教えて! デジタルも正式な教科書、何が変わる?
政府が、デジタル教科書を正式な教科書と位置付ける法改正案を閣議決定しました。文部科学省の諸会議体でも議論が始まっています。学習指導要領の改訂審議が進む中、高校現場への影響はどうなるのでしょうか。

これまで教科書は、あくまで紙が基本でした。2018年度の改正学校教育法で19年度から「学習者用デジタル教科書」を使った場合でも教科書の使用義務を果たすことにしましたが(21年度からは「授業の2分の1未満」としていた規制も撤廃)、あくまで「教科書代替教材」という位置付けです。内容も、紙の教科書を構成も崩さず載せる「PDF化」が原則です。一方で書き込みや拡大・縮小、書体や色の変更やルビ振り・読み上げなどの機能も使え、困難を抱える生徒にとっても有効です。
文科省は、次期指導要領が小学校で全面実施になると見込まれる30年度からデジタル単独でも正式な教科書として扱えるよう議論を進めてきました。教科書の編集・検定・採択・使用まで4年間が必要なことから、7日に学教法の一部改正案を閣議決定。10日には発行・採択等の指針を検討する会議を発足させ、14日には教科書検定審議会総会と総括部会の合同会議を開催するなど、着々と準備を進めています。
法案が通れば▽紙媒体のみ▽デジタル媒体のみ▽ハイブリッドな形態――という3種類の教科書を、発行者が選択して編集することになります。これまで二次元コードのコンテンツは教材扱いですが、デジタル教科書では二次元コード先なども教科書の一部として検定対象となります。ただ、これによってコストがかさむことも懸念されています。
法改正によって義務教育諸学校は、デジタル教科書も無償給与されることになります。既に国から一部教科のデジタル教科書も提供されており、26年度に発行される教科書のうちデジタルの割合は中学校でも97%に及んでいます。一方、教科書購入が自己負担の高校は59%と、前年度に比べ低下したほどです。高価格のデジタル版は、ますます採択しづらくなるかもしれません。発行者にとっては編集コスト増だけでなく生徒減で需要数も減り続けていますから、義務制よりも多様な高校教科書に寡占化がますます進むことも懸念されます。教科書の定価を認可する国の責任も問われます。
いずれにしても新たな教科書制度の下は、生徒が学びやすく、資質・能力を効果的に育成できるものでなければなりません。「デジタルな形態を含む教科書の発行・採択等の指針に関する検討会議」では、論点として▽学校種や発達段階、教科の特性▽紙やデジタルが効果的な学習場面▽児童生徒が学習目的以外に使用することのないような対応▽健康への影響▽発行者や採択権者に過度な負担が生じないような留意事項▽学校のICT環境や支援体制――などを挙げています。
ところで中央教育審議会の指導要領改訂論議では、高校の単位を2分割して74単位を148「新単位」と読み替え、柔軟な教育課程が編成できるようにする方針を打ち出しています。異なる教科も含めて必履修科目や選択科目を組み合わせて細かく増・減単位することも、学校の判断でできるようにしたい考えです。
各学校では科目設定はもとより、使用する教科書の生徒負担も考慮しながらカリキュラムを編成する作業が求められることになります。生徒のための教育課程編成を行うためにも、やはり予算面も含めた条件整備が欠かせないでしょう。高校の授業料も実質無償化される折、「義務制ではないから」という言い訳は通用しないはずです。
【profile】
渡辺敦司(わたなべ・あつし)●1964年北海道生まれ。1990年横浜国立大学教育学部教育学科卒業。同年日本教育新聞社入社、編集局記者として文部省、進路指導・高校教育改革など担当。98年よりフリーの教育ジャーナリスト。教育専門誌を中心に、教育行政から実践まで幅広く取材・執筆。近刊に『学習指導要領「次期改訂」をどうする―検証 教育課程改革―』(ジダイ社)。
教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説 http://ejwatanabe.cocolog-nifty.com/blog/
