進化する「AO型入試」高大接続答申における「多面的・総合的な評価」の特徴②AO入試の拡大(西郡 大 佐賀大学アドミッションセンター 准教授)

AO入試の拡大

典型的な多面的・総合的な選抜方法としてアドミッション・オフィス入試(以下、「AO入試」とする)について整理しておきたい。

わが国初のAO入試は、1990年に慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)が実施したものであることはよく知られている。偏差値等の単一の尺度では測りきれないような多様な面で特徴があり、やる気のある者を選ぶことを目的として、書類選考と面接による方式で始まった。その後、
私立大学を中心にAO入試を導入する大学が出現し、約10年をかけて13大学となった。ところが、2000年になると一気に75大学に急増。東北大学、筑波大学、九州大学といった国立大学でも導入され「AO入試元年」と呼ばれた。


最近では一般的になったAO入試であるが、当初は明確な定義があったわけではない。2000年の「大学入試の改善について(答申)」では「『アドミッション・オフィス入試』とは、アドミッション・オフィスなる機関が行う入試というよりは、学力検査に偏ることなく、詳細な書類審査と時間を掛けた丁寧な面接等を組み合わせることによって、受験生の能力・適性や学習に対する意欲・目的意識等を総合的に判定しようとするきめ細かな選抜方法の一つとして受け止められている」と表現されている。


前述の「大学入学者選抜実施要項」に明記されたのは2002年度からであり、「詳細な書類審査と時間を掛けた丁寧な面接等を組み合わせることによって、受験生の能力・適性や学習に対する意欲・目的意識等を総合的に判定する方法(アドミッション・オフィス入試)」と現在とほぼ同じ定義になった。ところで、 AO入試は推薦入試と混同されることが多い。図表1にAO入試と推薦入試の一般的な違いを整理する。


AO入試は推薦入試よりも制限が少なく、大学の裁量に任されているところが大きい。特に、黎明期には、AO入試において入学願書の受付開始時期の制限がなかったため、学生募集に熱心な大学にとっては魅力的な入試と受けとめられ急速に拡大していった背景がある(図表2)。AO入試での入学者は、優れたパフォーマンスを発揮しており、優秀な学生が獲得できる入試であると評価する大学がある一方で、近年では、一部のAO入試においては事実上の「学力不問」の入試となるなど、本来の趣旨とは異なる運用になっているという指摘もある。

2011年度の「大学入学者選抜実施要項」より、基礎学力の把握に関する文言が加わったことは記憶に新しい。このようにAO入試に対する様々な評価がある中で、同入試を検討する大学は、その本来の趣旨を再確認し、どのように位置づけるべきかを問われている。ここまで多面的・総合的な選抜方法の代表例としてAO入試について触れたが、高大接続答申は、AO入試という特定の選抜区分の拡大を推進しているわけではない。現に、「一般入試、推薦入試、AO 入試の区分を廃止した新たなルールを構築」(「高大接続改革実行プラン」(2015年1月16日))として、選抜区分の意識よりも「学力の3要素」を多面的・総合的に評価する方法を積極的に取り入れることを求めている。


こうした点を踏まえ、「多面的・総合的な評価」を実現するうえで、その軸となるアドミッション・ポリシー(以下、「AP」とする)について、入試改革を担う現場の視点から考察したい。

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