教えて!「高校の新科目」

次期学習指導要領をめぐって、改訂の基本方針となる「論点整理」案が8月20日の中央教育審議会の教育課程企画特別部会でまとまり、26日の教育課程部会で正式に決定します。高校の教科・科目については、具体的にどんな提言がなされるのでしょうか。大学入学者選抜の改革との関係も気になるところですが……。


教えて!「高校の新科目」

 改訂の焦点の一つだった高校の科目見直しの意義については、既に紹介したところです。論点整理でも、教科・領域等間の「横のつながり」と、幼・小・中・高の「縦のつながり」の中で、育成すべき資質・能力(コンピテンシー)を整理するよう求めています。そのことを確認した上で、具体的な中身に入っていきましょう。

 論点整理の本文には、必履修教科について「特に、国語科、地理歴史科、公民科、外国語科、情報科」で、抜本的な検討を行うとしています。
 国語は「国語総合」を共通必履修科目とすることは現行と同じですが、教材の読み取り中心の指導を改め、「話すこと・聞くこと」「書くこと」といった表現に関わる能力の育成や、話し合い・論述などの活動とともに、古典を含む日本の言語文化を、社会や自分との関わりの中で生かす活動を重視します。


 地理歴史・公民の両教科は、ある意味で目玉と言っても過言ではないでしょう。18歳選挙権も視野に入れた新科目「公共」(仮称、以下同じ)は、討論やディベート、模擬選挙・模擬裁判、インターンシップなども採り入れながら、家庭科・情報科とも連携して、主体的な社会参画に必要な力を育むこととし、キャリア教育の中核となる時間としても位置付けるといいます。地理歴史科では、世界史と日本史を合わせて近現代史を中心とする「歴史総合」を共通必履修科目とし、「地理総合」とともに、課題の考察を通して学び方、考える力の育成を、より重視します。

 外国語科は「4技能総合型」の言語活動により、実社会や実生活の中で自ら課題を発見し、主体的・協働的に探究することで、英語による思考力・判断力・表現力を高めることを目指します。

 情報科は、新たに共通必履修科目を設けて、科学的な理解に裏打ちされた情報活用能力を身に付けさせ、情報と情報技術を問題の発見と解決に活用するための考え方を育成するとしています。大学入試センター試験に替わる「大学入学希望者学力評価テスト」の出題科目ともなりそうで、決して軽視できるものではありません。

 必履修科目の抜本的見直しの対象に、数学や理科が入っていないことを意外に思うかもしれません。実は、選択科目の方が注目点です。両教科で求められていた資質・能力を統合し、課題に徹底的に向き合い、考え抜いて行動する力の育成を図る「数理探究」を創設するとしているからです。単に現行の「数学活用」と「理科課題研究」を合わせたものではなく、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)の取り組みなどを踏まえた高度な探究活動を要求するもので、学力評価テストの合教科・科目型試験としても想定されているとなれば、重視せざるを得ないでしょう。

 各教科等の具体的な内容などは9月から本格的な検討が始まりますが、検討体制について注目すべきことがあります。従来は学校種別の部会と、教科・領域等別の専門部会がそれぞれフラットに検討を行ってきたのですが、今回は教科等を「ワーキンググループ」に事実上格下げし、学校種別部会とともに、教育課程企画特別部会の「下」に位置付けているのです。このことからも、教科横断的に整理した資質・能力を基に、各教科等の在り方も抜本的に見直すのだ、という確固たる姿勢を読み取るべきでしょう。前回も指摘したことですが、たとえ高校であっても、自分の教科だけを考えていれば済む時代ではなくなるのです。

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【profile】
渡辺敦司(わたなべ・あつし)●1964年北海道生まれ。1990年横浜国立大学教育学部教育学科卒業。同年日本教育新聞社入社、編集局記者として文部省、進路指導・高校教育改革など担当。98年よりフリーの教育ジャーナリスト。教育専門誌を中心に、教育行政から実践まで幅広く取材・執筆。
教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説 http://ejwatanabe.cocolog-nifty.com/blog/