教えて!中教審2諮問の『論点整理』後は?

 中央教育審議会に対する二つの諮問(昨年12月)を受けた「論点整理」が19日に固まったといいます。とりわけ学習指導要領の改訂内容は、学校現場にとっても関心事です。今後、どのような審議が行われるのでしょうか。

 「次期指導要領を巡る教育課程企画特別部会(企特部会)の動向は、本欄でも折に触れてお伝えしてきました。今月5日の第12回会合で論点整理「素案」を検討した後、19日夕方の第13回会合で「案」を大筋で了承しました。正式には25日の教育課程部会に報告し、必要があれば修正を加えた上で正式な論点整理となります。
 論点整理案では、改訂論議を貫く方針として①「主体的・対話的で深い学び」の実装(Excellence)②多様性の包摂(Equity)③実現可能性の確保(Feasibility)――を掲げ、生涯にわたって主体的に学び続け、多様な他者と協働しながら自らの人生を舵(かじ)取りすることができる、民主的で持続可能な社会の創り手を「みんな」で育むとしています。

 実は「案」が取れるのに先立つ24日、外国語ワーキンググループ(WG)総則・評価特別部会が初会合を開催しています。以降、▽情報・技術WG(25日)▽社会・地理歴史・公民WG(26日)▽特定分野に特異な才能のある児童生徒に係る特別の教育課程WG(同)――など、続々とWG等がスタートします。各教科の「中核的な概念」がどう設定されるのかなど、現場教員にとっても無視できません。
 一方、養成部会は19日午前に開催された会合が、諮問後10回目となります。論点整理案のポイントは▽現在の教員免許制度が担保している教師養成の質を落とすことなく、質向上と量的確保の両立を⽬指す▽教師の育成は大学全体で行い、共通で学ぶ内容は厳選して学生が強みや専門性を高める▽一人でも多くの優秀な者が教職を目指すよう、単位数の見直しも検討する▽退職教師等が授業をカバーする日本版「サプライティーチャー」(英国イングランドの制度)の仕組みを検討する▽現職教師等の研究・研修休暇(サバティカル)を検討する▽大学院で免許が取得できる仕組みを考える――などです。

 まず今月1日の第9回会合に最初の「案」が示されたのですが、「記載されていないアジェンダ(課題)」(部会長の秋田喜代美・学習院大学教授)についても意見が続出。「(目的と手段の)主客が逆転している」(企特部会主査も務める貞広斎子・千葉大学副学長)との指摘もあり、秋田部会長が構造化とコンセプトを明確にするよう文部科学省事務局に要請しました。

 第10回会合に再提出された「案」には、総論に当たる「本論点整理の位置付け」が付け加えられました。諮問文の「多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成を加速するための方策」が2021・22・24年の各答申の延長線上にあることや、企特部会と「軌を一にして議論を行ってきた」ことを強調しています。
 こうした修正に、出席した委員からは賛意が続出。養成部会と企特部会の委員を兼任する秋田部会長・貞広主査とも、両部会が連動して議論できていることにお墨付きを与えました。一方で欠席した委員からは「『働きがい』の位置づけの視点が弱い」「(免許取得の負担軽減が)教員の質向上につながる保証はない」などと指摘する文章も提出されており、なお答申までには議論が必要なようです。
それでも「教職課程・免許・大学院課程WG」(幼児教育、特別支援教育、養護教諭・栄養教諭の各作業部会を付設)と「大学院における社会人等の免許取得に資する新教育課程WG」の設置を決め、具体策を詰めることになります。

■教育課程部会>各教科等の専門部会等の今後のスケジュール(予定) https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/004/gaiyou/mext_00008.html

【profile】
渡辺敦司(わたなべ・あつし)●1964年北海道生まれ。1990年横浜国立大学教育学部教育学科卒業。同年日本教育新聞社入社、編集局記者として文部省、進路指導・高校教育改革など担当。98年よりフリーの教育ジャーナリスト。教育専門誌を中心に、教育行政から実践まで幅広く取材・執筆。近刊に『学習指導要領「次期改訂」をどうする―検証 教育課程改革―』(ジダイ社)。
教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説 http://ejwatanabe.cocolog-nifty.com/blog/