専門職業大学って何?

 中央教育審議会が5月の総会で、「専門職業大学」ないしは「専門職大学」(名称未定)といった新しいタイプの大学・短大を創設するよう、馳浩・文部科学相に 答申 しました。2019年度の開設に向け、8月末までの2017年度概算要求で、具体的な支援策が盛り込まれることも期待されます。今なぜ、新たなタイプの大学が必要なのでしょうか。

教えて!「専門職業大学って何?」

 

 ここまで至るには、いろいろ曲折がありました。発端は、キャリア教育・職業教育をめぐる2011年1月の中教審答申で、高等教育に「職業実践的な教育に特化した枠組み」を導入するよう提言されたことでした。この時は、大学でも専門学校でもない、新たな学校種を創設する方向でした。背景には、設置認可権が都道府県にあるため国からの補助金を受けられない専門学校の格上げ策があったとみられますが、財政当局などの反対もあって実現せず、2014年4月から「先導的試行」として、専門学校の一部に、文科相認定の「職業実践専門課程」が創設されることになりました。今や専門学校の3割に置かれています。

 しかし、新たな高等教育機関の創設構想が消えたわけではありませんでした。教育再生実行会議の第5次提言(2014年7月)を受け、改めて有識者会議が立ち上がります(同10月)。初会合で一部委員が提案した「L(ローカル)型大学」「G(グローバル)型大学」が世間の大きな注目を浴びましたが、会議で正面から取り上げられたわけではありません。実際には2015年3月、新たな学校種ではなく、既存の大学体系の中に位置付ける方向性を打ち出して、中教審に更なる検討を委ねました。そして同年5月以降、特別部会などで審議を重ね、答申にこぎつけたわけです。

 「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関」は、4年制(大学)、2・3年制(短大)の2種類の修業年限があり、4年制では前・後期制も導入して、編入学や「社会人の学び直し」をしやすくします。産業界や地域と連携したカリキュラムを組み、卒業単位のおおむね3~4割以上を実習等に充て、とりわけ企業内実習等を2年間で300時間以上、4年間で600時間以上、実施するよう義務付けて、事業の現場の中核を担う人材を養成するのが目的です。そのため専任教員のおおむね4割以上は、企業関係者などの実務家教員とします。職種としては、IT、観光、農業(いわゆる第6次産業化)などの「成長分野」が期待されています。

 専門学校からの転換の他、大学・短大が一部の学部・学科を転換して併設することも可能にします。ただ、財政措置に関しては、既存の私学助成の枠組みに含めることに私大関係者の反発があり、答申でも「相応(ふさわ)しい支援を行っていく」という抽象的な表現にとどめています。

 ……そんな“大人の事情”はさておき、問題は中身です。現在、4年制大学の進学率は50%を超えるまでになりましたが、経済的負担が大きい割に、明確な目的意識と修学意欲がないと、中退したり、卒業できても就職に難儀したりと、リスクを抱えることになります。これに対して、新たな高等教育機関では、企業内実習を含めた実践的な職業教育を通して、技術はもとより、明確なキャリア意識も形成できます。一方、大学体系に位置付けられることで、単なる即戦力養成ではなく、幅広い教養に裏付けられた「汎用的能力」も身に付けさせることが可能になります。

 何より、専門高校の卒業生を積極的に受け入れ、より専門的な科目を初年次から履修させることも可能にするなど、高大接続の積極的な形態としても期待が掛けられています。

 諸外国を見渡しても、大学レベルの職業教育は当たり前です。是非ともいい形で新しい「大学」を育て、多様な高校卒業生や学び直しの学生に、社会で活躍するチャンスを拡大してほしいものです。

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【profile】
渡辺敦司(わたなべ・あつし)●1964年北海道生まれ。1990年横浜国立大学教育学部教育学科卒業。同年日本教育新聞社入社、編集局記者として文部省、進路指導・高校教育改革など担当。98年よりフリーの教育ジャーナリスト。教育専門誌を中心に、教育行政から実践まで幅広く取材・執筆。
教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説 http://ejwatanabe.cocolog-nifty.com/blog/