教えて!「教師の在り方論議、どう進んでる?」

 教員免許更新制の「発展的解消」については、9月の当欄で紹介させていただきましたが、その後、どうなったのでしょうか。また、中央教育審議会に対するそもそもの諮問内容である「教師の養成・採用・研修等の在り方」が今後どのように議論されるかも、気になるところです。

「教師の在り方論議、どう進んでる?」

 9月の記事に関しては、8月に行われた中教審「教員免許更新制小委員会」に示された「審議まとめ(案)」を基に解説しました。その後、9月27日に親部会である「『令和の日本型学校教育』を担う教師の在り方特別部会」と小委の合同会議が開催され、修正案を了承。10月1日から、任意の意見募集(パブリックコメント)に付されています。締め切りは同30日ですので、今が学校現場の意見を反映させるチャンスです。

 ただ、パブコメのホームページ(HP)に載っているのは52ページにわたる案文だけで、忙しい向きには読み込むのも大変でしょう。合同会議には、1枚ものの「概要」イメージ図(いわゆるポンチ絵)、12ページ分に圧縮した「要約版」も示されています。文部科学省のHPから、政策・審議会>審議会情報>会議資料>中央教育審議会「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会(第4回)・教員免許更新制小委員会(第6回)合同会議資料―とたどっていくと、各資料のPDFをダウンロードすることができます。

 さて、9月末の合同会議からは、本丸である議論も始まりました。それが会議資料にもある「優れた人材確保のための教師の採用等の基本的考え方」です。39ページにわたる資料ですが、たたき台として、現状の指摘や関連データなどとともに、項目ごとに「主な論点例」のポイントをプレゼンテーション用に示したものですから、眺めるにも最適です。

 そこでは、まず近年の教員採用試験の倍率の低下や、民間企業の採用が好調なことから教職課程の履修を断念する傾向、社会人などの多様な人材の参画が進んでいないことを指摘しながら、「入職ルートの多様化」を提言。学校に「多様な専門性を有する質の高い教職員集団」を構築するために、社会人の免許の在り方や、特別選考を検討するよう提案しています。

 現在でも特別免許状や特別非常勤講師、教員資格認定試験といった、教員免許を持たない人が教壇に立てるようにする制度が実施されてはいます。しかし、幾度も改善が図られてきたにもかかわらず、必ずしも活発に活用されているとは言えません。
 
 そこで、「社会人等の登用を促進するための免許・採用の在り方」として、▽専門性に対応して授与教科区分を見直す ▽プログラミング教育やグローバルな人材育成を目指し、「非常勤」という勤務形態の在り方を検討する ▽実務経験を加味して、教員資格認定試験の一部試験免除を行う――としています。また、教職課程を履修していない学生も含め、まず学習指導員として採用し、特別非常勤講師などとして経験を積ませてから、そうした経験も加味して免許状を取得し、教職に転換することも考えられるとしています。

 多様な人材が入ってくるのは、高校現場にとっても大歓迎でしょう。実際、総合的な探究の時間やキャリア教育・進路指導など、外部人材の力を借りる機会は増えているでしょうし、「社会に開かれた教育課程」を実現するためにも、今後ますます必要になります。
 
 ただし、そうして招いた多様な人材を、どういう位置付けにするかは、必ずしも明確ではありません。本務教員プラス多様な専門家による「チーム学校」が構築されるならいいのですが、教職員定数内で扱うとするなら、必ずしも学校の実務に明るくない社会人などにとっても、従来の教員にとっても、大変になります。入職後の研修を充実させることも不可欠ですが、研修機会が十分保障されるかも、現段階では不透明です。

 更新制もそうですが、事は現職教員の勤務実態も左右する大問題です。養成・採用・研修の論議は、まだまだ始まったばかりです。今後も中教審の動向を注視し、場合によっては現場から声を挙げていくことも必要ではないでしょうか。


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【profile】
渡辺敦司(わたなべ・あつし)●1964年北海道生まれ。1990年横浜国立大学教育学部教育学科卒業。同年日本教育新聞社入社、編集局記者として文部省、進路指導・高校教育改革など担当。98年よりフリーの教育ジャーナリスト。教育専門誌を中心に、教育行政から実践まで幅広く取材・執筆。
教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説 http://ejwatanabe.cocolog-nifty.com/blog/