教えて! 次期指導要領で『情報教育』どう強化?
次期学習指導要領で中学校「情報・技術科」などを新設することが、大きなニュースになりました。高校に触れた報道は少なかったようですが、大学入学共通テストで共通教科「情報」の重みも増す中、どのような影響が出てくるのか気になります。今後の情報教育は、どうなるのでしょうか。

「情報活用能力の抜本的向上」は昨年9月、中央教育審議会の教育課程企画特別部会「論点整理」が打ち出した改訂の目玉の一つです。背景には、生成AI(人工知能)の急速な発展があります。高校教育改革でも「アドバンスト・エッセンシャルワーカー」(デジタル技術も駆使できる生活必須職従事者)の育成がメニューの一つとなっているように、数理・データサイエンス・AI人材の育成は政府を挙げての課題となっています。
現行指導要領では小学校にはプログラミング教育が導入され、中学校の技術・家庭科でもプログラミングを含めた「情報の技術」を扱っています。しかし小学校はプログラミングを体験する程度にとどまっており、中学校でもコンピューターやネットワークの仕組みが十分扱われていないことから、「抜本的向上」が必要だと判断したわけです。
情報活用能力に関しては中教審の情報・技術ワーキンググループ(WG)を中心に議論してきましたが、それを受けて8日の総則・評価特別部会(総則部会)で具体的な標準授業時数案が示されました。小学校の総合的な学習の時間(「総合的な探究の時間」に名称統一予定)に新設する「情報の領域」に第3学年以上で年間最大30コマないし35コマ程度、中学校で技術・家庭科から独立して新設する情報・技術科に第1・2学年で70コマ程度、第3学年で35コマ程度の授業時数が必要だとしています。
注意したいのは、情報活用能力の強化が「情報」の指導にとどまらない、ということです。小学校総合の情報領域は「探究の領域」で、中学校情報・技術科も「情報を基盤とした生産領域」での活用による相乗効果を狙っています。
小中学校でもコンピューターやネットワークの仕組みを学ぶ、と言うと高校の先生ならピンと来るかもしれません。旧課程では「社会と情報」「情報の科学」の選択必履修制だった情報科が、現行指導要領で「情報Ⅰ」を必履修にした上で「情報Ⅱ」を新設したことです。高校生全員に情報の科学的な理解が不可欠になっている、との判断からです。
小中学校で情報技術の学習が強化されれば当然、高校でもそれを前提とした強化が図られることになります。論点整理でも、小中高校を通した育成体系が不明確だったとの課題を指摘していました。
6月25日の情報・技術WGで示された取りまとめ骨子案では、引き続き情報Ⅰ・Ⅱを置く一方、情報Ⅱは実社会の課題を探究的に解決する内容を充実させられるよう、例えば現行の2単位を4単位まで配当できるようにして、データやAIを活用した応用基礎レベルのPBL(問題解決学習)を展開したい考えです。
情報活用能力の育成ではAIそのものを学ぶことはもちろん、メディアリテラシーについても指導を強化することにしています。それらを各教科等の学習と「往還」させて学ぶことも前提とされていますから、事は情報科にとどまりません。社会に出れば情報化の渦に巻き込まれることが必至な生徒に、どのような資質・能力を身に付けさせればいいのかを真剣に考える時が来ています。大学でも文系・理系を問わず数理・データサイエンス・AI教育を必修化する動きが加速していますから、喫緊の課題とも言えるでしょう。
【profile】
渡辺敦司(わたなべ・あつし)●1964年北海道生まれ。1990年横浜国立大学教育学部教育学科卒業。同年日本教育新聞社入社、編集局記者として文部省、進路指導・高校教育改革など担当。98年よりフリーの教育ジャーナリスト。教育専門誌を中心に、教育行政から実践まで幅広く取材・執筆。近刊に『学習指導要領「次期改訂」をどうする―検証 教育課程改革―』(ジダイ社)。
教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説 http://ejwatanabe.cocolog-nifty.com/blog/
