楠木先生の、キャリアガイダンス編集部 留学日記#6
「学校の『あたり前』を見直す」

Career Guidance Vol.452が発刊された。特集のテーマは「AIとどう向き合うか」。

私自身、AIが生活に浸透してきているのを実感する中、本誌の取材や編集を通じて、AIとの向き合い方を自分なりに言語化しておく必要があると強く感じた。AIの教育利用を考えるみなさんの「AI観」を是非、聞いてみたい。

AI技術に限らず、情報化社会の進展とともに、子どもたちの学び方や教員の業務効率化など、学校生活が大きく変わりつつある。
GIGAスクール構想の実現に向けて、一人一台端末の普及は進んだ。一方で、私自身はまだまだ端末を利用した教育活動を実践できていないと痛感している。今一度、ICT機器の効果的な利用を目指して、今までの「当たり前」を見直し、より便利に、よりワクワク・ドキドキを演出できる学校にするため、実践したいことをまとめてみた。

1.オンライン授業(遠隔授業)の充実
遠隔授業を充実させるメリットはたくさんある。
・荒天時の対応(公共交通機関の計画運休による自宅待機時にも学びの機会は提供できる)
・他者との交流(多くの知恵を持つ社会の力を借りながら、子どもたちの学びに伴走する教室でありたい) など。
先日開催された民間企業研修の成果報告会でも、民間企業ではオンライン会議やチャット機能の導入が進んでおり、多くの人が時間と空間を超えて共同作業していると感じた。一方で、学校での実践に向けては、通信環境の整備や情報リテラシー教育など、検討すべきことは多い。

2.ペーパーレスによる業務効率化
オンライン授業の実現や業務効率化を目指す中で、ペーパーレス化は非常に有効であると感じる。リクルートで勤務して思うことは、データ共有の便利さ、起案・回覧の速さ、過去資料の検索のしやすさだ。紙保管の場合に比べて圧倒的に早い。最近電車内でタブレットやPCなどの電子端末を用いて勉強している高校生が多いことに驚いた。そして教科書などの荷物が少ないことに。私が気づかないところで、子どもたちの学び方が大きく変化している。毎日、車で通勤していた時には気づかなかったが、学び方の変化は確実に進んでいると実感する。ただ一方で私自身は、まだまだ紙文化の人間である。毎日日記を手書きし、やることリストは手帳に残す。電子書籍には慣れず、自宅は書籍であふれている。先日受講した研修会の影響もあり、グラフィックレコーディングの練習を始め、ますます手書きする機会が増えた。ペーパーレスの実現に向けては、メリット・デメリットはありそうだが、私たち教員(もしくは学校という組織)が、思い切って学び方や働き方を変えてもいいのではないかと感じる。実は今後困るのは生徒ではなく、私たち教員なのかもしれない。

3.メタバース技術の教育利用
遠隔授業の普及が進むと、メタバース技術の教育利用も増えそうだ。メタバース技術を利用した不登校支援が始まり、すでに大学のオープンキャンパスや文化祭への応用も進んでいる。まだ私はメタバース技術に出会っていないが、いずれ私自身も実験や観察もメタバース空間上で実施するときが来るのだろうか。「実験は学校でしかできない」と今は思っているが、この「当たり前」も、もうすぐ見直しが必要になるのかと危機感を感じる。

GIGAスクール構想の実現に向けた「これからの学校」についての想像は尽きることはない。
考えを膨らますたびに、「学校において“本当に”必要なものは何か」という核心を問われている気がする。

Career Guidance Vol.452の「AIとどう向き合うか」を考えると同時に、「社会の変化とどう向き合うか」は、今一度自分なりに整理したい。

毎日の気づきや心境の変化を綴る日記。さて、この先どんな気づきがあるだろう?


【Profile】
楠木 翔(くすきしょう) ●静岡県公立高等学校教諭。専門は理科(化学)。
2024年4月より民間企業等長期派遣研修生としてキャリアガイダンス編集部に出向中。  

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