教えて! 『統合的な理解・総合的な発揮』って何?

 学習指導要領の改訂を巡る中央教育審議会の議論が、大詰めを迎えているといいます。教育委員会や管理職からは「統合的な理解・総合的な発揮」がキーワードになるという声も聞こえてきますが、いまひとつふに落ちません。どう捉えればいいのでしょうか。

  2024年12月の改訂諮問は、現行指導要領の浸透が「道半ば」だとの認識を示していました。それを乗り越えるために中教審の教育課程企画特別部会(企特部会)が25年9月の論点整理で打ち出したのが「分かりやすく使いやすい指導要領」であり、そのための「一層の構造化・表形式化・デジタル化」です。

企特部会は4日に開催した第16回会合で、「夏頃」に予定している教育課程部会「審議まとめ」の原案作りに着手しました。とりわけ全教科等に大きな影響を与えるのが「知識・技能(知・技)に関する統合的な理解」「思考力・判断力・表現力等(思・判・表)の総合的な発揮」による指導要領の構造化です。まだ正式な略称はありませんが、ここでは仮に両者を総称して「統理・総発」としておきましょう。

4日の検討案では、主体的・対話的で深い学び(主・対・深)のうち特に具体的イメージがつかみにくかった「深い学び」を実現するため、統理・総発による構造化で全体像を改めて整理する必要性を強調しています。

現在も個別の資質・能力(学習内容)について、とりわけ知・技と思・判・表の一体的育成がイメージしづらいという課題がありました。そこで統理・総発により、資質・能力の深まりを可視化するのだといいます。表形式でも統理・総発は個別内容の上位に置かれ、内容のまとまりごとに「方向目標」として示します。乱暴な言い方をすれば、単元目標の基になるようなものだと考えればいいでしょう。学習評価は、引き続き個別内容の達成状況を対象にします。

4日の会合では、教科等ワーキンググループ(WG)で議論してきた取りまとめ案を原則各1枚にまとめた概要とともに、全教科等の目標や統理・総発、改めて再整理した「見方・考え方」の一覧も配布されました。担当する教科等でどのように変わろうとしているのか、確認してみてはいかがでしょうか。ただし後者は「素案」とされ、審議まとめのパブリックコメント(意見公募手続)や答申を経て、告示までに変更される可能性があります。

これまで解説してきたのを読んでも、まだふに落ちないという向きもあるでしょう。4日の検討案でも、構造化によって指導要領が「精緻」化されることを認めています。ただし、それは指導要領の「進化」でもあると位置付けています。

ただ、AI(人工知能)が飛躍的に発展する時代にあって「意味理解を伴わない丸暗記や、定型的な知識の当てはめ、知識の量だけを過度に競うような評価の在り方等の価値が一層低下した」(検討案)ことも確かです。今こそ単元等で生徒一人一人に「確かな知識」を「身体化(記号接地)」(同)させることが、ますます求められることは間違いありません。

なお統理・総発は諮問段階で「中核的な概念等」とされていたもので、論点整理後の検討過程で「高次の資質・能力」と言い換えられていました。しかし今後は、できるだけ新たな用語を避けるため「高次の」は使わないと明言しています。

【profile】
渡辺敦司(わたなべ・あつし)●1964年北海道生まれ。1990年横浜国立大学教育学部教育学科卒業。同年日本教育新聞社入社、編集局記者として文部省、進路指導・高校教育改革など担当。98年よりフリーの教育ジャーナリスト。教育専門誌を中心に、教育行政から実践まで幅広く取材・執筆。近刊に『学習指導要領「次期改訂」をどうする―検証 教育課程改革―』(ジダイ社)。
教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説 http://ejwatanabe.cocolog-nifty.com/blog/