株式会社バンタン 取締役 吉岡忠樹氏

目指すのは「世界で一番、社会に近いスクール」
60年以上問い続けてきた実践教育の価値

若者の情熱を応援するという、変わらぬ思い
 1965年に東京・恵比寿に「バンタンデザイン研究所」を誕生させて以来、私たちバンタンは、「世界で一番、社会に近いスクールを創る」というビジョンの下、ファッション、ヘアメイク、ビューティ、グラフィックデザイン、映画映像、ゲーム、eスポーツ、アニメ、パティシエ、調理、プログラミング、音楽ほか、クリエイティブ領域を中心とした15のスクール(2027年開校含む)を、東京、大阪、名古屋、福岡、札幌、仙台の各ターミナル近くで展開しています。

 2014年12月にKADOKAWAグループの一員となったことで、同グループが有する豊富なコンテンツを教育現場で活用できるようになったと同時に、最先端のITインフラや各種イベント、産学協同プロジェクトなどを通して、これまでバンタンが掲げてきた、プロのクリエイター講師による「実践教育」をより強固に進められるようになりました。そうしたなかで、デジタル・エンタメ領域を中心に次々と新たなスクールを開校。それぞれ、中等部※1、高等部※2、専門部、大学部※3に加えて、社会人向けのキャリアカレッジを設けるほか、近年は、日本各地の既存の専門学校とのアライアンスを積極的に推進しています。

 私自身、2001年にバンタンに入社以来20年以上が経ちました。その間、会社形態や事業規模の変更なども経験しましたが、バンタンの教育事業における根幹の想いにブレはありません。それは「好きなことを仕事にしたい」「ものづくりに関わりたい」など、プロのクリエイターを目指す若い人が第一歩を踏み出す、その背中を押すという姿勢です。そもそも、バンタンという名は、フランス語で20歳という意味をもつVingt ansという単語を基に、創業者が命名したものです。20歳は若さやエネルギーの象徴のような年齢であり、若者がもつ無限の可能性を信じ、応援したい。そうした想いがスクール名に込められているのです。

 だから私たちは、いわゆる生徒のことを、敬意を込めて「メンバー」と呼んでいます。教える側・教わる側という関係というよりは、これからの日本の産業や文化を共に盛り上げ、新しい価値を作っていく仲間でありたいと考えているからです。

100%現役のプロクリエイター講師から学ぶ「実践教育」の価値
 先ほどから、学校ではなく「スクール」と呼んでいるように、私たちが運営するのは、いわゆる認可された専門学校や高校、大学ではありません。運営主体も、学校法人ではなく株式会社です。なぜ、創立以来「学校法人の申請をしない」というポリシーを貫き、“株式会社立”というスタイルにこだわり続けてきたのか。それは、私たちが何よりも大切にしている「実践教育」を追求するうえで、現状それが、最も適した形だと考えているからです。

 理由の一つは、トレンドや技術の移り変わりが激しい業界において、時代の先端を行く教育を、できるだけ速くカリキュラムに反映させられることです。認可を受けた学校には、教育の質と継続性を担保するための手続きがあり、それは学生を守るための大切な仕組みです。ただ、私たちが扱う領域では、1年前の常識が通用しなくなることも珍しくない。だからこそ、カリキュラムを随時組み替えられる自由度を手元に置いておきたかった。それだけのことです。
 もう一つが、現役のプロクリエイターによる授業こそが、バンタンにおける実践教育の核と考えている点です。専修学校の設置基準では、必要とされる教員数の半数以上を基幹教員とすることが求められます。もちろん、専門学校の皆さまもその枠組みのなかで現役の実務家を教員として迎えておられますし、提携させていただいている各校の先生方の実力は、間近で見てきたからこそよくわかっています。そのうえで私たちが選んだのは、授業を担当する講師を100%現役のプロクリエイターで構成するという、ある意味で極端なやり方でした。どちらが上ということではなく、役割が違うのだと思っています。
 というのも、クリエイターを目指す若者にとって、知識や技術だけでなく、「自分は何をしたいのか。どういう価値を世の中に提供したいのか」を、自分自身で考えることも大切だと考えているからです。だからこそバンタンでは、第一線で活動するプロの仕事への向き合い方や考え方に、日常的に触れられる環境を、教育の大きな要素として位置づけています。
 しかも、私たちが業務委託契約を結ぶ1200人近くのプロのクリエイター講師は、生徒によるアンケート評価や出席率のほか、バンタン独自の基準を下回ることは許されません。結果として、毎年1割近くの講師が入れ替わるなど、徹底した“品質管理”が行われていることになります。このシビアさこそ、業界から「バンタンの教育は信頼できる」と認めていただける理由の一つになっています。

KADOKAWAグループのメリットを活かし、多様な選択肢と「安心感」を提供
 一方で、スクールという立場は、高校の卒業資格や、専門士の称号、学士などの学位が得られないことも意味し、その点に不安をおもちの方がいるのも事実です。そこで、実践教育のクオリティを落とすことなく、学歴面での安心感をもたらすための多様な選択肢を用意しています。

 その一つが、KADOKAWAとドワンゴが設立した関連スクールである「学校法人角川ドワンゴ学園」が運営する通信制高校「S高等学校」との連携です。これにより、高等部のメンバー(生徒)は、バンタンの各スクールで実践教育を受け、空き時間を使いながら、高校卒業資格を取得することが可能になりました。

 大学卒業資格についても、星槎大学通信制課程や産業能率大学通信教育課程、京都芸術大学通信教育部など、連携先とのダブルスクールに加え、2025年4月には、グループ会社であるドワンゴと日本財団の連携により設立された通信制大学「ZEN大学」が開学したことで、大学との併修制度をより一層整えることができました。

バンタン独自の新規コースやスクールの立ち上げ
 また、「世界で一番、社会に近いスクールを創る」というビジョンを達成するため、2026年4月には、ユニバーサルミュージック合同会社との提携の下、「バンタンミュージックアカデミー」を開校。2027年4月には、日本を代表するeスポーツチームZETA DIVISION監修の下、「ZETA DIVISIONゲーミングアカデミー」を開校する予定です。

日本全国の専門学校との新たなアライアンス
 こうした新規スクールの立ち上げに加え、近年新しい試みとして実施しているのが、全国各地にある既存の学校法人(専門学校)との提携です。例えば、学校法人菅原学園「専門学校デジタルアーツ仙台」と提携した新学科の開設(2027年4月予定)。学校法人東京メディアアカデミー「専門学校 東京声優・国際アカデミー」と提携した「エンタメ総合科」の開設(2027年4月予定)。

 協業・提携のスタイルはさまざまです。地元で長年、地に足の着いた教育を行い、信頼を築いてこられた専門学校の皆さまならではの教育方針や校風と、バンタンがもつ最新の実践教育のカリキュラムや、コース・スクールの設立ノウハウなど、互いの強みや異なるカルチャーを掛け合わせることで、思いもよらない相乗効果が生まれることを期待しています。

 また、地方の若者が直面している経済的な負担、いわゆる「上京の壁」に対する課題解決意識や、「地域格差を壊す」という社会的意義ももちあわせています。というのも、私たちのスクールは、東京、大阪、名古屋など大都市圏にあり、仮にバンタンで学びたいと思っても、都心での生活費を考えると諦めざるを得ないケースも少なくないでしょう。しかし、今の時代、特にクリエイティブ職は、デジタルやネットを活用することで場所に縛られない働き方も可能です。そう考えたとき、地元に居ながらにしてプロを目指せる環境は、これまでにない選択肢になるはずです。

 私個人の話をすれば、このように年々、新規のスクールや提携先の専門学校が増えていくことで、卒業式・入学式のシーズンは大忙しです。けれど、緊張感にあふれた入学式と違い、卒業式の会場で成長したメンバーを見届けたときの喜びは、何物にも代えられません。特に、メンバーから直接、感謝の言葉をかけてもらう瞬間は、苦労が報われた気がします。そうした教育者としての感情、あるいはやりがいに、学校法人も株式会社も差はありません。

 式辞では私はよく、大切な3つのことについて話します。行動することの大切さ、仲間との繋がりをもつことの大切さ。そして、「好き」という気持ちや、湧き上がるモチベーションをもち続けることの大切さです。将来、壁にぶつかることもあるでしょう。そうしたとき、周囲に理解されなかったり、反対されたりしながらも、バンタンで将来へ向けた第一歩を踏み出したときの「好き」という気持ちを思い出してほしいし、その気持ちを信じてほしい。それが最も強力な原動力となるはずです。

【Profile】
吉岡忠樹(よしおか・ただき)氏

2001年株式会社バンタン入社。バンタンゲームアカデミーに配属され、スクール運営業務を担当。その後、スクール運営リーダーとしてバンタンゲームアカデミー、バンタンデザイン研究所における映画映像分野の全体統括などに従事するほか商品企画も担当。2015年より企画開発担当マネージャーとして全スクールの新規商品開発や新規プロジェクトを管理。2016年に取締役に就任。企画開発本部、管理本部担当を経て、現在は事業本部管掌としてスクールの運営全般を統括する。

※1:学校教育法第一条に定められた中学校ではありません。ご自身の中学校に在籍したままバンタンゲームアカデミー中等部で学んでいただきます。
※2:提携するS高等学校で高卒資格を取得
※3:連携する通信制大学で大卒資格を取得
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