教えて! 正式策定された『高校グランドデザイン』は?
文部科学省が「高校教育改革に関する基本方針(グランドデザイン)」 を正式に発表したというニュースがありました。昨年11月の「骨子」 と違いはあるのでしょうか。2025年度補正で3000億円近い予算が付いたということですが、「パイロットケース」ということは一部にとどまり、老朽化にあえぐ公立高校には回ってこないのでしょうか。

骨子はA4で4ページに満たない分量でしたが、「仮称」の取れたグランドデザインは「2040年の未来を担うみなさんへ」と題した冒頭のメッセージを含め21ページにわたるものです。 もちろん①不確実な時代を自立して生きていく主権者として、AI(人工知能)に代替されない能力や個性の伸長②我が国の経済・社会の発展を支える人材育成③一人ひとりの多様な学習ニーズに対応した教育機会・アクセスの確保――という視点は変わりませんが、骨子に「肉付け」がされています。
例えば①では「学びの在り方の転換=New Transformation」と銘打って、探究的・実践的に学びを進める学習観への転換を強調。例えば、次期学習指導要領下で▽地域の特色を生かした課題探究を中核にする大胆な教育課程編成▽探究的な学びを深めたい生徒、丁寧な学び直しをしたい生徒など、生徒集団の実態に応じた対応▽得意を伸ばす、学習内容を自己決定するなど個々の生徒の学習ニーズへの対応――といった観点から、各高校が地域や学校の実態を踏まえた改革を進めるとしています。
高校入試に関して「多様な背景を有する生徒の特性や、『好き』(興味・関心)を育み、『得意』を伸ばし、多様な経験を生かした中学校までの生徒の学びの成果を評価する多面的な入試となるよう、改善が求められる」と踏み込んでいるのも注目されます。
②では「最先端を学ぶ高校の特色化・魅力化=New Excellence」として▽探究・文理横断・実践的な学び▽Society5.0に対応したSTEAM(科学、技術、工学、芸術、数学)教育▽課題解決型学習▽デジタル技術の活用▽インターンシップを含むキャリア教育▽地域の産業界や大学等との連携・協働――などを「文系・理系、普通科・専門学科・総合学科の別を問わず」取り組むとしました。文理コース等の変更も可能にするだけでなく、将来的には文系・理系の区分がなくなることを目指しつつ、生徒の割合を同程度にすることを求めていますから、これまでの「普通科」の在り方に大きな転換が迫られることは必至です。
③では「ニーズに対応した教育機会・アクセスの確保=New Education」として、実情等に応じた学校配置・規模の適正化を求めるとともに、小規模校の特色化・魅力化のための教育条件の改善や学校間連携、課程や学科を超えた学び、遠隔授業の推進も重要だとしています。
支援策に分量の半分を割いているのも特色です。補正予算は「改革先導拠点」が対象ですが、別に「高等学校教育改革交付金(仮称)」を構築するとしています。さまざまな条件は付いているものの、都道府県が策定する実行計画に基づき、広く施設設備の整備に活用できます。事業費は1000億円ですが、地方財政措置のため別途、別途都道府県で予算化する必要があります。
地域活性化など総合政策ともからめながら、今後どのような公立高校の全体像を描くのか。地方自治体の責任と役割は大きいと言えるでしょう。高校改革は、もう個々の高校任せではいられません。
【profile】
渡辺敦司(わたなべ・あつし)●1964年北海道生まれ。1990年横浜国立大学教育学部教育学科卒業。同年日本教育新聞社入社、編集局記者として文部省、進路指導・高校教育改革など担当。98年よりフリーの教育ジャーナリスト。教育専門誌を中心に、教育行政から実践まで幅広く取材・執筆。近刊に『学習指導要領「次期改訂」をどうする―検証 教育課程改革―』(ジダイ社)。
教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説 http://ejwatanabe.cocolog-nifty.com/blog/
