教えて!『免許改革』で教員人気は回復するの?

 文部科学省が、教員免許状の取得単位を大幅に削減することを検討しているという報道がありました。確かに教員不足は高校でも深刻で、なり手のすそ野を広げたいという意図は理解できなくもありません。しかし、教員に求められる知識や能力も増大しています。どういう議論になっているのでしょうか。

 文科省のまとめによると、2025年度の公立学校教員試験で高校の採用倍率は小学校(2.0倍)ほどではないものの3.8倍と過去最低を更新。2倍台の県や教科(国語など)もあり、もはや採用試験だけで教員の高い質を確保できる状況にはありません。
 中央教育審議会では現在、学習指導要領の改訂論議と並行して、もう一つの諮問事項である「多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成を加速するための方策について」を審議しています。昨年9月に教員養成部会が「論点整理」をまとめて教員の質と量の確保の両立を目指す方針を示した後、ワーキンググループ(WG)や学校種別の作業部会を設置して具体的な検討を行っています。

 養成部会では一時、免許状の標準を「2種免許相当」にするという文案が示されたものの、委員から質の低下を心配する意見があり、あっさり削除されたことがありました。論点整理では「教師養成の質を落とすことなく」「教員免許取得に至る学びを再構築の上、改めて標準的な教員免許状として位置付け、その上で、より高い専門性は教職大学院で確保する」という、一読してもよく分からない提言になっていました。
 「教職課程・免許・大学院課程WG」の中間まとめ案(昨年12月18日)で、その具体的な内容が明らかになりました。高校を例に取ると「教科及び教職に関する科目」の単位数を現行の59単位から29単位程度に絞る一方、20単位程度を「強み専門性」として大学や学生自身の自律的なカリキュラムデザインに委ね、計49単位程度としたい考えです。養成段階から強み専門性を身に付けるので質は落ちず、採用後の研修で更に伸ばすことで多様な教師集団による「チーム学校」の機能を強化して教育の質も向上できる……という考えです。強み専門性としては▽教科の専門性▽指導法や児童生徒理解▽他の免許や資格等――を例示しています。
 開放制(非教員養成系)であれば、在籍する学部・学科の単位が教職課程に算定できることになります。学級担任制の小学校はともかく、教科の高い専門性が期待される高校にとっては朗報と言えます。実質的に教職課程の負担が軽減されるので、学生にも歓迎されるでしょう。ただし単位を取るだけでなく、教職に就いた時どう生かすかも考えながら学修するという主体性が求められることになります。
 重要なのは、現行や次期の指導要領で求められているような児童生徒の学びと、教師の学びは「相似形」であるべきだとの認識が背景にあることです。そうして「学び続ける教師像」が、養成段階の学生はもとより現職教員にも求められる、というわけです。

 それでも教職の必修単位が実質的に大幅削減されるわけですから、採用倍率の低下と相まって質低下の疑念も持たれかねません。採用後の研修機会拡充や自主研修の余裕を生み出すような条件整備が不可欠で、教員人気を回復するためにも教育行政の責任は重くなるはずです。学校現場や個々の教師に任せるだけでは、絵に描いた餅になりかねない……というのは心配のし過ぎでしょうか。 。


【profile】
渡辺敦司(わたなべ・あつし)●1964年北海道生まれ。1990年横浜国立大学教育学部教育学科卒業。同年日本教育新聞社入社、編集局記者として文部省、進路指導・高校教育改革など担当。98年よりフリーの教育ジャーナリスト。教育専門誌を中心に、教育行政から実践まで幅広く取材・執筆。近刊に『学習指導要領「次期改訂」をどうする―検証 教育課程改革―』(ジダイ社)。
教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説 http://ejwatanabe.cocolog-nifty.com/blog/