教えて! 公立高校の働き方は「改革」できてるの?

 文部科学省が、公立学校の勤務実態について2024年度の調査結果を公表しました。小中学校の残業時間は改善したと報道されていますが、依然として高止まりしているとの指摘もあります。肝心の高校は、どうなっているのでしょうか。そもそも働き方改革が進んでいるという実感が持てないのですが……。

 調査結果によると、高校教諭のうち時間外在校時間(残業)の上限とされる1カ月45時間を下回る者の割合は72.6%で、前年度比0.8ポイント増に改善しました。しかし部活動の地域移行が進められている中学校が60.5%と2.9ポイント増だったのに比べれば、改善の余地が少ないのかもしれません。

45時間超~80時間以下の割合は0.7ポイント減の21.8%となったものの、過労死ラインとされる80時間を超えるのは0.1ポイント減の5.6%ですから、とても「改革」が進んだとは言えない状況です。

 新たに年間360時間以上の割合を調べたところ、48.4%でした。同様に残業の月平均を算出すると、高校は33.4時間になりました。依然として中学校(64.3%、40.4時間)の方が厳しいものの、全教科担任が基本の小学校(47.4%、30.6時間)に近い数値です。

 ところで今回の調査の名称は、「教育委員会における学校の働き方改革のための『見える化』調査」といいます。前年度までは「教育委員会における学校の働き方改革のための取組状況調査結果」と呼んでいました。全国の進捗状況を明確にして取り組みを促すだけでなく「各教育委員会・学校が自身の取組を俯瞰(ふかん)する」ことを狙ったものです。

 注意したいのは「教員勤務実態調査」とは違う、ということです。同調査は名称通り教員個人を対象に実施し、業務ごとに分刻みで勤務の実態を把握するものです。06年度に40年ぶりで実施されて以来、16年度、22年度と、改革を検討する折に触れて実施されてきました。義務教育費国庫負担制度の検討が優先されたため、高校は22年度やっと調査対象に加わりました。調査項目が多い上に一定期間、教員に手間をかけねばならず、集計や分析も大変なため、そう頻繁に実施することは困難です。

 その間を埋めるのが、教委対象の今回調査です。ただし教委が教員の「業務量の適切な管理」「健康及び福祉の確保」を図る目的の調査ですから、どうしても教員に直接聞いた勤務「実態」調査とズレが生じることは否めません。しかも結果を受けて都道府県教委等が具体的な改善策を講じなければ、何も動きません。

 公立高校を巡っては、生徒減で統廃合が進んでいるのに加え、授業料の実質無償化で私立人気が各地で高まっており、ますます窮地に立たされることは必至です。文科省が高校改革に乗り出していますが、要は各校に人材育成を先導する改革を迫るものです。

現在、学習指導要領の改訂が中央教育審議会で検討されていますが、各教科等で探究学習が一層重視されるとともに、科目統合をしやすくなるなど柔軟な教育編成がしやすくなる一方、授業研究や教材研究の時間が今まで以上に必要となることは間違いありません。

教委には、そんな改革全体を見渡した上で高校教育政策を進めてもらいたいものです。国も働き方改革を「全ての教育委員会が総合的に取り組む段階から、解像度を上げて、具体的な取組に向けた支援と助言を行っていく段階に移行」(24年8月の中教審答申)と位置付けていますが、現場任せにするばかりで本当にいいのでしょうか。

【profile】
渡辺敦司(わたなべ・あつし)●1964年北海道生まれ。1990年横浜国立大学教育学部教育学科卒業。同年日本教育新聞社入社、編集局記者として文部省、進路指導・高校教育改革など担当。98年よりフリーの教育ジャーナリスト。教育専門誌を中心に、教育行政から実践まで幅広く取材・執筆。近刊に『学習指導要領「次期改訂」をどうする―検証 教育課程改革―』(ジダイ社)。
教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説 http://ejwatanabe.cocolog-nifty.com/blog/