国と地方の現状などを説明。その上で、高校教育の質の向上や修学支援施策について、広く意見を求めました。  すると委員からは、修学支援はもちろん、施設整備、専門高校の振興策、人的配置の充実、少子化の加速と地域の中の高校、教員研修など、さまざまな課題が挙がりました。これに対して主査の荒瀬克己・教職員支援機構理事長(中教審会長)は、議論を整理して優先順位も付けながら議論を続けたい考えを表明。今後、事務局と相談しながら進め方を決めていくことになりました。

 なぜこんな漠然とした進行をしているかというと、WGにしても、その「親部会」である学校教育特別部会にしても、明確な諮問があったわけではないからです。同部会は22年1月の初等中等教育分科会で突然、設置が決定。しかも2月の初会合での冒頭あいさつは、通例の初等中等教育局長ではなく、事務方トップの義本博司・事務次官(当時)でした。文科省がこの部会をいかに重視しているかがうかがえます。  というのも同部会が事実上、内閣府「総合科学技術・イノベーション会議」(CSTI(システィー)、議長・岸田文雄首相)への「応答」(当時の内閣府担当者)として設けられたからです。ただし文科省としては他府省の要請という格好を取らず、あくまで21年1月の中教審答申「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~」(令和答申)の着実な実施を目指すためという位置付けにしたわけです。

 CSTI「政策パッケージ」(22年6月決定)では、府省の垣根を超えて教育改革に取り組み、それを「2027年」と見込まれる指導要領の次期改訂と連動させるという構想を描きました。同部会は、そんな大きな改革の司令塔役を中教審で担っているのです。ただし部会の先導役は、昨年12月に中間まとめを行った義務教育WGが主に担う気配です。  19日に開催された教師確保特別部会の審議まとめ素案には、▽総合的な探究の時間を教育課程の基軸に据えて学びの充実が求められており、生徒の多様な興味・関心に沿った探究活動を支援するための学校内外のコーディネートを担う教職員の配置が必要だ▽新しい普通科の設置も含めた改革の実施状況等も見据えた上で、より専門的な検討を行う必要がある――という、高校関係者にとって注目すべき一節が入っていました。

 義務制に比べて条件整備の論議が遅れている高校について、今後の高校WGでどのような「専門的な検討」が行われるか、注視していく必要がありそうです。

【profile】
渡辺敦司(わたなべ・あつし)●1964年北海道生まれ。1990年横浜国立大学教育学部教育学科卒業。同年日本教育新聞社入社、編集局記者として文部省、進路指導・高校教育改革など担当。98年よりフリーの教育ジャーナリスト。教育専門誌を中心に、教育行政から実践まで幅広く取材・執筆。近刊に『学習指導要領「次期改訂」をどうする―検証 教育課程改革―』(ジダイ社)。
教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説 http://ejwatanabe.cocolog-nifty.com/blog/