教えて! 国語の文学作品、扱いをどう捉える?
「再び小説重視」「理系にも『文学』促す」――。次期学習指導要領の国語で、こんな科目再編案が検討されていると報道がありました。小説の扱いといえば、現行指導要領で初の教科書検定で共通必履修科目「現代の国語」(標準単位数2単位)に載らないはずの小説が2社に載って大騒ぎとなり、2サイクル目の検定では6社9点と「解禁」された感があります。いったい、どう考えればいいのでしょうか。

13日に開催された教育課程企画特別部会の冒頭、貞広斎子主査(千葉大学副学長)が「(ニュースの)ヘッドラインではうまく議論の趣旨が伝わらない」として、11日の国語ワーキンググループ(WG)について文部科学省事務局の武藤久慶・教育課程課長に説明を求める一幕がありました。
報道の通り国語WGでは「言語文化」を含む共通必履修2科目を「Ⅰ」と位置付け、その上に選択の「標準科目」として各4単位のⅡ科目を新設。一方、「発展科目」として各2単位の▽論説と批評▽対話と表現▽文学と叙述▽古典と文化――を置くことが提案されました。科目名はいずれも仮称で、委員からは対案も示された他、Ⅱ科目が4単位では教育課程を組みづらいとの指摘もありました。
事務局提案で注目すべきは、論理的思考力の育成を重視する現代の国語Ⅰ・Ⅱや論説と批評でも、教材について「文学作品等は科目の趣旨(論理的に表現する等)に合致するかどうかで判断することとしてはどうか」という一文です。これに対して委員からは、小説を文学、論理の両面で多角的に扱えると支持する声もありました。
文科省は、なぜこんな提案をしたのでしょうか。現行の指導要領解説で「文学的な文章を除いた文章」と説明していた現代の国語の扱いについて、教科書検定の現状を追認したかのようにも見えます。ただ、もっと大きな背景には、現行科目の履修バランスが極端すぎるという反省があります。
教科書の需要数(教師用を含む)から現行の選択4科目(標準各4単位)について履修率を算出すると、▽論理国語77%▽文学国語49%▽国語表現16%▽古典探究87%――となります。これについて文科省は「実社会でのコミュニケーション能力の育成を図る『国語表現』が、進学希望者が多い高校で選択されにくい」「国公立理系では『論理国語』と『古典探究』のみ、私立理系では『論理国語』のみの履修にとどまる」と説明しています。要するに大学入試シフトの教育課程編成が、偏りを生んでいるというわけです。
文科省の提案が妥当かどうかはおくとして、改めて生徒の資質・能力育成という原点に立ち戻りましょう。進路選択にかかわらず、幅広い教材に触れて「話すこと・聞くこと」「書くこと」「読むこと」の3領域を偏りなく学ぶことが求められるはずです。とりわけ国語が「読むこと」偏重になっているとしたら、生徒が今後の社会で十分に活躍できるかどうかを考えると問題が残ります。「実用文か小説か」という議論どころではありません。国語に限らず今回の改訂には、基調として「育成すべき資質・能力が、本当に育成できているのか」という問題提起があることに注意が必要です。
ちなみに各WGのまとめは夏にも行われ、パブリックコメント(意見公募手続)も行われる予定です。高校現場からも、積極的に発言する必要があるでしょう。その際も、資質・能力ファーストで考えたいものです。
【profile】
渡辺敦司(わたなべ・あつし)●1964年北海道生まれ。1990年横浜国立大学教育学部教育学科卒業。同年日本教育新聞社入社、編集局記者として文部省、進路指導・高校教育改革など担当。98年よりフリーの教育ジャーナリスト。教育専門誌を中心に、教育行政から実践まで幅広く取材・執筆。近刊に『学習指導要領「次期改訂」をどうする―検証 教育課程改革―』(ジダイ社)。
教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説 http://ejwatanabe.cocolog-nifty.com/blog/
