教えて!1000ページの次期指導要領『審議まとめ』どう読む?

 中央教育審議会の「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」が出たと聞いて文部科学省のホームページ(HP)をのぞいたのですが、4分割されたPDFファイルの最初だけでも400枚あって、しかも字がぎっしり詰まっていることに閉口しました。多忙なこともあって、なかなか読むことができません。現在パブリックコメント(意見公募手続)も始まっているということですが、理解のためのヒントはあるでしょうか。

  審議まとめは3部構成で①次期学習指導要領の基本的な方向性88枚②基本的な方向性を踏まえた各教科等の方向性310枚③資料編660枚――から成り、表紙と目次を加えると全1060枚になります。

特に第1・2部はプレゼンテーション形式2段組みの文章が主で、それが400ページ近くにわたっています。10年前の前回改訂(現行指導要領、A4形式)と比べても文字数は2倍、分量(今回の1段を前回の1ページと換算)は3倍を超えます。前回は審議まとめを決定した段階で「次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめのポイント」資料(18枚)がありましたが、今回はまだ作られていません。

素案段階だった8月31日の教育課程企画特別部会(企特部会)で主査の貞広斎子・千葉大学副学長は、オンライン傍聴者を念頭に「千ページ超えということで困惑される方もいるだろう」と前置きしながら「(教科等も含めて)300人以上の議論の成果だ」と強調していましたが、審議まとめを正式決定した10月5日の教育課程部会(貞広副学長は副部会長)では「やっぱり多い」と思い直したといい、文部科学省事務局にパブコメまでにポイントが分かる動画を作成するよう要請したほどでした。

 翌6日14時に始まったパブコメでは、本体の他に60枚から成る「抜粋資料」が付きました。資料編の「ポンチ絵」(概念図)などを交えて構成したもので、基本的な考え方までが40枚、教科等が20枚となっています。その後の諸会合でも事務局は60枚版を使って説明していますから、まずはポンチ絵にじっくり目を凝らして全体像を把握した上で、ご自身の担当する教科等(基本1枚)を読み込み、必要に応じて本体を参照するのが早道でしょう。

 まず審議まとめで確認したいのは、次期指導要領の基盤となる考えとして①主体的・対話的で深い学びの実装②多様性の包摂③実現可能性の確保(抜粋資料4ページ)――を示した上で「自らの人生を舵(かじ)取りする力」と「民主的で持続可能な社会の創り手」の育成(「『好き』を育み、『得意』を伸ばす」×「当事者意識を持って、自分の意見を形成し、対話と合意ができる」、同5ページ)を打ち出していることです。これらは全教科等を貫く理念として「実装」する必要があり、そのための手法が知識・技能の「統合的な理解」と思考力・判断力・表現力等の「総合的な発揮」による「深い学び」の具体化(同7ページ)です。

 主な各教科等の「統合的な理解・総合的な発揮」を一覧にした、いわゆる「マンダラチャート」(同8ページ)も重要です。これを横目でにらみながら教育課程全体でカリキュラム・マネジメントを行い、各高校のスクール・ミッション/ポリシーに基づいた資質・能力をどう育成するかが問われます。

 なお、パブコメは11月5日の深夜まで受け付けています。大変ですが、抜粋資料だけでも読み込んで意見を寄せてはいかがでしょうか。貞広主査も「現場にはいいことも悪いこともコメントいただきたい」(10月5日)と呼び掛けていました。

【profile】
渡辺敦司(わたなべ・あつし)●1964年北海道生まれ。1990年横浜国立大学教育学部教育学科卒業。同年日本教育新聞社入社、編集局記者として文部省、進路指導・高校教育改革など担当。98年よりフリーの教育ジャーナリスト。教育専門誌を中心に、教育行政から実践まで幅広く取材・執筆。近刊に『学習指導要領「次期改訂」をどうする―検証 教育課程改革―』(ジダイ社)。
教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説 http://ejwatanabe.cocolog-nifty.com/blog/